その8
そして校長室から出てきた見城に、とある一人の男性教師が声をかけてきた。
先生G「あの、立浪選手は本当に来るのかい?」
見城は微笑みながらそう答えた。
見城「ええ、来ます。大丈夫です!」
それを聞いて、そう語る見城の表情も見て、先生Gも思わず微笑み、そして饒舌に話し出した。
先生G「あ、いや~、そうですか、それはそれは。実は私も昔、プロレスをよく見ててね。ほら、
昔は普通にテレビでやってたでしょ?そこに立浪選手がよく出てたじゃないですか?今は
もうわからないし、テレビもよく見ないけど、でもその人に会えるなんて、やっぱり
嬉しいよね。いや~、本当に来るんだ。子供の頃に戻った気持ちだよ。
見城先生、本当にありがとう。」
見城「いや~、そんな・・・自分も同じ気持ちですよ。」
と言って見城は照れながら答えた。
先生G「それにしても、何で?どうして来る事ができたの?」
見城「それは校長先生との繋がりがあったようです。何か、小学生の時からの友達だそうで。」
先生G「へぇ~、そうなんだ。じゃあ彼も、立浪選手もそんな歳なんだね。まぁそうなるか。
それでも現役って事か、凄いよな。」
見城「そうらしくて、で今年この学校が創立五十周年って事で、その記念として、校長が呼んで
くれんたんですよ。なので無事に、そして試合もあります。」
と見城は先生Gに向かって、ハキハキと伝えた。
先生G「ああ、それは楽しみだ。ああ、そしたらじゃあ、サインとか貰えるかな?あ!そうだ!
色紙を、売店で色紙を、あるかな?じゃあ、頑張ってね。また後で。」
そう言って先生Gは、見城の傍から去って行った。
見城『・・・生徒だけじゃなく、先生たちも楽しみにしてるんだな。・・・企画して良かった。』
先生Gが去ってく様子を見て、見城はそう思った。
やがて見城は職員室から出て、教室の方へと歩いていると、突然後ろから自分を呼んでる声が聞こえてきたので、見城はくるっと後ろを振り返った。そこには秋山と言う女性教師の姿があった。
秋山「見城先生!」
そう言って秋山は見城に近づいてきた。見城は逃げる事も怯む事もなく、立ち待ちしていた。
見城「・・・どうかしましたか?」
見城はそう何気なく尋ねると、秋山はやや深刻な表情で、質問し返してきた。
秋山「あの、試合の方はうまくいくようですけど、肝心の、あの子たちはどうなんですか?」
そう聞かれて見城も一瞬、強張った表情をした。でもうろたえる事なく、淡々とした口調で秋山に答えた。
見城「ええ、はい、一応連絡はしてます。電話じゃなくてラインですが、既読してますけど、
返信はまだ来てません。でもきっと来ると思いますよ。」
そう聞かされても、秋山の表情からまだ不安は消えていなかった。
見城「・・・まだ十分時間はあります。大丈夫ですよ!」
秋山の表情を察して、見城はそう伝えた。
秋山「・・・そうですか?」
不安は消えないものの、秋山は一応承諾した。見城の自信に満ちた口調に、秋山は納得せざるを得なかった。
見城「だから秋山先生、その時はよろしく頼みますよ!」
秋山「・・・わかりました。二人が来たら、あの場所へと案内すればいいんですね?」
見城「はい、よろしくお願いします!」
そう言って見城は秋山に頭を下げた。この後見城は再び歩き出した。秋山はまだこの場に立ち尽くしていた。あの日の記憶を思い出しながら。