私もお仕事
私は、タロウと別れた後、この星の極を、つまりこの星の恒星である太陽から光を最も少なく受け取る場所を調査した。そこには水が、氷の形で存在していた。この水を使えばもう少しこの星の緑も増えるかもしれない。ただ、やはり我々が居住するには不十分である。緑が増えればタロウ達の餌である動物も増えるかもしれない。それとここには原油が埋蔵していた。我々の文明を支えるには不十分ながら。反対の極も調べれば同じようなものがあるかもしれない。
どうしてここに大量の水と原油が残っているのかと思い、一旦宇宙船へ戻り地形を調べてみると、極周辺がぐるりと山脈で覆われていて、どこにも流れない構造になっている。勿体ないよな、これだけ水があれば、この星、もっと緑が増えるのに。
その他にこのあたりには我々の欲しいレアメタルが存在していることもわかった。ただ、これを宇宙船に運ぶには問題があって、一つには宇宙船を停泊させる平地がないこと。もう一つはこのエリアが常に悪天候で宇宙船を長期間大気中に留めておくことのできない場所だということだ。実際、飛行艇でここに来た時も数少ない機会を選んで大気の安定した状態だったのだ。もっと安全なところまで道を作る必要があるなあ。母星に連絡して、何か工作車を頼むか。幸い、原油はこの星にあることだし。私は母星の入植管理センターに連絡を入れた。画面に出たのは私の上司だ。
「やあ、JPQKUNS03。ここに連絡を入れたということは、何か困ったことでもあったかい?」
「はい。我らの欲する資源は見つかったのですが、場所が少々厄介なところにありまして、工作車を要請したいと思いまして」
「ほう、見つかったかね。良かった。で、何が見つかった?」
「レアメタルと原油が少々。原油の方はあまり量は出ないのでこちらの開発用に使おうと思ってます」
「そうか、御苦労さま。では、要求する工作車を、カタログ送るから、君が適切と思うモノを選んでくれたまえ、10時間後にそちらに電子転送できるように手配する」
「ありがとうございます」
「お手柄だったねえ」
「ありがとうございます」
「あ、そうそう。君の友人のJPQKKMK01。彼、今度の派遣先で司令官職についたらしいよ、君もがんばらなくっちゃな。それでは」
最後に嫌味を言われて画像が途絶えた。ライバルを持ち上げて私を発奮させるつもりだろうがそうはいかない。あいつは私とは違って優秀なのだ。やる気もある。私なんかと比べる方が間違っている。私は愚痴愚痴としていたが、やがてもう一人の友人のことを思い出した。そうだ、タロウはどうなったろう?今日は新月過ぎて二日目だ。ちゃんと儀式に成功して生き残っているだろうか?