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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
173/228

モータル・コンバット・オブ・オーチャード④




 ◇ ◇ ◇




「見えてきたぞ!」

「でけえ……こんなのがなんで地図に載ってないんだよ!」


 レトリバーⅡのブリッジでは、クルー達が目の前の風景に釘付けになっていた。


 眼前にそびえる巨大な山。まだそれなりに距離はあるはずなのにその威容いようは迫力満点。


「うおおお!! スゲエです!」

「あ、あのテッペンに行くんですか? 無茶では……」


 興味津々でブリッジに上がってきたマヨは興奮し、ブンタは不安そうにつばを飲み込む。


 ギギギゴゴゴゴ……


 船体の側面に折りたたまれたフレームが音を立てて展開する。


「両翼展開! 送電準備、三、二、一……始め!」


 ヴィイイイン……


 そしてオペレーターの掛け声と共に、展開されたフレームの間に虹色の翼膜が構成される。フワリニウムをまとった何億というエメトが集まってできる翼膜だ。


「ちょっと高いが頑張ってくれよ……」


 ブリッジクルー達が祈る中、レトリバーⅡはゆっくりと上昇し始めた。




 ◇ ◇ ◇




「あれだけ爆発起こしててよく死なないわね博士」

「安全第一がモットーだ。対策はバッチリしてあるので怪我はせん」

「まず爆発するのが間違ってないかしら!?」


 カブーム博士の研究所では、応接室で博士とクラップがコーヒーを飲んでいた。そのテーブルの上に通信アプリケーションが立ち上がった状態のノートパソコンが置かれている。接続先はレトリバーⅡだ。


「……」

「不安かね」


 そう博士に声を掛けられたクラップは一瞬目を丸くしたかと思うと、すぐに柔和な表情になってため息をついた。


「いえその……傭兵さんに仕事を頼むのって初めてで。自分の面倒事を、それも命のかかることを他人にお金で任せてしまうのは、やはり落ち着きません」

「ミッタマリの件はもはや君だけの問題ではない」

「そうですね。でも父については私の問題です」


 クラップは目を伏せる。


「この二週間は何もしていない時間が怖いです」

「まだお父さんを亡くしてそれだけしか経ってないんだ、無理もない。君は強い人だ。君が動かした人達が他の沢山の人々を救うかもしれない」


 すすけた頭のカブーム博士は優しい声で続ける。


「大丈夫。ボンもヴルームもレトリバーの傭兵さん達も死なん。伊達にゴロゴロ団を倒しちゃいない」


 そう言ってほほ笑む博士に、クラップも微笑み返した。




 ◇ ◇ ◇




「超えたぞ頂上!」


 レトリバーⅡのブリッジが再び騒ぎ始める。オレンジ色の艦は確かに、無名の山の頂上の高原を見下ろす高さまで来ていた。


 そのしらせを受けてビッグスーツ格納庫もせわしなく動き始める。


「一番、ニッケル機問題なし」

「二番、リンコ機も問題ないよ!」


 ニッケル、リンコに続いてカリオの機体を出撃態勢が整う。


「カリオ、以前の戦いでブンドドマルの左腕を交換した。わずかだが、スペックが人工筋肉『キニクスⅣ』の特性上下がっている」

「わかった気をつける。三番機、カリオ問題なし!」


 タックの忠告を受けたカリオがそう報せると艦後方のハッチが開く。三機の黒いビッグスーツ、チャカヒメ、ハネスケ、そしてブンドドマルがそこからおどり出る。


「犬っころ! お前もいいよな?」

「ボンって言えこの下っ端整備士どもが! ヴルーム! 新パックはまだか!」

「ソフトウェアの最終セットアップがまだだが……すぐに送り届ける! そのフライトパックでしのげ、対空砲火激しくなるぞ!」


 一対の大きな翼が目を引くフライトパックを装着したボンの乗機、犬型のビッグスーツ「エクスギャリワン」が、格納庫の出口へ歩いていく。


「行くぞ勇者エクスギャリワン! チャンネルはそのまま!」




 ◇ ◇ ◇




「よし、カリオも来た……ってうわ!?」


 バシュゥ!


 出撃して早々、まだ空中にいるリンコのチャカヒメのすぐ横を、ビームがかすめていく。




「ぶっっっっっ殺せえええええええ!!」


 バシュシュシュシュシュッ!!




 レトリバーⅡと、そこから空中へ飛び出したカリオ、ニッケル、リンコの機体目掛けて地上から大量のビームが撃たれる! 早くも彼らの襲撃に気づいたボロドウ・ファミリーの対空砲火による迎撃だ!


「お出迎えが派手過ぎる!」


 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!


 ニッケルはハネスケに搭載されたドローン兵器「ウェハー」を、八基全て展開させる。ウェハーのうち六基は地上のボロドウ・ファミリーに向けて射撃で応戦、残り二基は小さなバリアーを展開させ、カリオとリンコを一基ずつで支援防御する。


 バシッバシッ


 一基ではビッグスーツの身長の三分の一にも満たない小さなバリアーしか貼れないウェハーだが、ニッケルはそのウェハー二基を器用に動かし、カリオとリンコに向けて撃たれた射撃を正確に防いでみせる。




「ワオ、超能力者みたいだねニッケル」

「冗談言ってないでできるだけ敵の数を減らしてくれリンコ!」

「言われなくても!」


 リンコは下降しながらビームスナイパーライフルの銃口を地上へ向ける。


 ガァン! ガァン! ガァン!


 緑色のビームが放たれて、超高速で空を走る。ビームはボロドウ・ファミリーのビッグスーツの頭部を順番に、一定の間隔で一機、また一機と吹きとばしていく。


「クソ! まるで流れ作業のように容易くやりやがる!」

「大型シールドを持ってない奴は下がれ! アニキ達がいる建屋へ接近させるな!」


 ニッケルとリンコの射撃にたじろいだボロドウ・ファミリーは陣形を変え始める。上空へ射撃をしていた機体達は後方へ下がり始め、ビッグスーツの身の丈程もある大きなシールドを持ったやや大柄の機体が前へ出始める。


 バシュゥ! バシュゥ! ガァン! ガァン!


 大型シールドの機体はそれでニッケルとリンコのビームを防いでみせる。彼らの大型シールドには弾痕だんこんこそ残ったものの、貫通はしていない。


「通りが悪い! アンチビーム塗装っぽいね」

「任せろ」




 ドォン!




 カリオのブンドドマルが空中を強く蹴る。空に衝撃波が走ったかと思うとブンドドマルは一気に地上へと突進していく。




(モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑤ へ続く)


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