誕生!恐竜戦車!
翌朝。私は目を覚まし、起き上るとタロウの様子を見た。まだ眠っているみたいだ。タロウが動かない間、私は朝の準備運動をし、食事を済ませた。食事のあと、タロウの様子を再び見に行くとタロウは目を開けていた。
”やあ、気分はどうだい?”
”また、あなたか。どうして私を放っておいてくれないのだ?”
”君は、死にたいのかい?”
”生きていく理由がなくなったから・・・”
”群れへは帰れなかったみたいだね”
”そうだ・・・もう、生きていても仕方がない・・・”
”走竜としての君は死んだんだね?”
”そうだ・・・”
”それじゃあ、名前を変えてみないか?”
”名前を変える?”
怪訝そうな表情をタロウは浮かべた。何を言っているんだ、こいつは?という顔だった。
”そうさ、名前を変えることで、走竜タロウは死んだんだ。これからは恐竜戦車タロウ、と名乗ればいい”
”恐竜戦車・・・化け物としての私の名前か・・・”
タロウの口元が歪んだ。
”走竜から見たら、君は化け物に見えるだろう。だが、もはや君は走竜なんかじゃない。世界でただ一匹の恐竜戦車なんだ。だれも君を化け物だなんだって思わないさ”
”・・・恐竜戦車・・・か”
”走竜としての君は、君の群れに対して責任を持っていた。もう走竜なんじゃないんだからその義務も果たさなくってもいいと思うよ”
”では、恐竜戦車には、どんな役割があるというのだ?”
”そうだね、とりあえず、僕のやることを手伝ってくれないか?”
”あなたのやること・・・”
”そう。私はこの星に我々の欲するモノを探しにきたんだ。そしてそれが見つかったんだけど、なにぶん人手が足りなくってね”
”で、何をすればいいのだ?”
”私のやっている事は、いままでは鉱石資源の探査だったんだけど、これから採掘・母星への輸送になるんだ。まあ、まだまだ調査は続くけど。それでね、鉱石の掘削と輸送を手伝って欲しいんだ”
”掘削?輸送?”
”掘削っていうのは足元の地面や崖を掘ることだ。掘って僕らに必要な石を取りだしたら、それを一箇所に集める。そうすると輸送船に簡単に運ぶことができる。君の戦車部分の燃料は君の働きによって報酬として与えられる。どうだろう?”
”もう、私は竜の一族としては死んだ身だ。あなたの言う通りにするよ”
”死んだ身、と言ってもまだ君は生きているからね。走竜の一族に未練はあるだろう?君がやる気をだせるように、君の働きによって走竜一族が繁栄するように考えたよ。私がこの星を調査した結果、極の方にある氷を中緯度まで大量に運べば、この星の気象改良ができ、緑も増え、砂嵐も収まり、君達の獲物も増殖することができる。そうすれば君の一族ももっと楽に狩りをすることができるようになる。どうだい?やってみないか?”
私の言うことにじっと目を閉じて聞いていたタロウは、最後の私の問いかけに、深く肯いた。これでタロウに生きる意味を植え付けることに成功したかな?おまけに私の仕事も軽減されるだろう。私はタロウにこれからの手順を説明した。