5:初めての異世界の友達
シノが完全に怯えてしまっていた。
リュウはあのあとすぐに「あとは若いお二人で…」とかなんとかいって逃げていった。
私がなんとか話そうとしても体は震えたままで、目も泳ぎっぱなしである。何とかなだめるスキルとかないかと思い、ステータスを開いてみた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
名前:篠宮唯香
性別:♀
年齢:15歳
Lv:51
経験値:70%
体力:57
MP:25
物攻:59
魔攻:25
物防:20
魔防:15
器用さ:65
速さ:65
幸運:75
所持スキル
言語理解
全属性魔法対応
身体強化Lv5
自己再生Lv1
予知Lv1
加速Lv5
隠密Lv15
暗殺Lv20
攻撃連鎖Lv1
解析Lv1
乱舞Lv1
効率化Lv1
威圧Lv1 new!
魔法
光・空間転移Lv1
装備:制服
武器:小型サバイバルナイフ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
おや?威圧Lv1?さっきの殺気で新しいスキルが目覚めたらしい。このスキルを敵に使うと、今のシノのようになるのか。
もしかしてこのスキルが解除されるまで彼女は怯えたまま?
試しにシノに向かって「解除」と念じてみる。するとシノの震えが止まり、力が抜けたようにまた座り込んでしまった。
「えっと、シノさん?大丈夫?」
「は、はい…大丈夫…です…」
「悪かったわね、一瞬だけ怖がらせようと思ってやったんだけど、スキルで持続しちゃってたみたい。」
「そうだったんですね…はぁぁぁぁ…怖かった…」
シノは涙目になりながらため息をついた。
「ごめんなさい。これからしばらくは働かせてもらうから、仲良くしましょうね。」
「は、はい。ところで、スキルってなんのスキルだったんです?ステータス見せてもらってもいいですか?」
「え?そういうのってマナー違反にならないの?」
「あっ、こ、この国じゃステータス見せるのはあんまり抵抗ない人が多くて。ごめんなさい。もう生意気な事言わないのでそのスキルだけは使わないでください。」
シノの目がナチュラルに恐怖の色に染まっていく。
「いやいやいや。別にこれから協力していく人にそんな不快なことさせないわよ。あと敬語とかもやめてくれないかしら?店長がそんなんじゃお客さんに示しがつかないじゃない?」
「ご、ごめんなさい!わかりま…ごほん、わかったわ!」
「信頼の印に私のステータス見せてあげるわ。シノさんのも見せて?」
「えっ、いいの?ありがとう唯香ちゃん!これが私のステータス!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
名前:宮田誌乃
性別:♀
年齢:19歳
Lv:1
経験値:5%
体力:10
MP:1
物攻:8
魔攻:1
物防:5
魔防:1
器用さ:28
速さ:10
幸運:50
所持スキル
言語理解
料理Lv20
交渉Lv6
盗聴Lv3
隠密Lv1
魔法
なし
装備:洋服、ジーパン、エプロン
武器:料理用包丁
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
私はこのステータスを見て驚いていた。
スキルの数がすくない。さらに能力値もシノのものは結構な偏りを見せている。
スキルや能力値の偏りについて聞こうとシノの方を見ると、シノは顔を青くさせて震えていた。
そんな様子を見た私はこれはまずいかも…と思いつつ声をかけた
「えっと…シノさん?大丈夫?」
「…」
シノの目は完全に死んでいた。
私は、とりあえずシノの頭に手刀をたたき落とした。
「あぎゃっ!」
「シノさん?生きてる?」
「はっ、あ、ああ…あの…す、スキル…れ、レベル…の、能力値…あれ、な、なんなん、でふか…」
シノはがっちがちに固まっていた。
