仕事の後の心配事
私は宇宙船から飛行艇を飛ばし、タロウ達のいそうな中緯度の荒野へ行ってみた。他の群れは見かけるもののタロウ達の小さな群れは見当たらない・・・。レシーバーは向こうが大きな声をあげなければ聞こえない。こちらからタロウを見つけるしかないのだ。やがてタロウがいたと思われる群れを見つけた。年寄りの雄と雌、まだ幼い雄と雌だ。追い立て役のタロウがいないので、狩りがうまくいっていないようだ。走る速度も食事ができていないらしくどうにも遅い。しかし、私にはどうしようもない。タロウは死んだのだろうか?私はタロウの言っていた崖の所に行ってみた。どこも切り立っているところばかりで、{儀式}とやらに使えそうな場所は見当たらない。こんな崖で、そんな儀式やるか?私は飛行艇を駆りながら考えた。もう少し近寄ってみるか、でもあんまり近寄りすぎると崖から吹く突風に煽られて操縦不能になるし。しばらく空から地形を眺め、ようやくこのあたりなら辛うじて駆け下りられるという地点を見つけた。
私は飛行艇を近くの岩場に着陸させ、地上へと降り立った。この辺りでは唯一駆け下りていけそう、といっても崖下を見るととてもそんなことができるような所じゃない。走竜の一族はこの儀式をやることでわざと頭数が増えないようにしているのか?この星の生命生産力では走竜をそれほど養えないのはわかるが、もっと他にやりようがないものか?そんなことを思いつつ私はこの降りれそうな道、というほど生き物が通るようなコースでない道を見つめた。
体の下から強い風が私を空に持ち上げるように吹く。この突風のため、このエリアの飛行艇での捜索はできないのだ。死んじゃったのかな?私はヘッドホンをかけてみた。グラウンドノイズが聞こえる。取扱説明書を読んでみると、故障かな?と思われる前に、というコーナーがある。その中に、グラウンドノイズのみが聞こえている場合、という説明があった。そういう場合は送信機を打ち込まれた生命体が生きていて意識のない場合、つまり大部分の場合は寝ている状態、なのだそうだ。今は日中、タロウ達走竜の寝る時間帯ではない。と、いうことは・・・。
大部分でない場合、すなわちタロウは気を失っているのではないか?儀式のあった日から二日は経っている。まずいんじゃないか?生きていて、事故にあって動けないとき我々キル星人は三日が生存限界だ。タロウ達走竜は体が大きいからまだ大丈夫かもしれないが、それにしてもほっとけない。怪我をして動けないのなら助けなきゃ、と思う。しかし通常業務もしなきゃなんないし、私の仕事は資源調査なのだ。でも、命の恩人だしなあ。どんだけこの谷の捜索に時間をかけられるかな?私は、足元の石ころを拾って谷に投げ込もうとした。うん?この石、重いな。私は携帯ハンマーを使って石を割る。やっぱり、鉄鉱石だ。この辺りには鉄鉱石の鉱脈があるかもしれない。この前来た時は気がつかず通り過ぎたが、これは調査をせねば!もし鉱脈があれば、崖になっているから露天掘りができるかもしれない。