転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略③
◇ ◇ ◇
「やべえっす。ここのバナナ超うめえっす」
「ダメだコレ、マジちょっと美味すぎるよね」
オーツカシティの市場。艦をこっそり抜け出したマヨとミントンは、何故かテラス席で山盛りになったバナナを一心不乱に食べていた。
「この中毒性……さては企業が絡んでいるわね。科学都市と言われるオーツカシティならあり得るわ……!」
「邪悪な食べ物ってことですー!?」
ミントンはふとバナナを食べる手を止める。
「あ……マヨ、この後ちょっと寄り道してよき?」
「お、どこ行くですか」
「企業、で思い出したんだけど気になる会社があってさ。ロボット技術界ではかなり有名どころで。ちょっと覗いてみてつまんなそうだったらナシでいいからさ」
「うぉおお! ロボットの会社! こーぽれーしょん!」
マヨは興奮しながらバナナを頬張り、皮を振り回した。
◇ ◇ ◇
とある施設。白く無機質な廊下を、白衣を着た研究者や小銃を構えた警備員が行き交う。
その廊下の角からこっそりと顔を覗かせる者がいた。茶筒型ボディの銀色ロボット――ブンタである。
(ここどこ? この状況何? 夢じゃないの? ほっぺつねってみたいけどこの体じゃつねれないし……)
廊下から人がいなくなったのを確認すると、ブンタはこそこそと小走りで次の角へ移動する。
(ミチぽんのフィギュア……どこだろう。いやそれどころじゃないよなぁ)
フォオオオン!!
「緊急放送、緊急放送。Bブロックにて保管していた被検体が失踪。見慣れぬロボットを見かけた方はすぐにBブロック管理事務所まで連絡願います。繰り返します――」
突如、警報音と共に事務的な声のアナウンスが館内のスピーカーから響き渡る!
(ちょ、え、これ僕のコト!? ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい!)
ブンタは焦りながら歩を進める。何かしらの扉が見えてきたところで横を見ると、白衣を着た数人と目が合った。
「あ……」
ブンタは思わずピタリと動きを止める。白衣の研究者達は一斉に彼を指さす。
「おい……アレじゃないのか、放送で言ってる被検体――」
バァン!
反射的にブンタはそばの扉を開けて駆け出した!
「おい逃げたぞ! すぐに連絡を入れろ!」
◇ ◇ ◇
――同時刻、オーツカシティ近くの荒野。ここではカリオ・ニッケル・リンコの三人とテロリストグループの激しい戦闘が行われていた!
バシュゥバシュゥバシュゥ!
リンコのチャカヒメが華麗に宙を舞う。頭を逆さまにし、開脚した体勢で横に一回転、両手両足に装備されたビームピストルで射撃し、周囲のテロリストのビッグスーツ四機の頭や胸を射抜く!
「こいつ!」
ダダダダダ!
テロリストの機体が一機、実弾ライフルでリンコの左側から彼女に向けて、射撃する!
シュン! ブゥン……!
「!? なっ!?」
その間に板状の物体が飛び込んでくる。ニッケルのハネスケに搭載されたドローン兵器「ウェハー」だ。一基のウェハーは射線上に入ると、自身の周囲にビーム膜で出来たシールドを展開し、テロリストが発射した銃弾を防いだ!
「クソッ!」
「あんがとー! ニッケル!」
テロリストが後ろに退こうとしたその時、横からカリオのブンドドマルが凄まじいスピードで接近し、ビームソードを左から右に振るう!
横一文字!
水平に放たれたカリオのブンドドマルの斬撃が、テロリストのビッグスーツを上下に真っ二つにする。
「まだいる! 油断するなカリオ!」
バシュッバシュッバシュッバシュッ!
ニッケルのウェハーが七基、カリオを包囲しようとしていた複数の機体を一斉にビームで貫く! 射抜かれた敵機が倒れるとほぼ同時に、カリオの右隣にニッケルのハネスケ、左隣にリンコのチャカヒメが並んで残心する。
フォンフォンフォンフォンフォン!
その三機の頭の上を囲むように、大量のドローン兵器が飛んでくる。その数、実に七十二基! カリオ達の百メートルほど前方のビッグスーツの集団。その先頭、厳つい装甲に覆われたビッグスーツに乗ったテロリストのリーダーが、高らかに笑う。
「ハーッハッハッハッハ! 二十四基の一セットで一億テリもするアルバトロス社製の最新AIドローン砲台だ! 軍事レベルの高性能AI制御による複数の死角からのビーム砲撃を食らえ!」
バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!
大量のドローン砲台が一斉にビームを放つ。ブンドドマル、ハネスケ、チャカヒメの三機が同時にに地面を強く蹴り、動く!
◇ ◇ ◇
「ここかぁ、リンネ・リンネ社。大きいねえ」
何百メートルとあるフェンスの真ん中、リンネ・リンネ本社工場の正門の前で、ミントンとマヨは辺りを見回した。
「こう……すごくデカい工場というのはわかるのですが! 中の様子がわかりませんねえ! ロボ!」
「流石にこっからじゃあ中の事はわからないよねぇ。守衛さんに聞いてみよっか。すいませーん! ここって一般見学とかやってないんすかー!」
小さな守衛所で煙草を吹かす年配の守衛の男性に、ミントンはラフに質問する。
「あー……姉ちゃん悪いな、この会社はやってねえんだ。酷えんだ秘密主義がよ」
「酷いんだ」
「毎日ここでグータラしてる俺でも製品の一割も知ってるかどうか……あー待ってくれなんか鳴ってるな、もしもーし」
ミントンに負けず劣らずラフに対応していた守衛は、ベルの鳴る音に反応し、通信機の受話器を取った。だらしなさが滲み出ていた表情がみるみる焦りの色を帯びていく。
「なんだって!? 武装警備員が出動中!? おいこっちにまで来ねえよな!?」
守衛の慌てる様子をみて、マヨとミントンが顔を見合わせた時だった。
ドォン!
「ちょ!?」
突然の爆発音。正門の奥の方、二百メートルほど先から煙が上がっているのが見えた。
「おいおい冗談じゃねえぞ! こんな騒ぎ何年ぶり……あ、ちょっ! アンタら!」
慌てる守衛の目の前でミントンはマヨを抱え上げてフェンスを乗り越えさせる。そのまま続いて自分もフェンスによじ登る。
「こらアンタ達!」
「大丈夫! なんかこう、基本的な人命救助のイロハは訓練を受けて……あ、あんま思い出せないな。まあいいか」
「よくねえよ! ちょ、ちょっとコラ!」
怒鳴る守衛を放ったらかしにして、マヨとミントンは工場敷地の奥へと走って行ってしまった。
(転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略④ へ続く)




