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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
136/231

転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略⑦

 巨大な機動兵器のどこからか発せられた声を聞いたブンタは、驚いた拍子ひょうしにピロリン、と電子音を鳴らす。


「えっ、えっ、あっうん、ミチぽんのフィギュア……これ僕の……」


 隣でうろたえているマヨとミントンをよそに、タクオはただ一点、ミチぽんのフィギュアを見つめる。ハトシー・ロムレのアイカメラがそこへズームし、フィギュアの詳細な製品情報を読み取る。「うぃざ☆きゅーと」七分の一スケール/アルティメットグレード/ミチ・サクラダ/劇場版仕様(バージョン一・六)、発売日は半年ほど前、価格は二十二万テリ。


 タクオの機械の腕がギギギ、ときしみながら震える。おびえる三人に向かってタクオは話しかけた。


「その……ミチぽんは……どこで手に入れた!? アンダーグラウンド・ウェブ・フリーマーケットには売ってなかったのだが……」

「え、いや、正規の予約購入ですけど……」

「ふざけるな! 二十二万テリもするんだが!」

「いや、だから貯金を崩して……幸いボーナスも前の月ぐらいに入ってたし……」


 ブンタの返答にタクオは絶望した。目の前の小さな茶筒ちゃづつ型ロボットはどうやら自分より裕福なオタクらしいのだ。


(こいつ許せん……どうせ「うぃざ☆きゅーと」のリメイク版から入ったモグリに違いないくせに……いや、待てよ? 今、俺の体はチート! こんなちっこい奴なんか叩き潰しちまえばミチぽんを我が物に!)


 タクオは再び勢いよく腕を振り上げて……そこで動きを止めた。マヨとミントンはびくり、と体を縮こませる。


(ダメだ! この大きな体で奴を叩き潰せばミチぽんも粉々にしてしまう! 上手くおどすしかない……!)


 タクオはブンタに向けられた円形のカメラアイを光らせた。




「おい……おま、あの、おまえ。み、ミチぽん、その、ミチぽんのフィギュア、寄こせ」

「え、え!?」


 突然の要求にブンタは困惑しながらも、思わず両手でかばうようにミチぽんのフィギュアを抱え込んだ。


「な、なんであげなきゃいけないんですか」

「な、なんでって、なんでおまえみたいなのが持ってるんだよ」

「え? なんか変です?」

「は? あ、あの、いや、変っていうか、早く寄こして、映画のフィギュア」


 突如始まったブンタとタクオのたどたどしいやり取り。マヨとミントンはポカンと口を開けたまま見つめている。


「……もしかして両方オタクです?」

「い、いやもしかしたらあのフィギュアが実はとんでもない代物だったり……なんか大富豪のスキャンダルとかが記録されたチップが入っているとか」

「でもなんか口喧嘩くちげんかめっちゃしどろもどろしてますよ」




 タクオは振り上げた長い腕を、少し上げたり少し下ろしたりしてブンタを威嚇する。


「クソッ、せっかく生き返ってチートできると思ったのに、ミチぽんのフィギュアが手に入らない!」

「い、今生き返ってって……!?」


 タクオの言葉を聞いて、ブンタは察する。


「もしかして、あ、あなたも、死んだ後で機械の体に入れられたんですか!?」

「あなた、も……?」


 タクオはらしていた腕を止めた。彼もまた、ブンタが自分と同じことをされたのだと気付く。そして小さなブンタの姿と自分の今の体を比べて、今は無い口角をニチャアと吊り上げた。


「へえ、そちらも死んだ後そのショボいボディに脳みそ入れられたんですかァ」

「ぐ、ぐぐぐ」


 ブンタのミチポンを抱える手がふるえる。こっちは普通の人間よりも小さな茶筒型の作業用ボディ。向こうはビッグスーツより大きく強そうな明らかに戦闘用のボディ。


 一体全体何がどうなったらこのような酷い格差が生まれるのか。同じ仕打ちを受けたはずなのにあんまりだ。ブンタは多分いないであろう女神をうらんだ。




「ところで、その、隣の二人は逃げないん……逃げないん?」


 タクオのアイカメラが、ブンタの隣にいるマヨとミントンをとらえる。二人はヒエッ! と声を出し、涙目で両手を上げて降伏こうふくの意思を示した。


「……アッ! そうだ! そのミチぽん、渡さないならこの二人から先に潰す!」

「なっ!?」

「どひぇー!?」


 マヨとミントンは抱き合って悲鳴を上げた。ブンタは抱えているミチぽんを見る。


「ドゥフフ……今から十数えてやる。その間に――」

「わ、わかりました」

「!!」




 ブンタは素早く、ミチぽんのフィギュアを持つ手を前に差し出した。




「オ、オタクさん! それ大切なモノじゃ……」

「また買えばいいだけです。人は死んだら戻らないんですよ! 悩んでる暇ないです! アレ、でも僕も死んだはずだしこの言い分は少し変か……」


 呆気あっけなく要求を呑んだ相手の様子に、タクオは少々戸惑いながらも喜びで思わず各部のダクトから白い蒸気のようなものを噴き出した。


「おっほ! 思ったより物分かりがいい! 最初からそうすりゃいいんだよカス! では早速――」




 ガァン!




 タクオがブンタに手を伸ばしたその時である。独特の轟音と共に、遠方からタクオに向かって、緑色のビームが飛んでくる!


「うわっ!!」


 タクオが思わず四本の腕で体をかばう。その次の瞬間。




 ヴォン!




 どこからか三基の大きなドローンが飛来、その内一基がタクオの前方でビーム防壁を素早く形成。


 バチィ!


 飛んできたビームを防いだ。


「あ、あ、あぶ、危ない!」


 タクオはおびえながら、緑色のビームが飛んできた方を見やった。




 ◇ ◇ ◇




「ゴメン! 防がれちゃった! もぉー! 最近防御系の武装、無駄に充実してきてない?」


 街の外周。防壁の上でビームスナイパーライフルを構えるチャカヒメ。そのコックピットでリンコがスコープをのぞいたまま口をとがらせる。


「確かに厄介だな……もう一発試せそうか? なんとか街の外へ引きずり出したい」


 そのチャカヒメのすぐ隣で、カリオのブンドドマル、ニッケルのハネスケが、オーツカシティに現れた鈍色にびいろの巨体を見据えていた。




(転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略⑧ へ続く)


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