6:初めてのバイト
「ありがとうございましたー」
最後の客が店をあとにして、私の初めての接客バイトが終わった。
「あ〜終わったぁ〜…」
客用の椅子に腰を掛ける。
体力的には問題ないが、精神的にかなり疲れている。
「お疲れ様〜!どうだった?」
一方のシノは全く応えていないようで、食器を片付けながら笑顔で聞いてくる
「接客業ってほんとに大変ね。シノ、これ全部一人でやってたの?」
「そうだよ!いつもは今日ほど人は来ないんだけど、唯香ちゃんの存在と宣伝効果でかなり来たね!」
「存在って…でもシノはすごいわね、私かなり疲れたわ…」
「慣れれば簡単だよ!でもやっぱり今日は大変だったよね!片付けが終わったら宿に案内するから夜まで休んでていいよ!」
「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわ。」
私の言葉に笑顔で頷き、シノは厨房の奥の洗い場へ消えていった。
私は待っているあいだにやることもないのでなんとなく【ステータス】の確認をすることにした。
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名前:篠宮唯香
性別:♀
年齢:15歳
Lv:51
経験値:70%
体力:57
MP:25
物攻:59
魔攻:25
物防:20
魔防:15
器用さ:66 1up
速さ:65
幸運:75
所持スキル
言語理解
全属性魔法対応
身体強化Lv5
自己再生Lv1
予知Lv1
加速Lv5
隠密Lv15
暗殺Lv20
攻撃連鎖Lv1
解析Lv1
乱舞Lv1
効率化Lv1
威圧Lv1
魔法
光・空間転移Lv1
装備:制服
武器:小型サバイバルナイフ
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「あら」
器用さが1上がっていた。シノは2ヶ月で10と言っていたから、ひと月30日とすると6日で1上がる計算になる。とするとやはりこれも神様のチートのせいなのかしら…
そう思いながら[器用さ]を長押ししてみると、数値の上から説明文が出てきた
器用さ・身体を自分の思ったとおりに動かす力
「へぇ」
今度は上から順番に説明文を見てみる
────
体力・生命力。無くなったら死ぬ
MP・魔力。無くなったら気を失う。基本的に自然に回復する
物攻・物理攻撃力。武器と関連している
魔攻・魔法攻撃力。魔法、武器と関連している
物防・物理防御力。装備、武器と関連している
魔防・魔法防御力。装備、魔法と関連している
器用さ・身体を自分の思ったとおりに動かす力
速さ・身体が出せる最大速力
幸運・運の力
言語理解・どの言葉でも意味が分かる
全属性魔法対応・全属性魔法を使うことが出来る
身体強化Lv5・身体能力を上げる
自己再生Lv1・減った生命力を自力で回復する
予知Lv1・未来を見る
加速Lv5・最大速力を上げる
隠密Lv15・気配を消し、誰にも気づかれないようになる
暗殺Lv20・誰にも気付かれずに対象を殺す
攻撃連鎖Lv1・連続で攻撃することで攻撃力が上がる(物魔対応)
解析Lv1・対象を詳しく調べられる
乱舞Lv1・敵の数が多ければ多いほど攻撃力が上がる(物魔対応)
効率化Lv1・どう動けば効率的な動きかが見える
威圧Lv1・相手を威圧し行動を制限する
魔法・魔力を消費して行う非科学的現象
光・光属性魔法
空間転移・一度行った場所に魔力を消費して瞬間移動できる
装備・身につけているもの。物防、魔防に関連
武器・攻撃に使う道具。物攻、物防、魔攻に関連
────
名前から経験値までは長押ししても無反応だった。
多分見ればわかるだろ?という言外のメッセージなのだろう。
「唯香ちゃーん。終わったよ!宿案内するから付いてきてー!」
見ているうちにシノは片付けが終わったらしく、私に声をかけてきた
「はーい。」
厨房と反対側にある階段を登ると、そこには狭い廊下と四つのドアがあった。
「一番右奥が私の部屋!ほか三つはお客さんに提供する様でね、それぞれ一泊銅貨80枚なんだ。だけど唯香ちゃんは仕事してくれてるから銅貨20枚でいいよ!」
「あら、随分引いてくれるわね?」
「私こっちにきて異世界転生してきた人の友達って出来たことなかったんだ。最初は本当に怖かったけど、唯香ちゃん一生懸命やってくれるし、仲良くしようとしてくれてすっごく嬉しかったんだ。だから本音はお金取りたくないんだけど、そこまでしたら流石に破産しちゃうから、お金取るのはごめん。了承してくれると嬉しいです。」
そう言ってシノは頭を下げる
「ちょ、ちょっと、顔上げて。むしろ払わせてもらわないと申し訳ないわ。働き場所も寝場所も提供してもらって置いて無料なんて私が許さないわよ。でも、安くしてくれてありがとう。一日銅貨20枚ね。バイト代から引く形でいいかしら。」
「ありがとう!そうだね。バイト代は月末支給するからその時引いて、その残りは直接渡すね!」
私は夕方まで寝ることにして、シノの向かい側の部屋に入り、ベッドにはいった。
こうして私は生活の基盤を得て、新しい世界での第二の人生をスタートさせたのだった。
気が緩んでいた私はそのとき、元の世界からずっと制服に仕込んでいたセンサーの反応に気づくことは無かった
──────────※※side──────────
「ここが、いせかい…?」
※※は広大な緑が広がる草原に立っていた。
「頭痛いとか体痛いとかない?」
急に※※の頭の中に声が響いた
「!こ、こいつ、ちょくせつのうないに…!」
「…随分似た反応を返すねぇ…。日本のブームかい?」
「※※※がいってたんだ〜。でもほんとうにちょくせつのうないにこえをひびかせるひとがいるとはおもわなかったよ〜」
「人じゃなくて神なんだけどね…まぁいいや、説明を────」
「そんなことより!ゆいかどこ!?せんさーがはんのうしてるからいるのはわかってるけどくわしいばしょはちかづかないとわかんないの!おしえて!」
食い気味で叫ぶ※※に神はたじたじになる。
「え、えぇ…わ、わかったよ…ここから北にまっすぐ行けば唯香ちゃんがいるドリス王国に行けるよ…」
「わかったありがとっ!」
そう言って※※は全力疾走で北へと向かっていった。
その姿を見ながら神は呟く。
「話聞かないなあの子…。転生させなきゃよかった…」