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殺し屋JKが異世界で冒険する話  作者: 飯泉翔羅
第一章:異世界最初の国、冒険前の下ごしらえ
7/71

7:二人目の転生者


それは、私がシノに起こされて、夜営業の為に机を拭いてメニューと食器を並べている時だった。

それまではなぜか気づかなかった制服のセンサーが反応していることに気付いた。


「えっ?」


「唯香ちゃんどうしたのー?」


厨房からシノが声をかけてくる。

声が聞こえてしまったようだ。


「いや、何でもないわ。ただ、私の元の世界の仲間がこの世界に来たみたい。」


「唯香ちゃんの元の世界の仲間…?って…あれ、そう言えば唯香ちゃん、暗殺スキルは前の世界でやってたことって…」


シノがあの時は動転していて気づかなかったことに今更気づいたらしい。顔が青くなって少し震え始めた。


「はぁ…あのね、シノ、」


私がシノをなだめようとした時、突然入口の扉が乱暴に開けられた。


「ゆいかぁっ!!!」


その人物は私の姿を見て恐ろしいスピードで飛びついてきた。


「きゃーっ!!」


シノが甲高い女の子らしい悲鳴をあげる中、私はその人物の体を受け止め、机のない床に受け流した。


「ぶきゃっ!」


顔面から床に突っ込んだその人物に、私は声をかけた。



「乃愛?」



「そーだよゆいかぁぁぁぁ!!!いきてたぁぁぁ!!!」



また叫びながら飛び込んで来る。ので今度は背負投の要領で床に叩きつける。乃愛はしっかり受け身をとったようで痛がっている様子はない。


「乃愛、落ち着きなさい。ここはあなたの家でも協会でもないのよ?一旦深呼吸してこれまでのことを…話す時間ないわね。シノにだけ紹介しときましょうか。」


乃愛が来てからずっと厨房に隠れるようにして見ていたシノは、私の言葉を聞いてビクッとなった。


「シノ、怖くないから出てきて。乃愛も私の足にすがりついてないで早く立って。」


シノは怖がって青い顔をしたままではあるがこちらに出てきて、乃愛も私の制服を掴んだままではあるが立ち上がった。


「乃愛、自己紹介」


「はーいっ!しろののあですっ!」


「…え?それだけ?」


「だってしらないひとだもん。のあ、しらないひととなかよくするぎむないよ〜♪」


「私がお世話になってる人よ、多分これからあなたもお世話にならざるを得ない人だからしっかり挨拶しなさい。」


「え〜?しょーがないなぁ。」


乃愛はしっかりシノの方を向いて改めて話し始める。


「はじめまして!しろののあです!よくわかんないけどよろしくおねがいします!ゆいかになにかしようとしたらころすからきをつけてね♪」


そう話し終えた瞬間にシノがガクガクと震え出してしまった。私はシノのその状態に覚えがあったので、乃愛をたしなめた。


「乃愛、威圧スキルなんてやめなさい。なにかしようとしても私がされるわけないでしょう?」


「あ〜そうだよね〜♪ところですきる?ってなに?」


その言葉で私はだいたい察した。神の話を全無視したのだろう、と。


「はぁ、全くあなたは…じゃあまずシノに向かって解除って念じて」


「ん!かいじょ!」


乃愛が頷いてシノに向かって言い放つと、シノの震えが止まり、シノはそのまま力なく床に座り込んだ。


「次、メニューって念じてみて」


「ん!めにゅー!わっ!?なんかでてきたよゆいかー!」


「それメニューだから。ステータスとかアイテムとか装備とかシステムとかいろいろあるでしょう?ステータスをタップしてみて」


「はーい!うわっなんかでたよゆいかー!」


私は乃愛の後ろからステータスを覗き見る。


そして、声を出して驚くことになった


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

名前:城野乃愛

性別:♀

年齢:15歳

Lv:1

経験値:50%


体力:13

MP:26

物攻:11

魔攻:26

物防:7

魔防:∞

器用さ:27

速さ:37

幸運:80


所持スキル

言語理解

全属性魔法対応

身体強化Lv5

自己再生Lv1

嗅覚Lv1

加速Lv1

魅了Lv10

隠密Lv10

暗殺Lv15


魔法

光・遠隔感覚(ロングセンス)Lv1


装備:制服

武器:大型注射武器

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ええっ!?」


「どーしたの?のあののうりょくそんなにへん?」


「シノ来て!」


私の強い口調にシノは慌ててこちらに来る。そしてステータスを見て、腰を抜かした。


「∞って、みたことある?」


「な、ないよ…?何このチート!?魔法効かないってこと!?」


「まほー?あー、のあをおっかけてきてたひとたちがやってきたばーっ!てやつのこと?」


「え、ちょ、乃愛?追っかけられてたの?」


「うん!けどもとのせかいとおなじようにおんみつつかってびこうされないようにしたからここにくることはないよ〜♪」


「そ、そう。それならよ…くないわ!?なんで追っかけられてたの!?何したの!?」


「えー?なにもしてないよ〜?あるいてじょうもんぬけていったらまてー!とかいっておっかけてきたの。」


「また、話聞かないせいでトラブルを…」


私は頭を抱えた。

とりあえず、リュウさんに事情を説明して改めて国のことやこの世界のことを教えてもらうしかない…。


「乃愛、ここを出て左に行って、ずっとまっすぐ行くと転生者用窓口って書いてある窓口があるからそこのリュウって人にこの世界のこと、色々話聞いてきて。」


「えー?のあゆいかといっしょがいいー!」


