転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略④
◇ ◇ ◇
「なんだって? マヨとミントンがいない?」
破壊された数十機ものテロリストの機体の残骸。その真ん中、ハネスケのコックピットでニッケルはレトリバーⅡのブリッジから連絡を受け、ため息をついた。
「ったく、勝手に外出か? 大事になってねえといいが……わかった、すぐ戻る」
「あのガキ……」
カリオも同じようにため息をつく。その横でリンコはビームピストルを腰にしまう。
「ミントンは繋がらないの?」
「らしい」
「ダメな大人だねー、早く帰らないと」
カリオは破壊されたテロリストの機体をジッと見つめる。
「ミントンか。オーツカシティって確かデカいロボットの会社なかったか? リンネ・リンネとかいう。ミントンが見たがりそうなトコ、ひょっとしてそれ見たさに……」
カリオにそう聞かれるとニッケルとリンコは少し眉間に皴を寄せた。
「どうしたニッケル、リンコ」
「いや……デカいロボットの会社……どうにも」
「何らかのフラグの臭いが……」
◇ ◇ ◇
パパパパパン!
リンネ・リンネ本社工場。広い敷地内に銃声が響く。工場の奥の研究棟からは火の手が上がっていた。
その棟の入り口から、茶筒型のロボット、ブンタが這い出てくる。
「ハァ……ハァ……外だ、ここ……やっぱり工場だったり……」
ダダダダダ!
「!?」
やっとの思いで外に出たばかりのブンタの前方から、大勢の人間が走ってくる。その先頭にはどうみても十歳前後の子供と作業服の女性――マヨとミントンがいた。
「ヤバい! ノープラン突撃すぎた! なんか追っかけられてるし、この会社のフル武装っぷりおかしいでしょ!」
「ミントンミントン! あの建物火事です! 消しに行きますよ!」
「待ってちょっと待ってマヨそれは無茶――」
その後ろからは銃を持ち防護服を着こんだ大勢の武装警備員が二人を追う形で走ってくる。その光景にブンタは慌てふためく。
「な、ななな、何が起こって――」
「ミントンミントン! なんかドラム缶ロボっぽいのが怪我してるっぽいです!」
「いや待ってえっこのまま中に入るのマジでちょ――」
パパパパパン!
ダダダダダ!
……! ……!
…… ……
――
――武装警備員の群れから必死で逃げ出したマヨ、ミントン、そしてブンタの三人(?)は、火災が発生している研究棟の隣の棟、その一階の一室に隠れていた。
「煙がすごくて火事消しに行けなかったです……」
「当たり前でしょ! 無茶すぎんのよ……! クソッ……怪我人がいたら助けなきゃ、って勢いで飛び込んだら、私達がダメなことになってる……」
ミントンは壁に耳を当てて外の音を探ろうとする。
「幸いこの建物にはまだ火は回ってないだろうけど、あの警備員たちがうろついてるかも……にしても」
ミントンは隣でピロピロと電子音を出しているブンタを見つめる。ブンタはその視線に気づくとピロリン! と反応した
「な、なんすか」
「ロボットにしちゃぁ、なんかこう……生々しくない? リアクションとかが。これがリンネ・リンネ社の技術力ってワケ?」
「リンネ・リンネ……ここってリンネ・リンネ社の工場なんですか!?」
聞き返してくるブンタを、ミントンはますます不思議に思いジッと見つめる。
(……マズい! なんかめっちゃ見られてる! 拙者こんなに女の人に近くで見つめられたことないでござる……! いや違う違う! ちゃ、ちゃんと状況を説明しないと)
「おいホントにこの建屋に逃げ込んだのか? 被検体。 侵入者もどこ行ったかわからないし今日は酷いな」
(……!!)
部屋の外から複数人の男性が話す声が聞こえてくる。恐らくは武装警備員。三人はおそるおそる部屋の扉を開けて様子をうかがう。廊下の奥で白い光が強くなったり弱くなったりしている。懐中電灯の類の光だろう。
「ヤバいヤバい、ちょっとここは離れよう」
「でもどこに……」
「奥しかなさそうでげすよ」
三人は抜き足差し足で部屋をあとにし、建物の奥へと進んでいった。
◇ ◇ ◇
「目覚めるのですタクオよ……目覚めなさい……」
女性の声が聞こえてきて、タクオ・ナードは目を開けて体を起こした。何もない真っ暗闇の空間。タクオの周囲にだけ光が降り注いでいる。
そのタクオの真正面。大きな椅子に女性が腰かけている。白い装束に美しい金色の髪、宝石が散りばめられたサークレットに、どこか邪悪さを感じる赤色の瞳。
その美しい女性を目の当たりにしたタクオは思わず口にする。
「貴方は……さては女神様!」
女神と呼ばれた女性はタクオに優しい笑みを浮かべる。
「タクオよ……貴方の命は失われました。輪廻転生の理に則り、私は女神として貴方に新たなる生を与えます」
その言葉を聞いたタクオは目を見開く。
(こ……これはまさか! 異世界転生という奴では!?)
◇ ◇ ◇
(はっ……!)
タクオ・ナードは目が覚めると同時に辺りを見回す。
不思議な光景がそこにあった。自分の腰の高さほどのテーブルのような場所の上で、虫のような物が数匹、ウロウロしている。
タクオはその虫をまじまじと見つめる。その虫は人間のように二本の足で立って――
タクオはそこで気づいた。これは虫ではない……人間だ。
(なっ……これは……小人ちゃん!?)
目の前の小さな人間がタクオを見上げる。いずれも白衣の男性だ。
(女の子じゃない……残念。ん? この状況何?)
「目が覚めたかねタクオ君」
突如、聞こえてきた男性の声にタクオは驚く。普通の聞こえ方ではない。何か耳の奥、頭の中に直接声が入り込んでくるような感覚だ。
「突然のコトで驚くかもしれないができるだけ冷静に聞いて欲しい。君は――アライシティで一度死んだのだ」
(転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略⑤ へ続く)




