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キフチュー仮面   作者: ジンベエ
3/25

その3

  そして二人は体育館に着いた。そこにはもうすでに上杉がいて、トラックから降りて二人を待っていた。二人の姿が見えたので、上杉は小走りで二人の所へと近づいて行った。


上杉「お疲れ様です。で、リングはこの中ですよね?」


 そう上杉が見城に尋ねると、見城は真顔でこう答えた。


見城「いや、リングは体育館じゃなくてあっち。あっちの運動場で頼むよ。ここは使えないんだ。」


 と言って見城は運動場を指さした。この言動に上杉だけじゃなく、高実も驚きの表情をした。


上杉「・・・運動、場?」

高実「え!?野外?・・・野外、ですか?」


 そう言って驚いている二人に対して、見城は無表情で淡々と告げた。


見城「ああ。別に大丈夫だろ?今日は晴れてるし、雨の心配もないし、気温もそんなに寒く

   ならないようだから。でも着替えとかはもちろん体育館でOKさ。控室としてならここを

   使ってもOKって事さ。」


 それを聞いて高実は思わず上杉を見た。上杉も困惑した表情で高実を見つめた。それでも高実は

その状況を受け入れ、理解を示した。


高実「・・・ま、まぁ、いいでしょう。野外でやる事も、まぁありますからね。ただ、ええ、

   まぁ、恐らくきっと、他の連中も逆に、伸び伸びとやってくれるでしょうから・・・。」

見城「ああ、そうだな!逆に室内よりも返って良いかも知れないな。まさしくお祭りって

   感じで、テンションも上がるだろう!」


 と見城は意気揚々と答えた。反対に高実と上杉は複雑な表情をしていた。しかしそうなってしまった以上はそうしていく事で、二人は気持ちを切り替えた。ただ、今三人がいるここ体育館から、見城が先ほど指さした場所の位置まで、距離にしてざっと見ても、軽く二百メートルはある。更にその場所とは見るからに運動場の隅、端っこ的な場所であった。高実は確認のため、再度見城に尋ねた。


高実「・・・あそこ、あそこなんですよね?」


 と言って高実は指差して見せた。見城は深く頷いた。


見城「ああ、そうそう。あそこに頼むよ。」

高実「あの、・・・運動場の、・・・あそこでしかできないんですか?」


 と高実は聞き返すと、見城は少し腑に落ちない表情をして見せた。


見城「・・・確かにな。実は俺も、本当は運動場のど真ん中でやりたいって思っていたんだ。

   けど他の部活の迷惑になるようなんでな。ほら、野球とかサッカーとか、陸上競技にも

   支障が出るって言うもんだから・・・。ただプロレスをやるのは全然構わないんだけど、

   じゃああっちの、端の方でやってくれって事になったんだ。」


 それを聞いて、そして若干歯痒さを見せる見城を見て、高実は重々納得した。この話の後上杉が見城に尋ねた。


上杉「・・・じゃあこれを、車を向こうに移動してもいいですか?」


 すると見城は頭を横に振って、平然とこう告げた。


見城「ダメだ。この駐車場からは出ないでくれ。それも注意されているんだ。

   だからこの中で、できる限り近づけてから、それからは人力で運ぶ形になる。」


 それを聞いて高実と上杉は、これまた言葉を失った。この駐車場内で近づけても、距離は今のこの場所とさほど変わらないのだ。


見城「まぁ、ウォーミングアップとして。そう思ったら全然平気だろ?」


 と明るい口調で見城が言うと、高実と上杉は無言で苦笑するしかできなかった。


見城「ところで二人だけ?他は?他のスタッフとか?」


 と見城が高実を見て尋ねると、高実は気を取り直してこう返答した。


高実「あ、その、まず自分たちが先にって事で。今はリングの設営は自分たち、レスラー自信が

   やる状況なので。昔の、サークルの時のような新人、新入生というか、そういうのはもう

   しませんし、みんなでするっていうのが、今の流れです。」


 それを聞いて見城は、ちょっと驚きの表情を見せた。


見城「あ?そうなんだ!へぇ~。いや~、全然知らなかった、本当に。これも時代の変化か。

   じゃあ二人だけで組み立てるんだな?」


 そう言われて高実と上杉は、再び驚愕の表情をした。


上杉「ふた、二人!?」

高実「・・・え、ええっと、・・・生徒さんたち、とかは?」


 そう聞かれて見城は逆に聞き返した。


見城「生徒?・・・手伝うって事?」

高実「え、ええ、・・・まぁ、そうです・・・。」


 言葉尻が弱々しく、高実はそう答えた。


見城「それもできない。みんな文化祭で忙しいんだ。それに怪我なんかしてしまったら

   もっと大変だ。これも時代の変化だ。」


 そうきっぱりと見城は答えて見せた。


高実「・・・まぁそうですね。確かに、怪我とかさせたらいけない。・・・わかりました。」


 見城の言葉に高実は納得するしかなかった。


見城「そういう事だ。じゃあ後はよろしくな。」

 

 そう言って見城はこの場から去ろうとした時、慌てて高実はこう問いかけた。


高実「あ!え?今からどこへ?」


 すると見城は立ち止って高実と上杉に伝えた。


見城「あ?俺は今から、生徒たちの様子を見なきゃならないから。担任だから。だから任せたぞ。

   本当に頼むな。また、様子見にやってくるから。そして今日はありがとう!」


 そう言って見城は、校内の方へと消え去って行った。


   


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