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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
155/228

超人激突! 古代遺物防衛戦!⑬




 ◇ ◇ ◇




 ズザザッ!


 勢いよく突き飛ばされ、ピエンとオコジは地面を転がる。ひざをついて体を起こしたピエンは、動揺しながらもルガルの方をにらみつける。


「やめてよねそういうの。更に速さが上がるなんてさ」


 反対側からオコジの刺すような視線も感じながら、ルガルは不敵に笑う。その胸の前に両の拳を、ボクサーのように構えながら。


「ステゴロなんてのは本当に久々だ。スベンに付き合って正解だったな」




 ルガルの拳がらされ体勢が崩れたところへ、ピエンのビームダガー、オコジの拳が入って決着がつくかと思われたその瞬間――ルガルは二人に拳を二発、蹴りを一発ずつお見舞いしたのだ。


「寝起きでここまで戦いの速さと勘を取り戻せたのは嬉しいことだ。礼を言う」

「そんな礼なんていらねえから帰ってくれねえか? あんま動き過ぎると腰と膝が心配な歳なんだよ」

「すまんがそいつはお断りだ」




 地面に落ちている槍を拾いながらルガルがふと、後ろに視線をやる。左腕を失った黒いビッグスーツ――カリオのブンドドマルがそこに立っていた。


「ニ十機弱、傭兵ようへいがいたとは思うが……実質三機でスベンを殺しちまうとは」


 トゥーズデの右後ろからはニッケルのハネスケ、左後方からはリンコのチャカヒメも続いて歩いてくる。




「まあ無傷、と言うワケでもないみたいだな。記憶装置を見失う前に殺すか」




 ずん、と周囲の空気が一気に重くなる。殺気。カリオやピエンたちの戦闘を下がって見守っていた他の傭兵達にもそれは襲い掛かる。幾多いくたの戦場をくぐり抜けたベテランの傭兵達ですら、虎に睨まれたかのように足をふるわせて耐えるのがやっとだった。




 ドォン!




 大地を穿うが轟音ごうおんと共にトゥーズデの姿が消える。次の瞬間、青い刃の残像しか見えぬほどの神速の刺突が、カリオ達を襲った。 




 ズシャァ……


 ルガル以外の五機は、地面をこすりながら仰向けに倒れた。五機とも、胸部が少し破損している。


「バケモンが! そんなクソデカい槍だっつうのに、今の速度で全員に一発ずつたあ」


 胸の出血を押さえながら苛立つニッケルに、ルガルは不敵な笑みを返す。


「んむ、本当に調子が良くなってきた。黒いの三人も、スベンとの戦いで消耗しょうもうしてなかったらもっとよかったんだろうが……まあ今ここで殺すより他はない」


 ルガルが槍の穂先を再び上げるのを見て、その場にいた全員の心臓の鼓動が、緊張で早くなる。五人が辛うじてしのいだ胸部への致命ちめいの一撃。次またかわせるかはわからない。




 ビビッ


「……」


 コックピット内に響いた電子音を聞いて、ルガルは深くため息をついた。


「少し他の奴らの気持ちがわかったな。ここまで外出できる時間が短いとは」


 ルガルが槍を下ろすと同時に、その上空が陽炎かげろうのように揺らめく。直後、何もない空中から彼らが来た時のモノと同じ、円盤状の飛行物体が姿を現した。


「……以前、お前さんのお仲間だと思われる奴が〝門限〟とか言ってた気がするが」

「そうそう、俺達はあまり長いこと外に出られないらしい。困ったもんだ」


 ニッケルの問いにルガルは、この状況に似つかわしくない気さくな声色こわいろで答えた。




「逃がすか」


 カリオ・ピエン・オコジの三人は一斉にルガルに飛び掛かった。ルガルの右からカリオのビームソード、左からオコジの光る拳、真正面からピエンのビームダガーが襲い掛かる!




 ビギィ!




「……ほんとインチキだな!」


 オコジがそう毒づいたのも無理はなかった。ルガルは槍の穂先でカリオのビームソードを、柄尻でオコジの拳を、そして柄の中央でピエンのビームダガーを器用に受けて、攻撃を防御したのだ。


「フン!」


 次の瞬間、ルガルは身体を高速で回転させ、凄まじい勢いの突風を発生させる!


 ビュオオオ!!


 風圧に耐え切れず、攻撃を仕掛けた三人は吹き飛び、地面に尻もちをついた。




「焦らず行こう。どうせ君達はそう簡単に死なないだろう?」


 上空で待機する円盤の底部が開き、トゥーズデがそこへ吸い込まれるように上昇していく。


「身内が色々企んでてね。彼の目論見もくろみが上手くいけば、遠くない内に俺達はまた会えるだろう。決着が楽しみだ」




 トゥーズデを回収した円盤は、猛スピードでその場を飛び去って行った。




 十秒近い沈黙。その時、各々のコックピットに、司令艦のムツボシから通信が入った。


「輸送車両の作戦区域からの脱出を確認。及び同範囲に敵影なし。各部隊のリーダーは被害状況を報告。順次帰還せよ」


 通信を聞いたリンコは、不意に右肩がズキズキと痛んでくるのを感じる。スベンとの戦いで負った深い傷のことを、ほんの少しの時間、忘れていたようだ。


 カリオも同様だ。戦闘が終わった瞬間、襲い来る激しい痛みに顔をしかめた。


「痛い…ニッケル痛い…」

「痛い…ニッケル痛い…」


 自分に甘えてくるような二人の様子に、ニッケルはあきれて頭をボリボリといた。


「今日は俺じゃなくて、言うならカリオはイ組、リンコはハ組のリーダーだろうが」




(超人激突! 古代遺物防衛戦!⑭ へ続く)

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