「ご、ごめんね?別にあなたを暗殺とかするつもりもないし、暴れ回るつもりもないから落ち着いて?ほら深呼吸して?ね?」
「ひっひっふー…ひっひっふー…ふひっひふふっふはっはぁー!げほっげほっ!」
「大丈夫!?それはラマーズ法よ!?お願い落ち着いて!」
「ふー…はー…すぅー…ふぅー…」
私はシノの背中を撫でながら優しく語りかけることにした。
「あのね?私、何故か神にチート能力を貰っちゃったの。勇者になれーとか言われたけど、今は保留してて。暗殺のLvに関しては、私が元いた世界でやってたことがそのままレベルになっちゃったの。隠密も同じ。レベルとか能力値は、神のチートのせい。私のステータスの秘密はこんなものよ。落ち着いた?」
「はぁ…う、うん…」
「じゃ、あなたのスキルとかの秘密をおしえて?」
「わ、私、前世は一人暮らしで大学に行ってたの。だけど交通事故で死んじゃって、それでこの世界に転生したんだ。元々持ってたのは料理Lv10だけで、能力値は器用さ以外は最初のままで、スキルはここで情報収集してる内に…って感じ。」
「Lv変わってないのになんで器用さは変化したのかしら。」
「器用さが上がり始めたのは料理Lv20になったあと。ずっと料理続けてたらいつの間にか上がってたんだ。」
「なるほど…レベルアップじゃなくても能力値は成長するのね…」
「でも料理Lv20になってから2ヶ月やってようやく10上がったからあんまり効率は良くないよ。」
「それでも成長しないよりはいいわ。色々教えてくれてありがとう。」
「そんな、いいよいいよ!これから一緒に仕事するんでしょ?仲良くしてね!ほんとに!」
少し目がマジになっているが、あれだけ怯えさせてしまえば無理もない。むしろ自分からちゃんと話しかけていけるだけ精神力の強さを伺える。
「そうね。じゃあ仕事教えてくれる?あと、そろそろおなかすいてきたわね。」
「じゃあ少し時間的には早いけど、ご飯にしよっか!座ってて!すぐ美味しいの作ってあげる!」
シノはそう言って厨房に入った
私は椅子に座りメニュー表を見てみた
━━━━━━━━━━━━━━
menu
ミートソース(パスタ) 銅貨15枚
ペペロンチーノ(パスタ) 銅貨15枚
ペスカトーレ(パスタ) 銅貨15枚
マルゲリータ(ピザ) 銅貨13枚
ハンバーグ定食 銅貨20枚
チキンステーキ定食 銅貨20枚
ドリンク
お茶 銅貨4枚
ミルク 銅貨5枚
━━━━━━━━━━━━━━
なるほど、小さいファミレスのようである。ただやはり品数は少ない。
「銅貨とかの価値はどれくらいなの?」
厨房の奥に聞いてみる。
「銅貨は1枚100円くらい!ちょっと割高だけどこれくらいにしないと余裕で赤字なんだよね…」
「これって本当に儲けられるの…?」
「もちろん!ご飯時になると結構人くるから!あとたまに宿にも泊まる人いるしね!」
「へぇ〜」
「ってところでお待たせ〜!ミートソースパスタで〜す!あったかいうちに食べてね!」
かなり美味しそうなパスタが目の前に置かれた。ひと口食べてみる。
「うっ…ま…」
私はその美味しさに絶句してしまった。兄の愛情がなければ兄の料理よりも美味しいと断言できてしまうくらいの料理だ。
「どぉですかぁ!?これでお客さんの胃袋とお財布をキャッチしてるんですよぉ!」
「これは…すごい…!」
私は必死にパスタをかきこむ。パスタはあっという間になくなってしまった。
「これはすごいわね。これならお客さんも満足するわ。」
「でしょー!」
シノは満面の笑みだ。
「それで、唯香ちゃんには早速働いてもらいたいんだけど、料理は私が作るから、接客して注文をとってもらいたいの!あとは、唯香ちゃん可愛いから、店の前で呼び込みとかしてほしいんだ〜。売上伸びればその分給料上がるから、お願いっ!」
シノが手をあわせて頭を下げる。
「分かったわ。できる限りだけれど、やってみるわね。」
「ありがとう!それじゃ、がんばろー!」
私達はハイタッチして、初めての共同業務に勤しむのだった。