50:王族の過去
1週間開けてしまいすみません。
全然書く内容が出てこなくて頭抱えてます…
てことで今回は稀に見る短さです。軽く呼んでくれると嬉しいです
「王子様、私を姉と呼ぶのはやめてください。もう、私は違います。」
「そうか?だが、離婚した訳では無いだろう?」
「…王子様、随分と頭良くなられましたね。それでも、私はあの人を失ったいま、王族の姓を名乗ることは出来ませんよ。」
「まぁ、それならそれでいい。とりあえずユイカのダンジョン攻略にはついていけ。それで分かることも多くある。」
サンの母、リーリンは口を噤んだ。
つまりどういう事だ?説明を求めたい。
リーリンはサンの手を引いて立ち上がり、頭を下げる。
「私は人族を認めません。サンもあなた達に任せられるわけがない。失礼しますわ。」
そう言ってスタスタと出ていってしまった。
サンが少し悲しそうにこちらを見ながら連れていかれたのが印象的だった。
リーリンは王族と結婚した一般人で、いわゆる王妃になる人だったらしい。結婚相手は、王子様、ベンガルド王子の兄、ベルガルド王子だった。
彼は獣王様と同じく、相当な力を持ち、4年前の魔王討伐にも参加する予定だった。だが、出発の前日、英雄である篠宮梅男との訓練中に、自らのミスで大怪我を負ってしまった。回復魔法により傷は塞がり、体力も戻ったが、折れた骨や流した血液などはもどらず、すぐに動けるほどの体調ではなかった。
それでも魔王を倒したかった彼は、梅男に懇願し、なんとかついて行くことが決まった。梅男も、その驚異的な身体能力と熱い心に信頼を寄せていたのだ。そして獣王国の西門から出てしばらく行ったところで、事件があった。
そこに居たのは、ただの一般市民。梅男とすれ違い、ベルガルド王子とすれ違ったところでその男は牙を向いた。
「獣人風情が俺たち人族の英雄に媚び売ってるんじゃねぇ!」
腕を深く切り裂かれたベルガルド王子は、その傷で流れた血が決定打となり、しばらくしてその命を終えた。
梅男はその市民を捕らえ、バサラ獣王国とドリス王国の両方に対応を求めるに至った。男は死刑となり、ベルガルド王子の妻は1人の息子をもつ未亡人となった。その後の妻の人嫌いは激しく、誰よりも人族にきつく当たるようになったという。
「ひどい話ね。」
「なにをちまよったのそのいっぱんじん」
乃愛がこの話をしてくれたキーストに尋ねる。
「その男は王国で英雄に惚れ込み、弟子になることを切望したらしい。実力が伴っていなかったので却下されたようだが。その逆恨みだろう。」
「うわぁ…だめにんげんのてんけいだねぇ…」
乃愛がしみじみという。
「それで、ユイカ。どうだ、さっきの話。お前なら絶対に強くなれるだろう?私は、強くなったユイカ達を倒したい。それくらいに強くなりたいのだ。」
「まぁ、訓練はするつもりだったのでいいですけど…なんでサンくんのお母さんまで連れていかないといけないんです?」
「あいつは腐ってもサンの親だ。親が子どもを目の届かない危険な場所に、信頼できないやつに任せて放っておけるか?きっと無理だろう。それで、説得するよりは連れて行って実力を見せた方が安心できるのではないかと思うのだ。」
なるほど…私たちが強くなるのはいいが、守る対象が増えるのは面倒だ。しかもあれだけ人族を否定していたのだ。これは、サンくんすら連れていくことはできないことになりそうだな…
「まぁ、分かりました。それであの人が納得するって言うなら、連れていきます。」
「ありがとう。…これでユイカを認めさせれば、もう一歩結婚に近づける…」
「?」
お礼の後に何か言ったようだが、聞き取れなかった。隣の乃愛の顔がみるみる歪んでいったのできっと知るべきことではないんだろうな。
「そうと決まったらまずはギルドで昨日の依頼の報酬をもらって、獣王様と特訓に行きましょうか。獣王様仕事大丈夫かしらね?」
国のトップが、私たちだけのために時間を使って仕事を貯めてしまうのは申し訳ない。そう思っての発言だったのだが、王子様もキーストも顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
「獣王様は…戦闘狂だからな…」
この、キーストの歯切れの悪い言い方がなにを意味しているのか。それが分かったのは、獣王様と戦い初めてしばらくした所だった。
ギルドで報酬の銀貨を3枚ずつ受け取り、王城に行くと、頭を抱えながら書類に目を通す獣王様の姿があった。そして、私たちが来たことに気づくと、嬉嬉として顔を上げ話しかけてきた。
「おお、篠宮の孫じゃないか!訓練に来たのだな?さぁさぁ、すぐにやろうじゃないか!」
「え、忙しそうだから帰ろうかと思ったんですけど…」
「大丈夫だ!わし、こう見えて書類仕事すぐ終わるし!ちょっと残しといても問題ない!ほらほらさっさと戦闘フィールドに行くぞ!」
獣王様は書類を放り出し、戦闘フィールドに走っていってしまった。
「はぁ…わるいが行ってやってくれ。あと、終わったら仕事するように言ってくれ。強いものを見つけるといつもこうだからな…」
ため息をついてどこか疲れたように話すキーストを背に、私たちはマリナも含め4人で獣王様のあとを追った。




