その15
見城「おお!そうか!うんうん、さすがだな!確かに頷ける!」
高実「でも、今年で終わりだよな?」
ケンジ「ええ、そうですね。卒業ですからね。」
それを聞いて見城は少しもったいない気がした。
見城「そうなんだ。進路は決まってるのか?」
ケンジ「いえ、まだ決まってはないんですけど、ゆくゆくは消防士とか、警察や自衛隊か・・・。」
とケンジが答えると見城はこう聞き返した。
見城「まぁそうだな。自衛隊なら大丈夫だろうけど、・・・プロレスラーは?」
そう聞かれてケンジの表情が少し曇った。
ケンジ「・・・ええ、考えた事はありますけど、・・・やっぱりその先の事とか・・・。」
と言ってケンジは言葉を濁した。見城もこのケンジの気持ちはよくわかる。自分もやはり凄く悩んだからだ。そして見城はゆっくりと、ケンジに笑顔でこう伝えた。
見城「ああ、ごめんな。本当実にもったいないなって思ったからさ。せっかくこんな良い身体
なのになって。そういう俺も、君と同じ年の頃凄く悩んだんだ。どうしようかってね。
んで今中学校の教師になった訳だけど、そうだな、もし人生が二回あるんだったら、
俺はきっとプロレスをやってるよ。そうだろう?」
するとケンジも笑顔で見城に応じた。
ケンジ「ええ、そうですね。もし二回あったら自分もやりますよ。」
それを聞いて見城はニヤリと笑って、こうケンジに伝えた。
見城「・・・うん、でも今後どうなるかはわからないからな。俺も当然このまま教師でいられるか、
続けられるかわからないから、人生二回はないけど、挑戦はできるんだ。まだ時間はある。
とりあえず今日は、何も考えずに思い切りぶつかって来いよ!俺も覚悟して挑むんだから、
気にせず手を抜かずにな!そして立浪選手よりも熱く、目立ってしまえよ!」
それを聞いてケンジは、笑顔で大きく返事をし、二人は握手を交わした。それを見て高実も笑顔で頷いていた。そしてケンジがこの場から去った後、再び見城は高実に尋ねた。
見城「・・・それで、あいつは?」
高実「・・・もしかして、『キム』ですか?」
特に驚く表情をしないで、高実は見城に聞き返した。
見城「そうだ、そうだろ?・・・もう来てるのか?ここに。」
高実「いや、あともうすぐしたら。この地には来てますよ。」
そう聞いて見城は少し焦った。
見城「おい、もう始まっちゃうぞ!大丈夫なのか!?」
高実「ええまぁ、タクシーで来るって言ってましたから。」
見城「・・・・・・・。」
見城は内心不安に思っていた。そう思わす『キム』とは、高実の一つ年下の大学の後輩、当然見城にも後輩にあたる、木村正和という人物だ。この木村は実は今、実際にプロレスラーとして活躍しているのである。