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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
17/227

メタル・ニンジャ・ショウタイム①

 夜、ハットリシティ市街地。


 ジェイコブは追手を仕留めんと、路地裏に潜み待ち伏せする。彼の右前腕部に何本かの筋が走り、それに沿って皮膚が分割・変形すると長いブレードが出現した。サイバネティクス義手だ。


 企業のスパイであるジェイコブはハットリシティのセキュリティ情報を盗もうとしていたが、街のネットワークに不正にアクセスしたことがバレたため、脱出を図ろうとしていた。


 ジェイコブは息を止める。舗装がひび割れた路地を踏む足音が徐々に近づいてくる。


 角から追跡者の足が覗いた瞬間、ジェイコブは襲いかかる。ブレードに変形した右腕が、追跡者の腹を貫いた。


 その瞬間だった。追跡者の体は突如、ボンと音を立てたかと思うと煙を上げて消えたのである。


 この現象を目の当たりにして、ジェイコブは慌てふためく。企業スパイとして戦闘や殺人の経験はあったが、今、目の前で起きたようなことは初めてだ。ブレードを構えながら四方を見回す。


「そこまでや、一緒に来てもらおか」


 ジェイコブは動きを止めた。首筋に金属の冷たい感触。背後から刃物を当てられている。


 刀のような剣をジェイコブの首にあてがい、制しているのは、先ほど煙を上げて消えた「追跡者」だった。


「クソ……インチキ野郎が!」


 毒づくジェイコブに追跡者は返した。


「インチキちゃう。忍法や、分身の術」




 ◇ ◇ ◇




「ハットリシティかぁ、初めてなんだよね~私」


「俺も初めてだ」


「なんだリンコもカリオも行ったことねえのか、俺も初めてだから聞いてみたかったんだけどよ」


 ササキシティの屋外フードコートで、地上艦「レトリバー」のクルー達は昼食を取っていた。


 彼らは食料などの物資の補給で街に寄った際、気分転換に街に出る事が多い。カリオ・ニッケル・リンコの三人の傭兵は、メカニックや調理員達に混じってササキシティの市場を見て回っていた。


「これ誰かあげます」


 マヨ・ポテトは傭兵三人のいるテーブルにやってきて、半分以上食べ終わっている料理の皿を見せてきた。子供が嫌いなものの定番、ピーマンだけが皿に残されている。


「好き嫌いすんな」


「まあいいんじゃない?」


「大人になったら食えるようになるだろこういうのは」


 三人は色々言いながら皿のピーマンをつついて食べた。嫌いなものがなくなったのを確認し、笑顔になったマヨが聞いた。


「ハットリシティってどんなとこですか」


ハットリシティ――この補給の後で訪れる予定の目的地だ。


「ん? 俺ら誰も行ったことないから詳しくないんだけどな、忍者の街らしいぞ」


 忍者、と聞いてマヨの目が大きくなって輝いた。


「忍者ですー!?」


 忍者――人類が惑星マールなどの他の惑星に移住し始めたと言われている五千年程前の時代から更に一万年程前。生まれ故郷である地球という星で活躍していた、諜報・暗殺などを仕事としていたと言われている者達。特殊な訓練を受けた彼らは水の上を走り、姿を消し、火や風を自在に操ったと言われている。が――


「はっはっは、言っても子孫が住んでいるってぐらいで、流石に分身の術とか変わり身の術とか使える奴ってのはいねえだろうな。」


「えー!? いないんですー!?」


「子供の前で夢のないこと言ってサイテー」


 現実的な予想を立てて話すニッケルをリンコがののしった。


「でもよぉ、ハットリシティの諜報機関は優秀らしいじゃねえか。火を吹くとかはなくてもよ、なんかヤバい奴はいたりするんじゃね?」


 カリオはそう言いながら回鍋肉ホイコーローを口に運ぶ。


 ハットリシティの諜報機関は実際に有名であった。ある古代テクノロジーが出土したのをきっかけに、それに関連する技術や産業が発達。同時にその技術や資産そのものを奪おうとする敵も多く作り出した。ビッグスーツや人型戦車などの火力に頼ってまともに全ての敵とりあえば、人も物も激しく消耗する状況下で、ハットリシティは情報戦と隠密行動によって、荒事に発展する前に事態を解決する手法を身に着けたのだ。


「なるほど……それはそうかもなぁ。でも出会えるかね? 仕事で訪れてそんな……凄腕スパイみたいなのに」


「やっぱ変装とかすごいのかな? まあ私のような美人に化けるのは無理かもだけど」


「このスープ、回鍋肉に合うな」


「スルーされた」


 マヨは喋る大人達の顔を次々に見て落ち着きなく聞いている。地球を離れて1万年、未だ「忍者」は子供達をワクワクさせる存在らしい。大人に現実的な側面を見せられてもマヨはその感情を抑えられないのだ。


 回鍋肉を頬張るカリオはマヨの頭にポンと手を乗せる。


「仕事中はレトリバーで留守番だ。それ以外で遊びに行く暇がありゃ、ハットリシティの街に連れてってやる。」


 カリオがそう言うとマヨは奇天烈なシャウトを上げて、頭の上の手を振り払い興奮気味に飛び跳ね始めた。


「ほう」


「あら」


 ニッケルとリンコはニヤニヤとカリオを見つめる。


「なんだよ」


「もうガキンチョ苦手なの克服したのか」


「意外と早かったね~」


 からかうニッケルとリンコを睨みながらカリオはスープを飲み干した。






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