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殺し屋JKが異世界で冒険する話  作者: 飯泉翔羅
第二章:異世界を冒険、二つ目の国にも
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45:獣王国のギルドで


「宜しくお願いしまっす!!!!」


「…はい、よろしく。」


えーっと、46人目?の相手の元気いっぱいの挨拶に、私は疲れた顔で言葉を返した。なるほどたしかにこれはきつい。トレーニングにはなる。ただ、これは体力トレーニングではなく精神トレーニングだ。


そして、相手からしたらもう私が篠宮梅男の孫かどうかは明らかになっているのだろう。そして英雄の孫と拳を交わすだけでも栄誉だと、私の予想よりも多い冒険者が私との戦闘を望んでいるのである。


最初は順調だった。相手の攻撃を薄皮一枚のところで回避し、大きすぎる、誰でもわかる隙ができた所に一撃を打ち込むことで、かなり高い集中力の中で戦うことが出来た。


それに変化が現れたのは6人目くらいだった。今までの冒険者は皆「俺がぶっ倒してやる!」みたいな雰囲気だったのに、この男から急に「光栄です!よろしくお願いします!」みたいな雰囲気になったのだ。攻撃も、今までのようにガンガン攻める感じではなく、英雄に自分の実力を見てもらいたいとでも言うように、自分の全力の技を全身全霊の力を込めて放ってくる。正直大して早くないし、威力もそこそこレベルなので、どんな攻撃が来ても簡単にかわすことが出来た。そして、反撃に出ようとした時には、相手は自分の技の反動でぶっ倒れたり、攻撃が外れた時点で降参を宣言していたり、終わったあとにサインを求められたりもした。


これを40人ものごっつい冒険者たちにやったのだ。精神すり減らないはずがない。そして今戦っている若い男も、なんかすごい剣技を出そうとしているようで、ためを作っている。今攻撃したら確実に倒せるが、待ってあげるのが当たり前の雰囲気になってきているので攻撃出来ない。


「スターバーストストリーム!」


技名を叫びながら飛びかかってくる。

まて、その名前はダメだ。某有名作品の丸パクリじゃないか。私は別の意味で焦りを覚える。

しかし、男は片手剣だし、大したエフェクトもかかっていない。そして連続切りではなく一撃必殺の突きのようなものだ。

心が疲れた私はその剣をギリギリでかわし、近づいた男の首に木剣を軽く叩きつけた。


「これであなたの首は飛んだわ。…ふぅ。」


「あ、ありがとうございました!」


精神的に疲れた。もうやだ。帰りたい。

そんな気分の私は受付嬢に向かって叫んだ。


「ねぇ受付嬢さーん!もう終わりにしたいんだけど、まだ戦いたいって人いるの!?いるなら後で真剣使って叩きのめすから今日はやめてって言ってくれる!?」


『は、はい!?わ、わかりました!それでは今日の戦闘はここま…え、ちょっと何するんですか!?きゃっ!』


おっと音声が乱れたぞ?大丈夫かな?


『ゆいか〜のあもゆいかとたたかってみた〜い!だめぇ?』


放送席を占拠したのは私のご友人だったらしい。依頼を終えてきたのだろうか。まぁ予想より時間がかかっているから仕方ないといえば仕方ないのだが。


「乃愛、私は疲れてるのよ。…精神的に。」


『たいりょくてきにはもんだいないんだね〜。さすがゆいか!いまからそっちいく〜♪』


「え、ちょっと乃愛!私は戦いたくないのよー!」


私の叫びは虚しくフィールドの中に響いただけだった。



「おまたせ!ゆいか!」


勢いよく開け放たれた扉から元気いっぱいの乃愛が姿を現した。


「えー、ほんとにやるの…?」


「たまにはしんけんしょうぶしよーよ!いまはころしやじゃなくてぼうけんしゃなんだがら!」


たしかに、乃愛とは戦ったことは無かった。ていうか仲間と戦ったことなんてない。殺し屋どうしの戦いは本当にどこまでも殺るか殺られるかだ。始めたらどちらかが本当に死ぬまで終われない。だがたしかに冒険者なら仲間内で戦っても殺すまでは行かないし、これは木剣での戦闘だ。ならば問題は無いのか。


「仕方ないわね。私も全力で行くわよ?」


「ぜ、ぜんりょくだとのあしゅんさつされそう…のあのじつりょくみてからどこまでやるかきめて!」


「仕方ないわねぇ、そうしてあげるわ。」


互いに木剣を持って一定の感覚を開ける。私たちが持っている木剣は短剣だ。どうしてもヒットアンドアウェイが戦闘の基本となる。乃愛のステータス的に私より100くらい下だが元々の運動神経の良さでカバーされている。正直そんな手を抜いて倒せる気はしない。


