撤退
遅れてすいません。短めなので、次話はなるべく早く投稿するつもりです。
ハワイ諸島から東に100キロ
いつもとは違い、そこはどこもかしこも茶色い木造船で埋め尽くされていた。その数は総勢2000隻。今この大艦隊は新たに召喚した大陸を支配しようと西に向けて進み続けていた。船には兵士だけではなく移住を応募した多数のブルニア王国民も乗っている。
ブルニア王国大陸征服艦隊 旗艦アールド
「司令、竜母から飛ばした偵察騎から魔信で報告がありました。前方50キロ先までには敵艦隊は存在しないそうです。」
「分かった。引き続き行わせてくれ。」
そう司令が言い終わると近くにいた参謀が司令官に話しかけた。
「これから行く大陸に原住民はいますかね?」
「可能性はあるだろう。初めてのことだ。何が起こるかわからないからな。気を引き締めろよ。最悪、他国が介入してくる可能性もある。」
「他国となるとモルドニアあたりですか?」
「ああ、軍上層部から『最近不穏な動きがあるから気を抜くな』といわれたからな。」
「ですがモルドニア程度、我が艦隊の敵ではないでしょう。仮に現れたとしても一瞬にして蹴散らして見せます。」
「モルドニアなら可能だろうが、神聖エシストやエストファニアが来たらな。こちらもただではすまないぞ。」
「そんなに圧倒的なのですか?」
「ああ、ブルニア国内は情報封鎖により他国の情報はモルドニアのことくらいしかつかめないから、知っているものはほとんどいないがブルニアも最近は随分と他国に譲歩しているもんだろうな。最近も、またどこかの土地をモストレイク共和国に貸したとか。」
「まさか、そんな情報をどこで?」
部下が驚いたような顔で聞く
「身内に外務局の官僚がいてな。」
「ですが、そうなるとこの新たな植民地の獲得は我が王国の命運を左右するといっても過言ではないですね。」
「そうだ。絶対に獲得せねばならない。」
二人の話が一区切りしたところで、別の船員が新たな報告をした。
「司令!偵察騎から『高速で何かがそちらに向かっていった。追いつけない。』との報告が入りました。」
「何!?速度を重視した偵察用飛竜が追いつけないだと?」
その時、外から大きな音が聞こえてきた
『こちらは大日本帝国海軍です。この先は日本の領海です。直ちに進路を変更しなさい。繰り返す...」
「あの大きな音はなんだ?拡声魔法でも使っているのか?」
「今はそんなことを考えている場合ではありません。大日本帝国という国は私は聞いたことがありません。おそらく大陸の原住民かと。」
「それならば、奴らの言うことには従えんな。全艦に奴を打ち落とすよう伝えろ。」
その2分後、全艦から砲撃が始まった。しかし、文明のレベル的に打ち落とすことは不可能であり、結局ブルニア艦隊は1発も当てることが出来なかった。
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同時刻 大日本帝国海軍 20式反重力偵察機
「機長、奴ら撃ち始めましたがどうします?」
「仕方がない、このことを通信で送り、一度帰還するぞ。」
「「了解」」
この20式半重力偵察機は2020年に装備化され、当時の最新技術が詰め込まれた。当時、日本が独自に開発していた反重力装置を取り付けるという案があった。一度は、加速に人間の体が耐えられないという理由により廃案になりかけたが諜報省がアメリカ、ドイツ、イギリスも共同で反重力装置の開発に取り組んでおり、人間が加速に耐えられるようにプラズマシールドを開発しているとの情報を入手した。日本はこの情報をもとに反重力装置の技術の提供と引き換えにプラズマシールドの技術を手に入れ、この機体の開発に成功した。
この機体の登場とともに、ヘリコプターの存在の意義が弱まり世界中の軍用ヘリは数を減らしていた。
この機体に続き、次々と世界各国は新型戦闘機、輸送機、偵察機などの開発を進めた。
「出力充電完了、味方艦隊上空まで移動します。」
「分かった。」
艦長がそういった後、ゴゴゴゴゴという轟音と共に偵察機は動き出した。機長が窓の外を見たときにはすでに時代遅れの戦列艦ではなく、70隻を超える空母、戦艦、強襲揚陸艦、巡洋艦、駆逐艦、補給艦の大艦隊が海一面に広がっていた。
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第4艦隊 旗艦翔鶴
「司令、偵察機からの報告だと70キロ先に敵艦隊を発見、反転を呼びかけるも言うことを聞かずこちらに向けて発砲してきたとのことです。」
「70キロか。駆逐艦、巡洋艦、戦艦はミサイル、主砲による攻撃準備」
「了解」
艦隊全体があわただしくなる。
戦艦陸奥
「対水上戦闘用意」
船内にベルが鳴り響く
「司令官からは大火力で敵艦隊を撃滅するように言われているからな、全砲門、ミサイル、発射よーい」
旗艦翔鶴
「全艦隊、準備完了しました。」
「よし、撃ち方はじめ!」
その声のすぐ後、海を響かせる轟音とともに大量のミサイルは大空に向かって翔んでいき電磁加速砲は敵艦隊の方向へ一直線で進んでいった。
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旗艦アールド
謎の竜が来た方向へ戻っていった後も艦隊は航路を変えず新大陸へ進んでいた。
「去っていきましたね。」
「ああ、だがなんだあの速度は。化け物か」
「あれでは偵察用飛竜でも追いつけませんね。」
「しかし、いつあの国の艦隊が現れるかわからん。各艦に警戒を怠らないよう伝えてくれ。」
「分かりました。」
その時だった。艦隊の前方で一つの明かりが見えた。
「ん?あれは一体何・・・」
しかしブルニア王国の司令官はその答えにたどり着くことが出来ずにこの世から去っていった。
突如艦隊に向けて、空から飛んできたミサイルは的確に艦隊の中央を貫いたのだった。
戦列艦ルドー
突如起きた爆発に艦隊は困惑していた。
「今起きた爆発はなんだ!?」
突如起きた爆発に、各艦の艦長たちは困惑していた。
「分かりません。しかし、旗艦が撃沈され司令官が不在の今、指揮権はこの艦隊で二番目に偉いあなたがお持ちです。どうか指示を」
しかし新たな指揮官となったこの艦長も突如起きたこの事態への対処法が分からず右往左往していた。
この間にもドーーンという大規模な爆発音が艦隊全体に響き渡りながら、前方の部隊から撃沈されていた。
「仕方がない。撤退しよう。」
「正気ですか!? ここで撤退をしては今までの準備はすべて無駄になりますよ。多少の犠牲を覚悟で突破をした方がよろしいのでは?」
一人の将校が異議を唱える。
「しかし敵は我々の目視できない距離から攻撃している。たどりつくまでに全滅してしまうのがおちだろう。すでに味方の三分の一も撃沈されているのだ。撤退が完了したときには何隻残っているかもわからないのだぞ。この艦隊には軍人だけではなく移住する民間人も乗っている。彼らの身をこれ以上危険にされしては国王からなんと言われるかたまったものではないぞ!」
そう艦長に言われ、その将校は何も反論することなく引き下がっていった。
結局、艦隊は撤退することを決め、ブルニア王国の軍港に着いた時には三分の一程度しか生き残っていなかった。