友達改造計画
タロウが再び意識を取り戻したのは、麻酔が効きすぎたのか、手術から丸一日経った後だった。見知らぬ空間で目をゆっくり開けたタロウは、辺りを確認するため首だけ動かそうとして身動きができないように固定されている事に気付いた。
”やあ、気付いたかい?”
タロウは私の声に反応した。
”ここは、どこだ?あなたの住処なのか?”
”そう、正確には私がこの星にやってくるために使った船だ。気分はどうだい?痛むかい?”
”なぜ、私は動けない?”
”君はあの崖で、おそらく事故にあい、両足を破壊されたんだ。それで、両足を切断しないと、命が危なかった。今動けないのは、傷口を塞ぐために全身を固定しているからだよ”
タロウは長い溜息をついた。どうやら事態を把握したらしい。
”あなたに命を救われたということだな、それには礼を言う、有難う”
”どういたしまして。いつぞやのお返しだよ”
”助けてもらって言うのもなんだが、足のない私はもう私ではない。走れない我々は我々ではないのだ。生きていても仕方がない。死なせてくれないか?異星の方よ・・・”
”なに、足なんて飾りだよ。もっと速く移動できるようにしてあげるから、今は早く回復してくれ”
タロウは観念したのか目を閉じ、再び眠りに就いた。私はタロウの体にチューブを差し込み全身に栄養源を行き渡らせるようにした。
私はタロウが眠っている間に移動手段を考えた。切り取った足は我々の科学力ではもう再生できない。だから別の手段を取らないといけない。タイヤだと砂、小石で動かなくなる恐れがある。クローラーならどうだ?うん、クローラーならそんな心配をしなくていい。クローラーとは無限軌道を装着した地表移動機械のことである。舗装されていない道でもすすめる。この星はもちろん舗装なんかされていない。そして幸いなことに油がでる。それを使えばタロウも動けるようになるだろう。獲物を追いかけられるようにもなるし。タロウに了承してもらったら私の仕事を手伝ってもらえるかも知れない。私は上司にクローラー付きの乗り物を発注した。
”クローラー付きで一番速いモノを手配してください”
”クローラー付き?またえらく渋いのを選んだねえ、ブルドーザーでいいかい?”
”あれよりもっとすばやく移動できるものはありませんか?”
”うーん、アレよりもっと速くとなると、戦車しか思いつかないが・・・どうして速さにこだわるの?”
私は本音をいわず、都合よく上司に報告した。
”実はこの星の走竜を捕獲しまして、それにクローラーを付けて自走できるようにしたら資源開発が速く進むのではないかと思いまして”
”ああ、君は生体・機械融合が得意だったからねえ。なるほど、そういうことなら。君ならうまく作れるよ、走竜戦車というわけか。開発がうまくいくといいね。”