52:翌日の皆々
どうしましょう。かけると思ったんですが全然かけませんでした。
遅くなってほんとにすみません。もっと更新します。今度こそ本気で。頑張ります。…きっと、頑張ります…
翌朝、私はいつもと違い乃愛を起こさず二度寝を敢行していた。さすがにあれだけ戦えば一晩で癒されるような生半可な疲れではない。乃愛という癒しグッズにできる限りくっついていたいと思うのは人として当たり前のことだ。
「おはようございます。朝です。…開けてもよろしいでしょうか?」
いつも通りの時間にメイドさんが来てくれたみたいだ。乃愛は私が起こしていないのもあってか起きる様子はない。
私は体をドアの方に捻ってメイドさんにお願いする。
「いいけど私たちまだ寝てたいの〜。起こしに来たならあと5時間くらいあとにして〜。」
「か、かしこまりました。それでは失礼します!ごゆっくりお休みください!」
察してくれたのか、すぐに引き下がってくれた。…昨日帰ったあと、すごい大変だったからなぁ…
昨日トレーニングが終わった時には、既に時間は夜7時を回っており、立っているのは私と獣王様だけだった。
乃愛も瑠璃香もマリナも意識はあるものの体力が完全に切れ、体がプルプル震えていた。
そんな状態を放っておけるわけもないので私が乃愛を、獣王様が瑠璃香とマリナを担ぎあげて戦闘フィールドを出たのだが、そこで、初めて獣王様に会った時に獣王様のそばにいたお付の人っぽい人が恐ろしい顔をして待っていた。
仕事をサボってた(戦闘も仕事だ〜!とか言ってたけど…)獣王様は瑠璃香とマリナを置いて引きずられていってしまった。そんな獣王様とすれ違って来たのは王子様とキーストの2人。苦笑いしながら乃愛と瑠璃香とマリナをゴルド子爵の家まで運ぶと申し出てくれた。瑠璃香とマリナだけ任せることを告げたらそれなら馬車を出すと王子様が言い出して、ラッキーではあったが、ただの送り迎えに王家の馬車出すのもなぁ…と複雑な気持ちになってしまった。
遅くなって帰ってきた上にボロボロな私たちを見てメイドさんは悲鳴をあげて卒倒し、ゴルドさん夫妻には怒られてしまった。訓練で獣王様とやっている事だと説明してようやく落ち着いたが、心配そうに眉をひそめていた。あとマリナに無理をさせないように釘を刺された。
そんなこんなで私たちはなんとかシャワーを浴び、ベッドまで体を引きずっていき、眠りについたのだった。
メイドさんが離れてすぐにまだ乃愛の胸に潜り込んだ。そこそこ大きめの声を出したにも関わらず、乃愛が目覚める様子はない。やはり昨日の戦闘で疲労が溜まっているのだろう。頭に乃愛のふわふわを感じながら、改めて眠りについた。
────────瑠璃香side────────
目が覚めると、既に日が登っていた。
「あちゃー、寝すぎだ…」
瑠璃香は体を起こして伸びをしながら呟いた。なお、時刻は6:30を指している。同年代からしたら丁度いい時間帯であるが、起床時刻が平均で5時頃に安定している瑠璃香としてはかなりの遅れである。
隣で寝ているマリナを起こさないようにベッドから抜け出し、日課になっているストレッチをゆっくりしていく。今日は昨日の疲労が残っているためかなり時間をかけて体をほぐした。
「いてて…流石に昨日はやりすぎだと思うなぁ…」
ストレッチを終えて時刻は7:15を指す。
時間はズレているが、いつもならこのタイミングで朝食作りをしたいマリナを起こすのでマリナの体をゆする。
「マリナちゃ〜んあさだよ〜ん起きて〜」
「んぅ…あさ…?…あっ!あさ!」
「おはようマリナちゃん!いつもより遅いけど…」
「じかん…!うそ…7じ15ふん…おわった…」
マリナが絶望の表情を浮かべる。
ちなみに朝食は既にできている。マリナを起こす直前にメイドさんが起こしにきたのだ。いつもならキッチンにいるマリナがいないのを少し不安に思っていたようだが、瑠璃香がストレッチしながらマリナの体調自体は問題ないことを告げると安心したようで、ゆっくり休むよう言ってくれた。
「朝食はもう出来てるらしいから、食べに行こっか。」
「…はぁ」
「マ、マリナちゃん…せめてマリナちゃんだけは私に優しくして欲しいんだけど…うんとか言ってくれたら嬉しいんだけどなぁ…」
ため息で返ってきた返事に、瑠璃香は引きつった笑顔を浮かべる。
マリナは瑠璃香の言葉を無視して扉を開けて出ていってしまった。
「…マリナちゃん…変なとこ2人から学ばないで欲しかったなぁ…」
出会った当初、敬語こそなかったもののマリナはちゃんと瑠璃香と会話してくれていた。それが日を追うにつれ、唯香と乃愛の真似をしていたのか返事が少なくなっていき、最近はからかいかたまで覚えてしまった。メンタルの弱さに自信がある瑠璃香は何度か泣かされそうになる程だ。流石に泣きはしないが。
それから瑠璃香はスマホを弄りながら扉を開けて部屋を出る。これも日課となっている。元の世界からのものだ。元の世界では某SNSで同じ趣味の人と会話したり、ネットニュースを流し読みして話題を探したりすることがいつもの流れだった。だが、この世界では、元の世界にこちらから鑑賞することは不可能で、会話ができないようになっているため、SNSも見るだけしか出来なくなっている。何故かSNSもネットニュースもしっかり更新されるので見ていて飽きることは無いが、話す相手が少ないので少し持て余しているところもある。
