友達、絶望する
7日後。私はしばらく鉱石採取に熱中していた。ここは大規模な鉱脈であるらしい、掘っても掘っても良質の鉄鉱石が出てくる。宇宙船へ直に鉄鉱石を運びいれられるのだ。私は母星へ連絡を入れ鉱石搬送用の宇宙船を頼んだ。北の方の鉱脈はどうするかなあ?私は前回の飛行で得た航空写真を見た。やっぱり邪魔になる山脈がある。一番近そうなルートにトンネルを作るか?そしたら掘削機がいるかなあ?別なルートはないものか?もう一度調査してみるか?だけど天候がなあ?私は外に出た。空には一面曇天、というより砂埃なのか?風が辺りを叩きつけている。夕刻の太陽が砂塵の中に七色に映っている奇妙な光景の中に、私は獣の咆哮を認めた。あれはタロウの雄叫びだ。何度も何度も聞こえてくる。私は声の聞こえる方へ飛行艇を飛ばした。天候が悪いため、飛行艇は地面すれすれを這うように操縦させるしかない。雄叫びの聞こえた方へ向ってみると、そこには崖に向かって何度も何度も頭から突進するタロウの姿があった。頭を崖にぶつけるたびに血飛沫が飛んだのだろう、崖が血の朱に染まっていた。
”タロウ!何やってるんだ!止めないか!”
私の言葉が聞こえないのか、頭をぶつけた後、後退し再び高速で崖に突っ込む。それを幾度もやったようで、タロウは私が来たころにはもうふらふらになっていた。私は飛行艇に積んでおいた麻酔銃を巨大生物に打ち込む。ハンドガンに比べてかなり大きい。麻酔液が入っているからだ。取扱説明書がまた付いていた。
{この説明書を読んでいる君!今、まさに巨大生物に襲われてピンチということだね!でも大丈夫!このアームガンがあれば巨大生物に襲われても安心していられるよ!なぜって疑問を持った君、このアームガンはすごいんだ!どこがすごいかって?そ・れ・は!}
私はこの紙きれを叩き捨てると銃口をタロウに向けた。バシュウウウン!球は脊髄部分に命中した。的が大きいから私の腕でも当たった。当たったがタロウの動きは止まらない。遅行性の麻酔なのだろうか?
”タロウ!”
私は飛行艇を降り、タロウへと駆けよった。タロウは
”やはり、私は死ぬべきだった・・・ここであの時死ぬべきだった・・・”
繰り返しつぶやいている。やがて受信機が壊れたのか、つぶやきはただの唸り声へと変わった。私は麻酔が効いてくるまで、タロウの動きを見守るしかできなかった・・・。