友達を改造した
十時間後、電子転送で戦車が送られてきた。私は麻酔の効いているタロウを戦車の上に乗せ、生体・鉱石接着剤を使ってタロウを戦車上に固定し、下半身の神経を戦車の起動電気信号と融合させた。
生体機械接合はうまくいった。あとは動作確認だな。しばらくタロウの麻酔は抜けないから、私は気晴らしにタロウの元居た群れの様子を見に行った。タロウがいない群れは相変わらず狩りに失敗している模様で、獲物を全然取れていない様子だった。走る速度も目に見えて落ちている。この分だと早晩この群れは全滅するな、私はそう感じた。タロウを早く治してあげないとまずいな。
私は、タロウ達の獲物をわざとタロウのいた群れへ追い立て、狩りの手助けを、彼らに見えないように行った。彼らは突然目の前に現れた獲物に驚いたが、そこはいつもの手段で手早く仕留めるとさっそく食らいついた。走竜一族の食事風景を見て思うのは、家族というか一族愛が深いことだ。まだ幼い個体にまず存分に食べさせ、その後に成体が仲良く食べている。タロウの弟妹は満足したようだ。食事が終わるとその辺りに散歩しにいったようだ。これでまたしばらくは生きていけるだろう。タロウが治って群れに戻れるまでは面倒を見てあげよう。
私はまだ意地汚く食べている成体を後に、タロウ達の「儀式の崖」へ行ってみた。幸い、夕刻になり風も凪いでいる。私は飛行艇で谷筋を見て回った。すると、タロウの下半身が埋まっていた所からほどなく行ったところに大規模な鉄鉱石の露天掘りができそうなところに当たった。やっぱりだ、ここを拠点に開発していくか。それにあの馬鹿げた風習も止めさせよう。この崖を崩してしまえば、あの儀式もできなくなるだろう。私はむき出しになっている鉄鉱石の一つを取り上げると、飛行艇に戻り、母船へと帰着した。ぐずぐずしていると日が落ち風が出てくるからだ。