「おはよう、ルリカさん。別にもう少し休んでてもよかったんだよ?」
「おはようございますゴルドさん。もう回復してるんで大丈夫です!マリナちゃんは?」
「マリナちゃんならデザートを作ると言ってキッチンに引っ込んでしまったよ。早く起きられなかったのが悔しかったみたいでユリネに謝ってたよ。」
「ほぇ〜。マリナちゃんほんと偉いなぁ…」
「ちなみにユイカさんとノアさんはまだ寝るらしいよ。すっごい眠そうな声だったらしいね。」
「あ〜、疲れた次の日はいつもそうなんですよね〜。どっちかが疲れてるだけでもふたりして休むからちょっとしっかりして欲しいんですけどね…」
「お待たせしました〜」
「おそくなってごめんなさい…」
話しているあいだにデザートが完成したのかユリネとマリナが戻ってきた。
何も持っていないので多分デザートは冷蔵庫の中にでも入れたのだろう。
「よし、それじゃあ食べようか。」
「「「「いただきます」」」」
4人で手を合わせて食べ始める。マリナの手が加わっていない分、少し肉味が強めだがとても美味しい。熊肉を煮込んだものらしいがよく味がしみている。
ぱくぱく食べていたら一瞬で終わってしまった。
「でざーともってきます…」
ほとんどみんな食べ終わったのを見てマリナがキッチンに消えていく。そして戻ってきたその手にあったのは、綺麗に盛られた果物の盛り合わせだった。メロンやオレンジ、リンゴのような元の世界にもあるような果物がたくさんある。
「こんなてぬきでごめんなさい…」
マリナが少し俯いているが、こんな山盛りなら盛るのも切るのも大変だったろうに…
「手抜きではないだろう?こんなに沢山よくやってくれたよ。それに盛り付けもすごく綺麗だ。流石はマリナちゃんだね。」
ゴルド子爵が褒めつつマリナの頭を優しく撫でる。うーん、まさに親子…
ユリネも満面の笑みで頷いていて、本当の家族のように見える。
家族のことを思い出すと、やっぱり心が痛い。
「ルリカさん?どうかしたかい?急につらそうな顔して…」
「あっ、いえいえなんでもないですよ!まさかこんな美味しそうなもの目の前にしてテンション下がるわけないじゃないですか!早く食べましょ!」
「…ルリカにしてはほめじょうず。しょうがない…たべてもいいよ…」
「あれ!?許可ないと食べちゃダメだったの!?」
「ルリカはわかってない…それくらいいっぱんじょうしき…」
「え、えーと、それは我々も…かな?」
「ゴルドさんたちはたくさんたべて…これくらいしか、おれいできない…」
「扱いが違いすぎるよぉ!なんで!差別なんで!」
「これはさべつじゃない、くべつだ。ってえらいひとがいってる」
「区別しないでぇぇぇ!」
今日は、朝からカロリーの消費が激しいね。
────────────────
私がもう一度目覚めた時、窓から指す光が作り出した影は小さく、太陽が高く登っていることを明瞭に示していた。乃愛はまだ気持ちよさそうに寝ている。
「流石にそろそろ起きようかしらね…」
呟きつつ乃愛のお山をモミモミ。
乃愛のお山から私の両手を伝ってエネルギーが体に溢れてくる。
「さぁ乃愛!お昼よ!おはよう!!!」
叫びつつくすぐり始める。
「ん…あっやっ、あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!、やっ、やめっ、ゆ、ゆいかぁっ!ひっ!はっ!あはははははは!!!おき、!!おきた!!おきたからぁ!!!あははははははは!!」
嬌声をあげる乃愛。もちろん私はくすぐり続ける。これは一種のスキンシップでいつもの事だ。私の気が収まるまでやる。乃愛が上げる声はとても可愛らしく、なんというか、アニメ声?と言うやつで聞いていてとても心地よいのだ。そのせいかどうかは知らないが、喋り方が子供っぽいというかバカっぽいというか…。その結果、その整いすぎた顔もあり男からの視線をどこまでも鷲掴みする完全モテモテ少女が誕生したのだ。
元の世界では高校入学して1ヶ月で、女の子も含めた殆どの生徒がファンクラブに入ったという逸話がある。そして、そのあまりの美貌と高嶺の花感によって告白する勇気のあるものはいなかった。乃愛様とか呼ばれてたっけな…。
この逸話はまだ新しい。なぜなら、乃愛は今月の末に誕生日を迎えて16歳になる高校一年生の代なのだ。ちなみに今は8月の初め。異世界もほぼ同じ時間軸で動いているし気候も日本とさほど変わらない。時差もない…らしい。だから誕生日も全く同じ時間軸で祝うことが出来るのだ。ご都合主義最高ね。
「さて、そろそろいいわね…」
「はぁ、はぁ、はぁ…ゆいか…いつもより…ながく…なかった…?」
「気のせいよ、気のせい。そんなことより早くご飯食べに行きましょ。もうお昼よ?」
「はーい!」
元気な返事を受けて、私は扉を開けて、乃愛と共に食堂へと向かうのであった。




