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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
128/228

マスタートリオ・オブ・ブラックトリオ⑧




 ◇ ◇ ◇




「はえー大変だったんですねぇー」


 マヨはポテチを口に大量に突っ込んでボリボリと嚙み砕き、飲み込むと指に付いたポテトチップスの油をペロリと舐めた。


「絶対大変だったとか思ってねえだろ、大変だったんだぞ……」


 マヨの向かい側でカリオが目を細くして彼女をにらむ。


失敬しっけいな! ちゃんと話聞いてますよ、その、あわれなり……って思ってますよ。んで新型機届いてからはどうしてたんすか」


 レトリバーⅡの食堂。結局三人の傭兵ようへいは昼食時にマヨに捕まり、半年間の土産話みやげばなしをする羽目になっていた。


「新型機届いてからはな……ん? 警報?」


 プォオオオン! プォオオオン!


 敵襲を報せるサイレンが、レトリバーⅡの艦内に響き渡る。カリオ、ニッケル、リンコの三人は数秒両手を上に上げて伸びをした後、席を立ちあがった。


「なんだなんだ誰が襲ってきてるんだ? マヨ、話の続きは後だ。部屋に戻って窓から離れてろ」

「おいすー!」


 カリオは敬礼するマヨに見送られて格納庫に向かった。


(……そのまま寝てくれたりしねえかな)




 ◆ ◆ ◆




 ズドォン!


「おい! なんかもう一つコンテナが墜落ついらくしたぞ!」


 先ほどメテオ・デリバリーのコンテナが墜落した場所からまた百メートル離れた場所に、別のコンテナが墜落する。それを見たカリオがそちらに駆け寄ろうとするのを見て、シガラが声を掛ける。


「アレは修行用の追加装備じゃ。後で拾うぞい」

「修行用?」


 カリオは立ち止まって振り返ると首を傾げた。




 ――十分後。


「よし……エラーなし、正常に動く。ってか……」


 ブンドドマルに乗り込んだカリオは、それを操作して機体が入っていたのとは別のコンテナの中に入っているモノを取り出す。肩パッドの付いた黒いマントだ。驚くべきはその重さである。


「重っ! まさかビッグスーツ用の重りとは」


 実に百トン近い重量の訓練用特殊マント。カリオは起動したばかりのブンドドマルに、そのマントに頭を通して装着させる。フィードバックで肩にのしかかる重みに、カリオは思わずぐえっ、と声を上げる。


「まず今日はブンドドマルに乗った状態で軽く体を慣らしておくんじゃ。明日からは引き続きこの森で生活しつつ、ビッグスーツ乗りの傭兵としての仕事も並行してやるぞい」

「仕事?」

「この近辺でマフィアの解体があったせいで、新興しんこうの盗賊グループが大量発生してての。場所がわかり次第、近くの自治体から討伐任務とうばつにんむを回してもらえるようにしてあるんじゃ。仕事が入ったらさっきの重りをつけたままやっつけにいくぞい」

「これつけたまま!?」




 ◆ ◆ ◆




「寿司屋のキッチンから解放されたァー!」


 アクーリ達の拠点の外の荒野、メテオ・デリバリーによる弾丸配達だんがんはいたつで届いた新型機、「ハネスケ」のコックピットでニッケルは歓喜かんきの雄たけびを上げる。


「甘いわねニッケルちゃん。これからの訓練の方が厳しくなるはずヨ!」


 棒立ちのハネスケの周りを十数機ものビッグスーツが取り囲んでいる。その中の一機、一際ひときわ大きいピンク色の機体が、巨大なビーム斧を片手に前へ一歩、踏み出てくる。アクーリの乗る機体だ。


「これからここにいる全員と同時に模擬戦をしてもらうわよ。ただし、ニッケルちゃんはそこから一歩も動かないコト。装備されているドローン兵器、『ウェハー』のみを操作して全員を撃退してもらうワ」

「なっ、ハァ!?」

「まあ今はハネスケのシステムを細工しているから動きたくても動けないと思うけどね。お互い訓練用にビーム出力は弱めてるけど、気を抜くとそのままたんこぶだらけになっちゃうわよ~。ではスタート!」

「待て待て待て待て!!」


 アクーリのいきなりの模擬戦開始宣言と同時に、ニッケルの後輩たちが乗ったビッグスーツ達が一斉にハネスケに飛び掛かる!


「うおおおニッケルさんをどつきてえええ!!」

「金返せえええ!!」

「あの時のおはぎの恨み!!」


 バシュシュシュシュシュッ!


 様々な思いを胸に、襲い掛かって来る後輩たちに向けて、ニッケルは「ウェハー」を展開する!


「クソッ! 俺そんなにうらまれてたっけ!!」




 ◆ ◆ ◆




「え、目隠し外さないんですか。外しましょうよ。そろそろ外の光を浴びないとマズいし、新型機どんなのか見たい!」

「甘えるな小娘、さっさと新型に乗れ」


 ルツーフ・センターの屋外大訓練場。サクに冷たく指示されてふくれれっ面のリンコは、目隠しをしたまま新型機「チャカヒメ」のコックピットに乗り込む。


「普通にハッチ開けて乗り込んだ……」

「目隠ししたまんまで……乗ったコトない機体に……」

「髪型もやってることもおかしい」


 後方で何人もの後輩が、リンコのスムーズな機体搭乗に困惑こんわくする中、サクはむちを地面に叩きつける。


「貴様らも呆けていないで機体に乗り込め! 予定通りこれより模擬戦を行う! リンコは訓練用狙撃ライフルのみを使用、その場から動かずに相手チームの機体を撃て。その相手チーム――リンコ以外の全パイロットは武器を持たずに訓練場内で回避機動に専念しろ。三分以内にリンコが回避チームの全機体に狙撃を当てられたらリンコの勝利、一機体でも打ち漏らしたら回避チームの勝利。勝った方の夕食はカレー。負けた方の夕食はエイヨウマンテンチャイロオオムカデのシチューだ」

「えええ!?」


 リンコと後輩達はエイヨウマンテンチャイロオオムカデと聞いて戦慄せんりつする。テエリク大陸で一番不味くて栄養価の高い昆虫ランキングで五年連続一位を獲得している食材だ。


「ブザーが鳴ったら開始だ。気を引き締めるように」

「うおおおおお!!」


 ブザーのボタンを握るサク。目を血走らせ臨戦態勢に入るリンコ、後輩達。晩メシの天国と地獄を決する戦いの火蓋ひぶたが切られた!




(マスタートリオ・オブ・ブラックトリオ⑨ へ続く)


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