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(多分)悪役令嬢な転生令嬢の徒然日記  作者: 深川彩琴
第一話 ヒロイン登場
8/8

02

「さて、貴女も怪我はなさそうで何よりだったわ…えーと…」

フランの後ろで呆然と立ったままの少女に声をかける

「あ…あたしローゼリィ…ローゼリィ・カーティスと言います!お嬢様たちは」

ローゼリィ?!まさかのヒロイン遭遇?!

言われてみれば確かに少し癖のある栗色の髪をポニーテールにした美少女、まさにその通りの外見だ

…そうだった…ゲームでは街にお忍びで出かけたフランが

不良に絡まれているヒロインを助けることから二人の接点が生まれるんだった

つまりこれは出会いイベントってやつだ、ゲームと違って私までいるんだけど…

言いたい事は色々あれど、ここは幼い頃から鍛え上げた令嬢の仮面に押し隠す

「名乗る程の者では…それでは不便だから私の事はレティ、そっちはフランと呼んでくれればいいわ」

「本当に助かりました!ありがとうございます!レティ様、フラン様」

下町育ちで貴族のことなど何も知らないヒロインとはいえ

私の家つまり公爵家はともかく、この国で『ジャルダン』と名乗る人物が何者なのか分からないはずもない

そう判断して私もフランも愛称の方を名乗った方がよいだろうと判断した

実際、ローゼリィの反応からも親切な少し良い家の子女みたいな

目上ではあるが動けなくなるほど畏まることもなさそうないい塩梅な顔をしている

「ともあれ、さっきの連中に仲間がいないとも限らない、店まで送るよ」

おおっ!ゲームで聞いたことのあるセリフだ!

いやいや、そこは感動するところではない、と思い直しフランの提案に同意した




ローゼリィを送っていった先ではゲームとは違う展開が待ち受けていた

本来であれば、彼女が働く小さな食堂では不良に絡まれたというローゼリィを

いざこざを聞きつけた店を営む中年の夫婦が心配して待ってくれていた

しかし店で待っていたのは迷惑そうな顔をした老夫婦となんかケバい格好の中年オヤジ

話を聞いてみれば、この店の看板娘であり評判の美少女でもあるローゼリィを

愛人にしたいと言ってるらしい、このスケベ爺は

どう見てもお父様より年上よね?!それが公式設定通りなら私達より一つ下の娘を愛人?

「ふざけた話じゃない?この話、ローゼリィには言わずに進めてたですって

わが国では女衒など認められてないんだけど?」

「お嬢さんが口を挟まないでくれんかね、この町でドーダン男爵に逆らったら商売はできんのだよ」

「そうさね、お嬢さんがこの話を無くしたとしてももうこの店では働かせないよ

親を亡くしたばかりの小娘が弟妹三人抱えて暮らしてはいけんから男爵様に世話になる方が…」

「じゃあ!うちで働いてもらうわ!当然ちゃんと家族を養えるだけの給金は払うつもりよ」

「って!レティ?!せめてグレンかディオンに許可を…いや…そんな時間はないか」

老夫婦の勝手な言い分にカッとなり思わず言い放つと、フランが慌てたが

すぐに真顔になり「イヤリングの魔道具を使え」と合図を送ってきた

イヤリングには通信機能のある魔道具が仕込まれている、市場に出かけるといった時

お兄様とアデルさんが何か話をしていて、そのあと渡されたものだ

自分の身くらい自分で守れるとは言うもののやはり用心のためだと思っていたが

とにかく護衛を呼ぶという事か、とイヤリングの飾りの一部を軽くつまんだ




「お嬢さんがどういう家の方かは知らないがね…我がドーダン家に逆らえばお家取り潰しもあるんだよ」

うるせー…最近序爵されたばっかの新興貴族に如何こうされるほど屋台骨の緩い家じゃねーや

…しまった口には出なかったけど前世の口調が…

「そのような事仰ってよろしいのかしら?後で泣きを見るのはそちらかもしれませんわよ?」

「それに彼女の家が引き取れないというなら我が家で働いてもらうことも考えてもいい」

「そっちの坊ちゃんもですよ?我が家に逆らって家族が王都追放でもされたらどうするのですよ」

慇懃無礼な態度のドーダン男爵は厭らしい笑みを浮かべてフランを牽制するが

いいのかな~フランの家を王都から追い出すってことはそういう意味だと分かってんのかね~

まぁ、正妃様やタチアナ様はもちろん、側妃様もフランも下級貴族が簡単に会える相手じゃないからね

顔を知らない上に愛称でしか呼んでないからわかってないんだろうね~

などと暢気に構えていたら、男爵はどういうわけか私に興味を示す

「なるほどな、どの家かは知らんが貴族令嬢らしい気位の高そうな娘さんだな

金ならいくらでもある…愛妾として私の物に」

「失せろ、この狒々爺が」

思わず素が出てしまった、だって気持ち悪いんだもん!

「下手に出れば小娘が…?!」

殴られる!もちろん殴り返すけど殴られるのはちょっと痛いと思ったが

狒々爺の拳は私には届かなかった

「私の大事な妹に何をしているのだ?ドーダン男爵よ」

「…な…スレイク公爵令息…?!まさかこの娘は『銀薔薇』?!」

無機質なお兄様の声、怒りを隠すこともなく男爵の腕を掴んでいる

私が弟なら「来てくれたんだね、兄さん」とでも言いたくなる表情だが私は妹である

しかし、今日は王宮にいるはずのお兄様がここにいるという事は

「殿下、ご無事で何よりです…しかし面白いことをいう方ですね、ドーダン男爵は」

空間魔法でお兄様と共に転移してきたアデルさんが、なんともいい笑顔でそう言うと

男爵は顔色を青くするのを通り越し真っ白になってへたり込んだのだった



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