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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
123/229

マスタートリオ・オブ・ブラックトリオ③

 パラリラパラリラパラリラ!


 ラッパの音が鳴り響く中、沢山の下品なドクロマークの旗が風になびく。




 レトリバーは十隻近いならず者の地上艦の群れに追跡されていた。ニッケルは甲板の上から敵艦の砲台をビームライフルで攻撃する。レトリバーの対空機銃が飛んできた砲弾を撃ち落としていく。


「ブリッジ! カリオとリンコは!」

「今呼び出した! 発進まで五分、いや三分!」


 ドローン砲台「チョーク」を機体から射出させるニッケルの頬を汗が伝う。


「三分……三分かぁ、いやなんでこんな追手多いんだよ!」




 ガコン!


 ならず者の地上艦数隻の、格納庫の扉が開く。中からは次々ととげ付き肩アーマーやモヒカンヘルメットをかぶったガラの悪そうなビッグスーツが次々と飛び出してくる!


「うおおお! 今一番ホットな賞金首! レトリバーのブラックトリオ!」

「見ろよあの船体! ボロボロだぜ今がチャンスだ!」

「俺が先だ!」

「イヤッホオオオウ!」


 ビッグスーツのコックピットで、ハイになったならず者たちが雄たけびを上げる!




 ◆ ◆ ◆




「襲撃は想定してなかったわけじゃないけど……!」

「数が……! ひょっとして多いんじゃねえか……!」


 カリオとリンコは慌ててビッグスーツのコックピットに飛び乗り、ヘッドギアを装着する。クロジ、コイカルそれぞれのカメラアイが光り、脳波コントロールが起動したのに合わせて、その両腕がピクリと小さく跳ねる。


「カリオ! リンコ! まだか! まだかーっ!」

「ニッケルあと二十秒!」

「十秒で来てくれ!」


 ドタタタタタ!!


 ニッケルからの通信にけたたましい銃声が混じっている。


整備員メカニックは全員避難して! ハッチ開いたらクソデカ鉛玉なまりだま飛んでくるよ!」


 リンコは機体の外の作業員に外部スピーカーで伝える。タックは舌打ちしながら操作パネルのレバーを引く。


「クソッ、危ねえ発進だな!」




 ◆ ◆ ◆




 ガコン!




 レトリバー後方のハッチが開くと、間髪入れずにカリオのクロジとリンコのコイカルが飛び出した。


 その眼前五メートル――直径八メートルの巨大なとげ鉄球が二機に迫る。




 ゴォッ!




「おわあああ!?」


 カリオは慌ててビームソードを抜刀! 斜め上に斬り上げて鉄球を真っ二つにする。


 バシュッバシュッバシュッ!


 すぐ後ろからリンコがビームピストルを発砲! 鎖付き棘鉄球を放り投げた張本人であるビッグスーツの、頭部と胸部をきっちり撃ち抜いた。




「危ねえ! 出だしから危ねえ!」


 カリオは地上をレトリバーをかばうように走り、リンコはニッケルと同じように甲板に着地してそこに陣取る。


「地上艦九隻!? 殺しに来てるじゃん!」

「だから早く来てくれって! うおっしゃべってる場合じゃねえミサイルくるぞ!」


 ドォンドォンドォン!


 レトリバーの対空機銃とニッケルのライフルとチョーク、リンコのビームピストルがミサイルを撃ち落とす。


 ダン!


 一方のカリオは敵船の甲板に飛び移っていた。三機のならず者ビッグスーツが銃と剣を構えて立ち塞がる。


「とっとと死ね二億テリ!」

「うるせえ! ……え、二億?」


 ガキンガキンガキンガキン!


 甲板でカリオのビームソードとならず者の武器がぶつかり合う!


「カリオ! 戻れ! 船に敵の機体が乗り込んできそうだ!」

「なっ!? いや待てこっちも――」




 ドォンドォンドォン!

 ガキンガキンガキンガキン!


 …………

 ……――

 ――――



 ――――――――。




 ◆ ◆ ◆




「クソォ! ちっとも傭兵ようへいを引退できる状況じゃねえ!!」


 突然の襲撃から一時間後、ニッケルはレトリバーの食堂のテーブルに突っ伏した状態で叫んだ。その四人席の隣ではカリオ、向かいの席ではリンコが同じく死んだようにテーブルに突っ伏している。


 九隻のならず者の集団をなんとか撃退し、その末にわかった悲しい現実が彼らを絶望のズンドコに叩き落した。


「まさか俺達に一人当たり二億テリの賞金がけられてるとは……!」

「前から確かに裏社会からはにらまれてたし懸賞金もかかってたけど……! 金額……!」


 疲労困憊(ひろうこんぱい)のカリオとニッケルは突っ伏したまま口だけ動かしている。その向かい側でリンコが携帯端末の画面を見つめる。


「加えて……」




 リンコの視線の先、画面には見た目年齢五、六歳、黒髪短めのミディアムヘアの、馬鹿面ばかづらで笑う少女の顔が映っている。


「マヨ・ポテト、懸賞金一億。生きたまま保護の事……」




 三人は数秒沈黙した。


「……流石にマヨを無防備にしておけねえし、ビッグスーツはしばらく手放せそうにねえなぁ」




 ぼやく三人のところに歩み寄る影があった。


「そうと決まれば……話がある!」


 話しかけてきたのはレトリバーのチーフメカニック、タック・キューである。


「なんだタック、見てわからねえか今心身ともにがけっぷちだ」

「ああ、わかってる。だが崖っぷちなのはおまえらだけじゃねえ――」


 睨むニッケルに睨み返すタック。


「――おまえらの機体もだ」

「……あー」


 タックの言葉を聞いてカリオは察した様子で力なく声を出す。


「やっぱやべえのか? クロジ」

「ニッケルとリンコのコイカルもな」

「……はっきりと違和感を感じたのはコレスとやり合う前ぐらいからか。確かにレスポンスがほんの少し悪くなってきてた」


 カリオとタックのやりとりを聞いて、リンコが嫌そうに眉間みけんにしわを寄せる。


「うぅ……私も実はコイカルの様子がおかしいかなって、思ってたけど……もしかして、ちょっとやそっとの修理とかでどうにもなりそうもない?」


 リンコのすがるような声に、タックはため息で返した。


「限界が近づいてんだよ、おまえらの愛機。簡単な整備だけしてこのまま戦い続けてたら、近いうちに突然バラバラになってもおかしくない。少し休ませてやらないと」

「そげなぁー……」

「……この際だ。作るぞ、お前ら専用のワンオフ機……!」




(マスタートリオ・オブ・ブラックトリオ④ へ続く)

 

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