友達の危機を救った(つもりだった)
私は飛行艇に乗り、宇宙船へと戻るとすぐに宇宙船で先ほどいた崖の谷間に舞い戻った。そこはごつごつした岩場で平地が少ないところだった。宇宙船から降りた私はヘッドホンを装着する。まずは鉱石より友人の安否だ。崖の上に居た時よりもグラウンドノイズは大きく聞こえる。この辺りに居ることは間違いない。私は岩場をぴょんぴょん跳躍しながらタロウを捜索する。
”おおい、タロウ!どこに居るんだ?返事をしてくれ!”
私の呼びかけには何の反応もない。聞こえているはずなのに返事がないということは意識がない状態なのだ。急がないといけない。私は崖の上を見渡した。あそこから駆け下りていったら、到着する場所はこの辺りのはずだ。事故が起きたのならこの辺りに居ないとおかしい。そう思っているとぐるるるる・・・・という怪しげな音が聞こえた、兄元から。何やらしっぽが岩と岩の間からでている。タロウのしっぽだ!しっぽがここにあるということは、タロウはこの岩の下か?私は岩陰に入り込みタロウの頭を探す。頭部は容易に発見できた。どうも下半身に岩が乗っているようだ。
私は、必死になって呼び掛ける。
”タロウ!おいタロウ!しっかりするんだ!”
私の声には反応しない。私はタロウの頭を揺すってみた。
”おい!タロウ!おい!”
反応はない。気を失ってから相当時間が経っているのか?とりあえず、タロウの上に乗っている岩を除けなければいけない。私は少量の発破火楽を使ってタロウに乗っている岩石を砕いた。大きな振動で目が覚めたのか、タロウのウルルルルルゥ・・・という唸り声が聞こえた。
”タロウ、気がついたか!今助けるからな!”
タロウは身じろぎもせず、グルルルルゥ、と唸っていた。後で知ったことだが、このままにして置いてくれ、と言っていたのだ。自然の摂理のままに、タロウは身をゆだねたかったらしい。そうは言っても私の命の恩人だし助けないわけにはいかない。私はばらばらになった岩石をどかし、タロウを宇宙船まで運びいれた。宇宙船には病気、怪我といった医療システムのほか、外来生物調査用の生体システム機能室がある。私はタロウをそこまで連れてくると施術台に乗せた。X線透過装置でタロウの生体機能を調査する。最初に足をられたのか、両足ともに骨は砕かれ、肉は壊死している。壊死した部分を早急に取り除かないと壊死部分は全身に広がりどのみち死に至る。私はタロウに麻酔をし、意識を失わせて手術を行った。それ以外にタロウの命を救うことはできなかった。