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一話

「なあ色取」


「なんだよ赤城?」


「お前ってさあ、漫画とかだと"シャシャシャシャ!!"って笑いそうやな」


「はあ?そんな笑い方のキャラ見たことあんのか?」


「はっはは!ねえなあ。でもありそーやろ?」


「…ありそう」


赤城はパソコンと向かい合い、僕の方には目もくれずに話続ける。


「色取ってさあ、昔小学校の先生とかが言った何気無い一言がずっと頭に引っかかってるみたいな感覚ない?」


ふと思い出してみようと記憶をさぐっては見たものの、そんな引っかかっているような感覚は無かった。それどころか担任の先生すら誰だったのか僕には思い出せそうに無かった。


「んー?いやあ、無いなあ」と答えて首を振る。


「別に嫌なことだけじゃなくってもさ」


赤城は手を止めて、うーんと少し考えるような仕草を見せてから口を開く。


「例えばどうでもいい友達の好きな食べ物とか、親の実家に帰るときのどうでもいい景色とか?」


「ああ、そういえば昔、サッカー部の先生がよく”死ぬ気でやれ。死なねえから”って言ってたなあ」


「そういうのじゃないんだけど…その言葉ってなんかお前の人生に影響与えた?」


「死ぬ気で頑張ることなんて結局一回もなかったなあ」


赤城はくるりと椅子を回して僕の方を向いた。


「俺さ昔からよく”いい奴そう”って言われんだよ」


「…何だそれ。自慢か?」


僕がちょっと戯けて言ってみたが、赤城のやつは珍しく軽い挑発にはのらず真面目な顔のまま答える。


「いや、どっちかといえば不幸話。それってさ呪いみたいだと思わねえ?」


「呪い?なんで?」


「たとえば天才とかいうのもそうだと思うんだ。天才ってのは周りの人間がいてこそ成り立つものだろ?」


「…そうかな?天才ってのは孤の極地みたいな気がするけど」


「そうじゃなくてさ。天才ってのは周りの人間が認めてこそ天才って呼ばれるだろ?ピカソだって誰かが天才って言いださなきゃ子供の落書きとして終わったろうし、エジソンだって母親が天才と言わなきゃただの社会不適合者だろ」


結構酷い言い様だったが少し納得した。

まあ、それはそうか。

誰にも認められない自称天才を想像して少し胸が痛む。


「けど俺は逆だと思うんだ。”あんたは天才だ”とか”君は才能がある”って言葉がその人をどんどん孤独にして、天才にさせちまう気がするんだよな」


「でもそれって捉えようによっちゃ良い事なんじゃないか?」


僕がそう答えると、赤城は何か言いかけてから「いや、悪い。なんでもない」と少し笑った。なんで笑ったのか僕にはよく分からなかった。


ああ、そうだ。一つだけ思い出した。

あれは誰に言われたっけ?


「良くも悪く無個性」


なぜかその言葉を思い出した途端、心臓のあたりがギュッと苦しくなって“ああ、心ってこんなところにあったのか“なんてことを考えた。

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