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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
154/228

超人激突! 古代遺物防衛戦!⑫

 バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


 スベンの糸に操られた傭兵(ようへい)達が、ニッケルとリンコに銃火器を向けて撃ってくる。


 ニッケルは上空でふわりと回転しながらこれを避け、リンコは地上でステップを繰り返して回避しながら、カリオの様子を見守る。


 実際のところ、スベンと味方が「糸」でつながれた状態にあるのは厄介である。味方を直接攻撃するワケにはいかないのは勿論、スベンに攻撃したとして、失敗すればスベン自身が糸で繋いだ傭兵達をどう扱うか予想できない。人質を取られてるに等しい状態だ。



 カリオはスベンに向かって駆け出す。そこへすかさず味方傭兵のビッグスーツが二機、スベンを守るように割り込んでくる。


 ブォン! ブォン!


 操られた二機の傭兵のビッグスーツが、カリオのブンドドマルにビームソードを振り下ろす。


 ズザザァ!


 臆することなくカリオは加速し、スライディングしてその二機の足元へすべりり込む、同時に両の足で二機の足を払う! 傭兵の機体はバランスを崩して体を傾けた。




「ちと痛えとおもう。悪いが我慢してくれ!」




 味方にそう叫んだカリオは、左腰に装着されているビームソードの鞘の部分を取り外す。そして右手にビームソード、左手にさやを持った状態で、前方に跳躍しながらプロペラのように体を回転させる!


 スベンの視線が回転する青いビーム刃と鞘に吸い寄せられる。


(こいつ……ここまで僕の糸が見えて――)


 ――回転する刃と鞘に、スベンの糸が絡めとられていく。スベンは糸を引っ張られて思わず前へ体勢を崩しかける!




 ウキヨエ流・掛け斬、荒巻叉華あらまきさけ




 倒れるより早く、スベンは糸をマンデの指先から切り離した。


(何が掛け斬だ! 糸を斬ろうとせずに巻き取って無力化しようとしてくるなんて、下手を打てば繋がっている味方も無事じゃ済まないのに……このわずかな時間で僕の操糸術に慣れてきている!)




「つあっ!?」


 スベンに操られていたモンシロは、一瞬襲い掛かった強烈な痛みに思わず声を上げた。だがすぐに、自分の機体が思い通りに動く――即ち糸の呪縛から解き放たれたことに気づいた。周囲の傭兵達も、同じように痛みに顔をしかめながら、自分達の無事を確認している様子だ。


(あの糸、機体に巻き付くだけじゃなくて、装甲を突き破って制御系に影響を与えてくるなんて……カリオ・ボーズの珍妙な技のおかげで、糸が無理やり引っこ抜かれて助かったけど)


「ニッケル! リンコ!」


 カリオが叫ぶのを待たずに、ニッケルとリンコはそれぞれの武器の銃口をスベンへ向ける!


「調子に乗るな原始人どもがあ!」


 苛立いらだちのあまり大声を上げながら、スベンは上空へ飛び上がる。そして大の字に手足を大きく広げた。


「まだ糸は出せる! 四本の手足から残り全ての糸を繰り出して貴様らを――」




 ヒュッ




 スベンよりほんの少し上の高さから、ニッケルが何かを放り投げた。




 カッ!




 次の瞬間、突如辺りを眩く白い閃光が包み込んだ。フラッシュグレネードだ!


「ぐおっ!?」


 ブラックトリオの意外な奮闘に、冷静さを失っていたスベンは、その閃光をまともに食らう!


「ちょ、やるなら言ってよニッケル!」

「わ、悪い。敵が前のめりだと手癖でつい……」


 ニッケルに文句を言いながら、咄嗟に目をつむって閃光をしのいだリンコは、目を開けると同時に両手のビームピストルを連射する!


 ガガガガガ!


 クリーンヒットだ!スベンのマンデはピストルが放ったいくつものビームを、真正面から全て食らう。




「があああ!?」


 激しい衝撃がマンデのコックピットを襲う。目を開けられないまま、スベンは再び手足を大の字に伸ばした。その先から発射された糸の先端が、マンデを中心に円形に広がりながら、縦横無尽に飛び回る! ヤケクソに近い全方位攻撃だ!


 シュシュシュシュシュシュ!


 ザシュッ!


「ツッ……クソッ!」

「このっ!」

「痛ッ!」


 ブンドドマル・ハネスケ・チャカヒメの外装が、糸の先端で何度も切り裂かれていく! パイロットの三人は苦悶くもんの表情を浮かべながらも、マンデから目を離さない。




 ドォン!


 カリオが糸の動きの一瞬の隙をとらえ、強く踏み込み、マンデのふところまで急接近を試みる!


 ドォン!


 一瞬の後、リンコもそれに続いて地面を強く蹴る。


「き、貴様らぁ!」


 やっと視界を取り戻しつつあったスベンは、間合いを取るために後ろへ下がろうとする。


 ガシッ


「!?」


 マンデの動きがそこで止まった。スベンは戸惑う。これ以上後ろへ動けない……何が起こったのか。


「……! これは!?」


 スベンはマンデの左腕を見て事態を把握した。先端がもりのように尖ったワイヤーアンカーが前腕部に突き刺さっている! そのワイヤーを引っ張っているのはニッケルの乗るハネスケだ。


「糸使いってワケじゃねえけど……俺も嫌らしい装備持ってんだよ!」


 ハネスケの左手首から放たれたワイヤーアンカーが、スベンの回避行動を封じる。

絶好の好機に、カリオとリンコは糸の連撃を食らいながらも間合いを詰める足を止めない。




 ザシュゥ!


 マンデの糸がチャカヒメの右肩を深くえぐる。リンコの右肩から出血。


 ザシュゥ! ガシャン!


 別の糸がブンドドマルの左腕に巻き付き、二の腕から下を斬り落とす。カリオの左腕にいくつもの傷が生まれ、大量に出血。




 だが二人は前進を止めない。


 ドォン!


 強く踏み込み、二人はまだ動く方の腕で致命の一撃を放つ。





「こ、僕が、こんな、ここでこいつらに」




 刺突!


 逆手に持ち替えたビームソードで、カリオはマンデの右脇腹から胸に向かって一突きを入れる!


 ドシュゥ! ドシュゥ!


 体を回転させながら、リンコはマンデの右脇腹へ、左手のビームピストルを二発撃ち込む!




「ば……」


 スベンが言葉を言い切る前に、マンデのコックピットを二方向からビームが貫いた。その熱が一瞬でスベンの肉体を燃やし尽くす。


 キュオオオン……


 マンデは数秒、奇怪な音を響かせながら、がくがくと手足を痙攣けいれんさせたかと思うと、そのまま空中で制御を失い、地面に向かって落ちていく。そしてアイカメラの緑色の光とが消えていくと共に、機体全体が砂塵さじんのようさらさらと崩れ、消えていった。




〝青いピエロ〟の異名を持つ「イニスアの囚人」の一人、スベンが今、打ち倒された。




(超人激突! 古代遺物防衛戦!⑬ へ続く)




 



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