『カウント開始!5、4、3、2、1、スタート!』


最初に動いたのは乃愛だ。正面から突っ込んでくる。突きの体勢だ。今までの敵とは比べ物にならない早さだが、もちろん私にはまだ及ばない。手を抜いて、という訳では無いがギリギリまで引き寄せて体をひねってかわす。


「だーまさーれた♪」


「!?ぐっ!」


乃愛は突きに使ったように見せた短剣を手放し、左腕をラリアットするように私にぶつけてきた。短剣は囮だったらしい。咄嗟に右腕で庇ったが、勢いをつけた攻撃に私の体勢も崩れる。乃愛はその勢いのまま手放した短剣を拾い上げ、今度は上段から切りかかる。囮にされても困るので、しっかり全体を見つつ自らの短剣で受け流した。今度は囮ではなかったようで一瞬乃愛の体勢も崩れるが、すぐに立て直して対峙した。


「やるじゃない。乃愛そんなに短剣の扱いうまかったかしら」


「さっきのいらいでくそまずそうなまものだったからちゅうしゃきよごしたくなくってたんけんつかったんだ〜♪こうりつのよさをついきゅうしてたらいろいろあいであがうかんできたからためしたくって〜♪」


乃愛はすごくたのしそうだ。私に一発入れられたのが嬉しいのだろう。いつもは全部止めているからね。


「今度はこっちから行くよ!」


スキルを全開にして最速で懐に飛び込む。乃愛は反応できていないようで、目の前に現れた私に驚いて体重が後ろにかかっている。そのまま乃愛の胸を押して倒し、短剣を首に当てる。


「ゲームオーバーね。」


「ゆ、ゆいかまたはやくなった?いままでのはやさとちがうはやさだったけど…?」


「スキル全開にしたからね。乃愛もまだ見たことなかったでしょ?」


『勝者、篠宮唯香さんです!』


受付嬢の声が鳴り響く。長い戦闘地獄もこれで終わりだ。さっさと帰ってのんびりしよう。


そう思いながら乃愛の手を引いてギルドへ戻った。



「すんませんっした!!!」


ギルドに戻ると、先程の店員が頭を下げてきた。


「いいわよ。この国のことは知ってるし、最初は信じられないのもわかるし。トレーニングにもなったし。」


「あ、ありがとうございます!お時間とってしまってすんません!」


手をひらひらさせてギルドの外へ出る。するとそこには、昨日も見たような、大きな大きな馬車が2台並んでいた。


「うっ、嫌な予感が…」


嫌な予感は的中するものだ。馬車からはキースト、そして王子様御一行が降りてきた。そしてすぐに私たちを見つけ、声をかけてきた。


「おい!おまえ!ユイカ!本当は英雄の孫など嘘だろう!?嘘だといえ!私と結婚したくないのか!!」


大声で王子様が言い放つ。あぁ、なんて恥ずかしい…


「おいおいおい、王子様が結婚だとよ!?」

「え、英雄の孫とか!?」

「いや、昨日断られてたぞ、王子様が。」

「え!?王子様の告白を断ったのか!?」

「それで捕まってねえってことは、なんかあったんだろうな…」


外野がざわついてしまった。


「王子様、昨日のお話はお聞きになって理解されたでしょう?残念なことですが、彼女を王城に閉じ込めることはよくないのです。」


キーストがなだめてくれる。まともで良かった。


「しかし、本当に英雄の孫かどうかはわからんではないか…私はこの目で見るまで絶対に譲らんぞ!」


また嫌な予感が…


「そ、それじゃあ失礼します!ほらいくよ乃愛!」


私は面倒事から逃げようとした。この場から消えればそれでなんとかなる!たぶん今日のところは!


そう思ったのだが、その提案は以外にも味方から出されてしまった。いや、味方だと思っていた奴から…か。


「それならゆいかがじつりょくをしめしたらいいよ〜おうじさまもいらいうけにきたんでしょ〜?ゆいかとのあもついていってじつりょくみせればいっかいですむ〜♪」


「の、乃愛…?」


いいこと言った〜みたいな顔の乃愛。そして絶望の目で乃愛を見る私。


「それはいい案だ!王子様、ここでいいところを見せれば心変わりをするやも知れませんぞ!篠宮の孫よ、良いな?」


キーストも好都合というように乗ってきた。どっちの意味で好都合なんだろう。キーストまで私が王子様の妻になるの諦めてなかったらだいぶ面倒なんだけど…というか今の時点で既に面倒なんだけど…!


「ゆいか、いいでしょ?」


「仕方ないわねぇ…あ」


乃愛の上目遣いでついつい肯定してしまった…王子様も瞳を燃やしてるし、断れる雰囲気じゃない…


「めんどくさいわ…」


私のつぶやきは誰にも聞かれることなく風に流されて行った。

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