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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
129/226

マスタートリオ・オブ・ブラックトリオ⑨




 ◇ ◇ ◇




「はえー大変だったんですねぇー」


 マヨはポテチを口に大量に突っ込んでボリボリと嚙み砕き、飲み込むと指に付いたポテトチップスの油をペロリと舐めた。


「絶対大変だったとか思ってねえだろ、大変だったんだぞ……」


 マヨの向かい側でカリオが目を細くして彼女をにらむ。




 懸賞金けんしょうきん狙いの悪漢あっかん達のビッグスーツ部隊を退け、カリオ達は再び、マヨに土産話を聞かせる羽目になっていた。




「大変だったんだぞ。クマもマンモスもドラゴンもスライムも強いし、食いもんがろくなの無くて十回は腹を壊したし……何度死ぬと思ったか……」


 カリオは遠くを見るような目つきで修行の日々を思い出す。硬くて脂っこいクマ肉を頬張ほおばり、いつの間にか腕の皮膚の下に住み着いてた寄生虫を気合でむしり取り、ドラゴンが吐いた火に足を焼かれ数日その場から動けなくなり――。


 辛い修行の記憶に反応するように、カリオのほおを涙が伝った。


(よく生きていたなぁ俺……! なんだいきなり修行って……! ってかあのクソ重マントと剣をあんなバカみたいな方法で配達できるメテオ・デリバリーってなんなんだよ!)


「えぇ……泣くほどですかカリオ」


 マヨは同情しつつちょっと引いた。その右隣ではニッケルが腕を組んでうなずいている。


(まさかもう寿司を見たくないなんて気持ちになる日が来るなんて思ってもみなかった……ラグビー部の大学生、大食いプロチーム、オークのおっちゃん達……一日四ケタの寿司を握る毎日……ほんのちょっとだけ無間地獄むけんじごくだったぜ……)


 ニッケルは片手で口を覆い泣いた。さらに引くマヨ。カリオの左隣でリンコが震えていた。


(……私、半年間の八割ぐらい真っ暗闇の中ひたすらどつかれてたんですけど……!)


 リンコは顔をテーブルに伏せて声を上げて泣いた。マヨはもう顔を青くしてドン引きしていた。




 ◇ ◇ ◇




「やれやれ、二人ともちょっと弟子をいじめすぎじゃのぉ。ちょっとは加減したらどうじゃ」


 とある森。焚火たきびの向かい側でシガラ・ヒゲリーは胡坐あぐらをかいて茶をすすりながら、映像通話が可能な最新ノートパソコンを使って、アクーリ・セイデンとサク・ランボーと談笑していた。


「ひどーい! アンタに言われたくないわヨ! 森に放置は死んじゃうでしょ!」

「私達は徹底した管理体制の下で訓練させていた。大自然に雑に放り込むなどという行為と一緒にしてもらっては困る」


 不満そうな顔で抗議するアクーリとセイデンの映像を見てシガラはゲラゲラ笑う。


「まあしかしアレじゃの。連絡もろくにとっておらんかったから、弟子が五体満足で元気にしとるのを見れるのは悪くないわい」

「それはそう」

「それはそう」


 三人はほぼ同時に頷いた。


「また生きているうちに会えるかのう」

「どうかしらねェ。高い懸賞金、今頃になってイニスアの囚人が突然の覚醒かくせい、ユデン・ファミリーを始めとする暴力組織の巨大化、複数都市の連合化などの地域間の緊張の高まり……」

「死なずにもう一度同じ季節を迎えられるかは五分五分といったところだろうな」




 三人の間に数秒の沈黙が流れる。アクーリはパイプで吸った煙をスゥーっと吐いた。


「……また半年後に拉致らちしちゃおっかしらニッケルちゃん」

「ワシもなぁ。暇じゃしのぉ」

「私は暇ではないがあの小娘は放っておくとまた怠惰たいだな生活を送りかねん。定期的にしつける必要がありそうだ」




 ◇ ◇ ◇




「はい、おまちどおさま」


 先代の艦から続いて、レトリバーⅡの料理長を務めるマロンナ・モンブラが、テーブルの上にアップルパイを並べる。マヨと三人の傭兵ようへい達は美味しそうな見た目と香りにごくりと喉を鳴らした。


「うぉおおお! マロンナおばさん元気になってよかったぁあああ!」

「修行中は熊とかマンモスばっかり食ってたからマジありがてえ!」

「うえええん! エイヨウマンテンチャイロオオムカデじゃない料理だぁあ!」

「うわ……大の大人が三人揃って号泣とか……」


 アップルパイに泣きながらかぶりつくカリオ達三人の様子に、マヨは本日四度目のドン引きを経験する。


「しかし、帰って来る時も師匠連中に届けられるとはねえ」


 四人が座るテーブル席の後ろから、メカニックの一人である女性、ミントン・バットがロリポップキャンディーを舐めながら様子をのぞき込む。カリオ達三人はこの三日前、走行中のレトリバー艦内の応接室で、気を失った状態で発見された。高速で移動する地上艦の艦内へ、誰にも気づかれずに人間を運び込むという芸当ができるのはそうはいない。クルーの誰もがカリオ達三人の師匠達の仕業だろうと信じて疑わなかった。




「さて、それ食べたらニッケル! 今日も調整付き合ってよね」

「またやんのか!? もういいだろウェハーの調整」 


 嫌がる様子を見せるニッケルに、ミントンは呆れた様子で笑いながら続けた。


「ダーメ、もうちょっと詰めたいの。次の任務はもう決まってるんだし」




 かくして、色々と装いを新たにしたレトリバーの傭兵チームは、新しい任務へと向かう!




(マスタートリオ・オブ・ブラックトリオ おわり)

(次回 転生したらロボットになってて無双&ハーレムが以下略)

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