超人激突! 古代遺物防衛戦!⑪
◇ ◇ ◇
「へぇ……あの死にたがり君が」
ピエンはアローフォームライフルを構えたまま、横目でカリオ達の様子を窺う。それに気づいたオコジが声をかけた。
「どしたい?」
「ああゴメン、ただの独り言」
「ははっ、俺達も思ったより余裕があるねぇ」
言葉とは裏腹に、二人の息は荒い。それぞれの機体は致命的な損傷こそ受けていないものの、幾つもの傷を付けられていた。
その目の前で、トゥーズデを駆るルガルが、片足のつま先をトントンと地面に打ち付けながら立っている。息は乱れておらず、機体の損傷もほとんどない。二対一という数的不利をものともせず、ピエンとオコジに対して優位に立っていた。
ふと、ルガルは相方であるスベンの様子を窺う。
(コイツは驚いたな、思ったより手こずってるじゃないかスベンの奴。俺はどうしようか……ふむ、研究所から離れていく気配が一つある。恐らく傭兵達で足止めしつつ、記憶装置を別の場所に運び出す算段か……)
一瞬、ルガルの視線が自分達から外れたのを、ピエンとオコジは感じ取った。
(相方が気になるか、だとすると)
(自分の戦いを早く終わらせてあちらに加勢したいだろう、速攻で来るな)
ルガルは先ほどより一層低く、体を沈めた。その姿はまるで草むらで得物を狙う四本足の肉食獣だ。
ドン!
ルガルは大地を抉れるほど強く蹴る。姿は消え、弾かれた空気が風となって辺りに吹く。
ルガルは槍をグウパンのコックピットを狙って突き出す。その瞬間、オコジは左腕を前に出し、前腕部に槍が深々と刺さる。
「流石に出鱈目な速さしてるね……! だが腕一本くれてやるつもりでなら!」
槍が刺さったグウパンの前腕部が大きく敗れるように破損し、フィードバックでコックピットのオコジの左腕からも少なくない量の血が噴き出す。次の瞬間、攻撃を加えたルガルの乗るトゥーズデの態勢が、前方向に崩れた。オコジが自身の前腕部と槍が衝突した瞬間、体の力を抜いて、刺突の力のベクトルを変えて受け流したのだ。
(イニスアの囚人でも俺の槍を受け流せるのはそうはいないぞ……達人か!)
その隙を見逃すピエンではない。すかさずアローフォームライフルのグリップを引いて、ルガル目掛けて撃つ!
ズキュン!
ルガルはたまらず槍から手を放してビームを紙一重で回避する。そのまま右腕を振り上げてピエンに殴りかかる!
バキィ!
ピエンはその拳をアローフォームライフルのリムで下から上へ打ち上げる。同時にそのグリップを引いた。ビームを撃つためではない。がちゃり、という音と共にグリップが変形しながら、リム側の部分と分離する。ピエンが右手で握るそのグリップの先端から、ビーム上の刃が出現する!
(〝矢〟を模したビームダガー! 何故こんな扱いにくそうな形の武器をと思っていたが……先に言っていた弓術を再現することに特化しているのか!)
拳を逸らされ、ルガルの体勢が崩れたところへピエンがビームダガーで突き刺しにかかる!
「おおお!」
雄たけびと共にオコジは、腕に刺さった槍を引き抜き、投げ捨てた。そして間を置かずにルガルへと飛び掛かる。振り上げた右の拳が青白く光り輝く!
◇ ◇ ◇
「あー痛え!」
「ここの岩硬すぎでしょ」
カリオに続いて、スベンと戦っていたニッケルとリンコが起き上がる。
「認めたかねえが、こないだの修行のおかげでなんとか生きている感じだ」
「そうだな、俺はまだいける」
「私も」
思うように相手を殺しきれず、スベンは苛立ちで唇を歪める。
「……少しアプローチを変えますか」
そう言うと、スベンは両腕を前にあげた。ブラックトリオの三人は攻撃を予想して身構える。
「ぐあっ!?」
思いがけず、カリオ達の後ろから叫び声が響く。三人はそちらへ振り返った。見ると、白いビッグスーツがぎこちなく、ゾンビのように不自然に手足を動かしている――モンシロ・ホワイトの機体だ。
「がっ!?」
「ぎゃばっ!?」
その周囲の数機のビッグスーツもまた、苦悶の声を上げながら、不自然に四肢を跳ねさせる。
「なんだ!?」
「まずい……私達から離れろ!」
戸惑うカリオ達にモンシロがそう叫んだ瞬間、モンシロとその周囲の機体達が、突然カリオ達の機体に飛び掛かってきた!
「うおっ!」
三人は咄嗟に大きく、彼等と距離を置くように飛び退く!
「貴方達って味方でも平気で殺せたりするんですかね? まあ僕はどちらでもいいんですけど」
スベンが口角を吊り上げながら、両手で糸を操る。そう、彼は糸で拘束したモンシロ達の機体を、無理やり捜査してカリオ達に襲わせているのだ!
「クソ、趣味の悪い芸達者ぶりだ!」
ニッケルは悪態をつきながら、再び上空へ飛び上がる。すかさず彼とスベンの間に、操られた味方傭兵の機体が入り込む。
「人間を盾にするってか……!」
「一回任せてくれニッケル。追撃を頼む」
ハネスケのコックピットに、カリオの声が響く。ニッケルはその冷静な声色に一瞬驚いたが、彼を信じて相槌を返した。
(超人激突! 古代遺物防衛戦!⑫ へ続く)