「わがまま言わない。あなた神の話全く聞いてないでしょ?自分で神に聞けなかった分リュウさんに聞いてきなさい」


「ぶー…」


嫌そうな顔をしながらも乃愛はドアを開けて外に出る


「おっと、ごめんよ。」


ドアの先に誰かいたようで乃愛とぶつかりそうになる。が乃愛は意に介せずサラリと衝突を回避し、転生者用窓口にかけていった。


「おや、唯香ちゃん。」


ぶつかりそうになった男性が声を掛けてきた。


「あ、アルトさん。どうもこんばんは。」


「こんばんは。ここでバイトしてるのか。唯香ちゃんのような可愛いくて強い子が働いているんじゃこの店も安泰だな。」


「冗談はよしてください。恥ずかしいわ」


「冗談なんかじゃない。ところで、そろそろ夜営業の時間のはずだが、いつものいい匂いがしないぞ?仕込みが終わってないのか?」


そう言われて気づいた。私たちはちょうど夜営業の準備をしていたのだ。しかしメインとなるシノが乃愛にやられていたし、私も乃愛の世話で忙しかった。つまり、準備は全くできていないのだ。時間は夜営業開始の時間になっている。


「ゆ、唯香ちゃん!全速力で準備するよ!支持するから手伝って!!」


シノの目に火がついた。今日見た中で1番早く正確な動きをしている。しかも私ができる最大限を理解し、的確に指示を送ってくる。


「お、おお…これは凄いな…」

アルトさんは席に座りシノの動きを見ていた。いつの間にか来ていたほかの客も、席に座ったり、壁に寄りかかったりしながらシノの動きを見ている。


手を動かすこと10分。

準備が完了した。


「ふぅ…。さて!皆さんおまたせしました!夜営業開始します!」


シノの声に、客たちは沸きに沸いた。

そして、気合の入ったシノの料理に舌鼓をうって帰っていくのだった。



──────────乃愛side──────────


乃愛は走って転生者窓口のところへ行く。

が、後ろから声が聞こえてきた。


「あいつは!おい!いたぞ!捕まえろ!!!」


騎士の格好をしたヤツらだ。

乃愛が城門をトコトコ歩いて入っていくのをぼーっと見て、何をしている!とかいいながら追いかけてきたのだ。


入国料を払え!逃げるんじゃない!とか何とか聞こえるが、乃愛には関係ない。

窓口に先に到着して気の良さそうなおじさんに話しかける。


「おじさーん。」


「おぅよ!おや、べっぴんさんだねぇ。ユイカちゃん以上のカワイイ子は初めて見たよ。」


「おせじはいいからなんかおいかけてくるあのひとたちなんとかしてくれない?」


「ん?ってありゃ騎士団じゃねぇか!勘弁してくれ俺がなんとか出来る相手じゃぁねぇよ…」


「えぇー?おじさん、おねがーい!」


リュウは迷った。ここで無視してこの子が捕まるのか、自分が騎士団を説得してなんとか助けるのか。下手すれば罪人補助罪で自らも職を失い路頭に迷う可能性もある。

しかし、簡単に答えは出た。こんなかよわいカワイイ子を放っておくなんてばかじゃねぇか、と。説得するしかねぇじゃねぇか、と。


「お嬢ちゃん、あんた、この窓口に来たってことはあれか、ユイカちゃんと同じ転生者かい?」


「うん!ゆいかをおいかけてきたー!」


「ほーん、ならなんとかなる気もすらぁ!」


リュウは窓口から出て騎士団の前に立ち塞がった。


「おうおうまたれいまたれい!ちょっとこの子のこと聞いてやっちゃァくんねぇか?」


「なんだねリュウ殿。私はそこ女を拘束し、尋問する必要があると思っているのだが…?」


「そいつァなんでですかい?入国料払ってないとかですかぃ?」


「簡単に言えばそうだ。」


「そいつァこの子には可愛そうってもんでさぁ。なぜかってそりゃぁ、この子も転生者なんでぇ。」


「なに!?そうなのか…ん?も、って言ったな。他に新しく来たのか?」


「おや、旦那は知らないのか。篠宮唯香ちゃんって子が────」

「篠宮!?篠宮だと!?」


騎士は急に声を荒らげた


「おじさん、ゆいかのことなにかしってるの?」


乃愛がリュウの後ろから顔を出す。さながらカワイイ小動物のように。


「あ、い、いや。そうじゃないんだ。篠宮という男が昔いてな…。だが今はそんな話をする必要は無い。お前の無銭入国についてだ。城門で相談してくれたらよかったものの、無断で入っていったのだ。たとえ転生者で色々と知らなかったとしても問題だ。高くはないが罰金が発生する。」


乃愛が再びリュウの後ろに隠れる。


「そ、それはいくらなんで?」


「銀貨20枚だ。」


「銀貨20枚!?そいつぁこくじゃぁねぇかい!?」


「いや、一般人の無銭入国には金貨1枚の罰金が課せられる。それに比べたら安いものだろう?」


「そりゃあ…そうだけどよォ…」


「リュウ殿?あなたは転生者の道しるべとなる仕事をしているんだ。職を与えるなり借りるなりして金を作り出すくらい出来るのではないかね?」


「あ、ああ…。そうだな…」


「では、そういうことで頼むぞ。金は城の前にある国家資金管理所の窓口に言えば受け取ってくれるからな。」


そう言い残して騎士達は帰っていった。


「うーん、結局借金背負わされちまったなぁ…お嬢ちゃん、名前は?」


「しろののあ!」


「仕事紹介するっつっても、もう紹介できるのはユイカちゃんと同じとこしかないんだけど…」

「それでいいっ!それがいいっ!」


乃愛は食い気味でリュウに迫る。


「わ、わかったわかった!とりあえず、今は営業時間中だから、中で休んでな。お茶入れてやんよぉ」


「うん!わかった!」


こうして乃愛もまた、シノの店、飲食店ゲストでバイトすることになるのだった。

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