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恐竜戦車を知ってるかい?  作者: あいうわをん
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古い友人に事情を説明する


 私は不安に感じた。タロウに戦闘行為ができるだろうか?いや、その前に、他の星を侵攻することに同意してくれるのか?私は通信を待つ間、何と言ってタロウを説得しようか、それを思案していた。思案して結論のでないうちにすぐに通信ランプがついた。スイッチをオンにすると画面がついた。そこには私の古いほうの友人が映っていた。


「やあ、UNS、久しぶり。惑星探査は順調なようだね。僕の見立てはやっぱり正しかったよ。君ならうまくやれるだろうって、前から言ってたけど、やっぱり、僕には先見の明があるようだね」

「そっちこそ、惑星侵攻作戦の司令官をやってるじゃないか。大したものだよ。僕らの同期の出世頭じゃないか?羨ましい限りだよ」

「いやあ、そんな羨ましいがられるほどのことじゃないよ。何せ司令官と言っても部下がたったの五人だけだからね」

「こっちは部下なんて一人もいやしないよ。おまけにただの調査員、そっちは司令官じゃないか。なんていう星だっけ?」

「恒星SLの第三惑星。原住民は自分達の星を地球って呼んでるけどね。それで自分達は地球人だって言っている」

「地球・・・地面が球でできているっていう意味か・・・。そういう認識はできているみたいだね」

「ああ。科学力は総合すると我々には劣るけど、軍事力は我々を上回っている」

「へえ、そんなこと、あるんだねえ。どうして軍事力だけがそんなに発達したんだろう?」

「私も、詳しくは知らないけど、地球人というのは、見かけや言葉の違いでいろんなグループに分かれて長い間戦争をしていたらしいんだ。それで兵器や火力に関する知識が増大したんだな」

「自分達で殺し合いをしてたってことかい?全く理解できないな。ここに居る走竜一族だってそんなことはやらないよ」

「それがどうも最近になってやっとその愚かさに気付いたってわけさ」

「へえ。よく自分達で気づけたね」

「いや、どうも自分達で気づいたんではないようだ」

「と、いうと?」

「うん、あの星は宇宙の辺境にあるので、他の星人達に存在が気付かれてなかったんだ。ところが、例の光の戦士が囚人怪獣を護送する途中、あの星に逃がしちゃって。気付かれちゃったんだ。怪獣だけでなく色々な星人にとっても快適な生存環境にあることを。せっかく私が2年がかりで調査したのに。他の星人に取られないうちに早いところ侵攻しようと思ってね。ところが、我々より地球人の方が火力があるんだ。おまけに・・・」

「おまけに?」

「奴ら、また新しい爆薬を開発したらしい。まだ試作段階だから性能は何とも言えない。そこでだ、君に頼みたいのは、君の作ったあの”恐竜戦車”をこちらに貸してくれないか、ということなんだ」

「まあ、さっきうちの上司から連絡ははいっていたから知っていたんだけどね。でもわざわざ彼を使わなくってもいいんじゃないかな?単にその新型爆弾とやらを奪取すればいいんじゃないか?」

「うん、それはそうなんだけど。例の光の戦士の所在がわからないんだ。怪獣や他星人が暴れると、どこからともなくやって来てやっつけていくんだ。何度となく見たからね」

「光の戦士の居場所がわからないか・・・それは厄介だね。でもそれならなおのこと、タロウ、ああ、私は彼のことをタロウって呼んでるんだ。タロウがそちらへ行く必要性はないんじゃないか?」

「うん。理屈としてはそうなるけどね。光の戦士を牽制しておくためにも貴重な戦力になるんだよ。どうかな?こちらに融通してくれないか?礼は弾むからさ」

「礼なんかいいんだけど、タロウを説得しなきゃいけないね。彼が同意してくれればそちらによこすよ」

「説得?まだるっこしいね?君の言う通りに動くんじゃないのかい?」

「私は彼に助けてもらった恩があるからね。彼は私の友人だよ。」

「友人?へえ、君が作ったものなのにかい?君らしいといえば、君らしいね」

「ただ、タロウは戦闘用にするには難しいじゃないかな?」

「どうして?」

「知的すぎるんだよ、彼は。自分の存在意義について考えることができるんだ。考えるという作業は暴力行為とは正反対の事だからね」

「そうかな?理性的に暴力行為をする奴もいると思うけど?」

「うん。でもまあタロウはそんなタイプじゃないからね。よその星を侵攻するっていうのはどうかなあ?」

「おとなしいタイプなのか?」

「いや、おとなしいという感じではないな。物静かという感じだよ」

「一緒じゃないか」

「いや、ちゃんと獲物を駆る時は竜の顔をしている。走竜の狩りを何度も見ているが荒々しい、まさに獣そのものだよ。タロウが他の走竜と違うのは、本能を満たした後だ。他の走竜は惰眠をむさぼっているけど、タロウは私の所へ来ていろいろ世界のことを聞いていた。タロウは特別なんだよ。走竜の中でも異能なんだ。だから戦車をくっつけた後でも自分で考えて自分のなすべきことをやっている。だから私の仕事がうまくいってるのさ。多分、二度と同じものはつくれないと思うな」

「そうか、それじゃあ彼を説得してくれないかい?君ならできるんじゃないか?」

「そうだねえ・・・なにか彼にとってタメになる条件が必要だろうね」

「条件?彼の使うガソリンは常に補給するとかか?」

「いや、多分彼個人の利益になるようなことでは乗ってこないと思うよ。そうだねえ・・・今いるところをもっと住みやすく改造するとか、新しく侵攻した星に彼らの種族の住処を与えるとか・・・走竜のためになることならいいかも」


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