へのへのもへじ
わたしは自分の顔が大好きだった。他の誰とも違う、特別な描かれ方をされていたから。
それなのに、大人はたちはみんな、変な絵が描かれた紙で顔を隠していた。自分の顔が好きな、わたしはそれが不思議だった。
一番身近な大人に聞いた。
「こうすると楽なのに気付いたからさ」
わたしたちに同じ紙を配る先生に聞いた。
「大人になるためには必要なのよ」
大人しく貼られる子がいた。いやだと抵抗する子がいた。そんな子も、力を奪われ貼り付けられていった。素顔なままでいる人間は大勢にとって悪だった。だれもかれもがそんな彼らに紙を貼り付けようと躍起になった。
今日わたしたちは卒業式を迎えた。
同じ顔がずらりと並んだ。
大人たちは今のわたしたちを見て涙を流していた。
わたしたちも大人たちと一緒に涙を流した。