第1話 異世界転移
「ギョアアアァ」
ひとつ、またひとつと俺は無表情で魔物の首を飛ばしていく。
つまらない。
それがここ数年の俺の口癖だ。
冒険者になって5年。
最初は楽しくて仕方がなかった。理不尽な魔物、自分より高ランクの冒険者。死にかけることも多々あった。けどそんな毎日が刺激的で、生きてる意味を感じられた。
だが、今や俺はS級冒険者。自分より高ランクの冒険者は存在せず、1人で倒せない魔物は存在しない。
そしていつしか『十傑』と呼ばれる、世界で最も恐れられる10人のうちの1人となっていた。
そんな俺は、何のために生きているのか、そんな風に自問自答する日々を送っている。
「ああ、なんかおもしれーこと、起きねーかな。」
すると、突然それに呼応する様に白い魔法陣が俺の足元に拡がる。
「は、はあ!?」
そんな俺の叫びも虚しく身体は動かない。
だが、俺ーーレンは薄れていく意識の中、微かな期待感を胸に抱いていた。
***
***
***
「おはよ〜。」
私はいつも通りのテンションで親友2人に声をかける。
「おはよ。」
「おっは〜!!」
私の親友ーー一瀬川梓と遠山亜美もいつものように返してくる。
「相変わらずテンション高いなぁ、亜美は。」
「亜美はそれだけが取り柄だからね。」
「ちょ、ひどいよ〜!」
いつもの掛け合いが気持ちいい。
この2人とは高校2年生で初めて知り合い、意気投合しそれ以来ずっと一緒にいる。他のクラスメイトも仲はいいが、この2人は特別なのだ。
梓はいつも冷静で、お姉さんという言葉が似合う。
すらりとしたモデル体型で、艶のある黒髪をいつも後ろで括り高めのポニーテールにしており、本当に美人だ。
彼女に憧れを持つ男子生徒は多いらしい。
だが、実際に彼女を狙う男子は少ない。畏れ多いのだろう。
その気持ちはよくわかる。最初は私も喋るたびに緊張したものだが、実際喋ってみると可愛いとこもあり、今ではそんな梓が大好きだ。
亜美はいつも元気で、まさに女の子という感じだ。
見た目は金髪ショートでギャルにも見えるが、彼女の明るさを前にしてはそんなこと誰も気にしない。何よりこちらも美人なのだ。読モもしており、彼女に告白する男子生徒は後を絶たない。
そして、私ーー初芝美玖はというと、まあ、うん。見た目は悪くはないと思う。
結構、告白とかもされたことあるし。
身長は梓にも亜美にも負けてるが、スタイルは亜美とは争えると思う。梓には勝てないけど。
そんな風に2人と駄弁っていると、周りの女子がソワソワしだす。
彼が来たのだ。
天城岬。
この学年、いや、この学校で1番の女子人気を誇る男子生徒だ。
長身、イケメンときて、運動神経抜群。そりゃモテるわ。
別に私は彼を好きなわけではないが、モテる理由はわかる。
そんな岬に1人の女子生徒がタタタと近寄る。
「おはよっ、天城くん。課題のプリント出してくれる?」
「おはよう、委員長。はい、これ。」
「ありがとっ。」
佐野詩織。
このクラスの委員長だ。
清楚美人で成績優秀。
こちらも学年の人気者だ。
「あの2人お似合いだよね〜。」
「わかる。理想のカップルって感じよね〜。」
と何処かからそんな声が聞こえる。
私もそう思う。
でもそんなこと言ってたら…
バン!
机をあえて大きく叩き、その2人に嫌な笑顔を向け男子生徒2人と仲良く話している岬の方に向かっていく。
「岬っ! おっはよ〜!!」
「うげ…」
「きた…」
と、岬と仲の良い2人の男子生徒ーー東堂拓人と梅園陸はその場を離れる。
「おはよ。鳳さん。今日も元気だね。」
岬は動じず答える。
「もぉ〜!私のことは恵美って呼んでって言ってるじゃん!」
と、ぶりっ子全開で答える。
鳳恵美。
天城岬に恋する女子生徒。
ただ恋しているだけならばいいのだが、その異様な執着により周りの女子からは嫌われている。
あと、ぶりっ子。超絶ぶりっ子。
「いつもすごいよね〜。」
「アレを前にして、平気でいられる天城がすごいわ。」
「ま、顔はいいし、天城くんも満更でもないんじゃな〜い。」
私と梓と亜美は口々にそう話す。
私たちはいつも通りの朝を迎えている。
今日もいつもの学校生活が始まる。
誰もがそう思っていた。
だが、
突如床に白いナニカが拡がる。
「え!?」
「な、なにこれ!?」
「ちょっ!」
「こ、これはまさかっ! フォーーーッ!!」
口々にみんなが反応する。
「ふぇ、ふぇあ!?」
「何なのこれ!」
亜美と梓が言う。
私は声も出ない。
というより出せない。
意識が遠のいていく。
梓と亜美が必死に何か言ってるが聴こえない。
そして私の意識は闇に飲まれた。
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初投稿です。
よろしくお願いします!!