42:獣王との戦闘
遅くなりました!!!ごめんなさい!!!
王子様の妻にされそうだ。どうしよう。
ついに王城に着いてしまった。解決策はまだ出てこない。冷や汗が垂れる。
「さぁ、行くぞ。王子様、起きてください。」
キーストが王子様を揺り起こす。
「う、むぅ…ここは…?あっ…」
王子様は自分の失態を思い出し、顔を赤らめた。
そしてこっちを見てさらに顔を赤らめた。
「お、お前が断ったせいで!私は、私はァ!!!」
真っ赤になりながら叫ぶ王子様。それをキーストが宥める。
「王子様!落ち着いて!いまから獣王様に掛け合いますから。それできっと彼女はあなたのものです。」
「…ならばいいが…」
キーストの言葉に王子様が別の意味で赤くなる。
…本当に何も思いつかない。どうしよう。
私は何も解決策を見いだせないまま、王城に入っていくのだった。
◇
王城は、ドリス王国のそれとは比べ物にならないほどの大きさだった。
本当に大きい。大きすぎる。東京ド○ム2つ分くらいあるんじゃないだろうか。
私たちは、王子様とキーストを先頭に、騎士団員に後ろにして城内を進んでいた。
私は小声で瑠璃香に話しかける
「ねぇマジでどうしたらいいかしら大ピンチよこれ。」
「私もめっちゃ考えてるけどなんも思いつかない。どうしよう。死なないのはいいけど、これ確実に王城から一生出られなくなるやつだよ?回避しないとほんとになんも出来なくなっちゃう。」
焦りに焦る私たちの間に、乃愛がすっと入ってきて呟いた
「るりかはまりなをかかえてじゅうでおうせん。のあとゆいかはおうさまとおうじさまをひとじちにして、のあたちをじゆうにすることをこうしょう。それでいける。」
パワープレイ案がきた。
「国を敵にはしたくないわ。あと、王様とかの能力も見ないと安心できない。とりあえず、この国の戦力を確認しないうちにはパワープレイは無しね。」
「ちぇ〜」
乃愛は唇を尖らせて抗議の意思を示し、後ろに下がっていった。そのタイミングで前の2人が止まった。
「ここだ。身だしなみを整えろ。」
キーストが王子様の身だしなみを整えながら言う。そして自らもえりをただし、扉をノックする。
「騎士団長、キーストです。王子様と、王子様が告白された少女と、その仲間を連れてきました。」
「入れ」
獣王様らしい渋い声が聞こえた。
「失礼します。」
キーストが扉を開ける。
そこは謁見の間らしい。しかし広い。ドリス王国の2倍近くはあるだろう。
奥に獣王様が座っている。
あの耳は…熊だろうか、丸くて可愛い耳だ。だがその体は、冒険者ギルドで見たどの冒険者よりも逞しく、大きかった。
「こちらの少女が、王子様が告白された少女でございます。名前は篠宮唯香。あの英雄の孫娘だそうです。」
「…ほう。」
跪き、頭をたれて報告するキースト。
その報告に、私を凝視しながら獣王様は眉を顰める。
私達も、キーストの真似をしつつ、周りにいる兵士達の能力を見る。
…やばい、どの兵もLv60を超えている。兵の数的に、マリナを守りながら戦いきれる気がしない。1人1発で仕留めてもどこかのタイミングでマリナを奪われて、私たちは拘束されるだろう。
「篠宮唯香とやら、わしと戦ってみんか?」
「…はい?」
最後に獣王様とその隣にいる側近らしき男のステータスを見ようと、そーっと顔をあげようとした時、急な提案をされた。
「そうだな、篠宮唯香の仲間の2人、城野乃愛、天城瑠璃香も一緒で良い。マリナとやらには荷が重すぎるだろう、手は出さんから見ておれ。」
驚いた。名前を言っていないのに言い当ててきた。
周りの兵士たちもざわついている。というかこの場にいるみんなが驚いている様子だ。
「獣王様も、解析持ちってわけですか。」
「ふふふ…篠宮の孫よ、わしを解析してみよ。お前達ほどではないが、まぁ面白いものが見れると思うぞ?」
警戒しつつ解析してみる
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名前:ベオラント・バサラ
性別:♂
年齢:41歳
Lv:298
経験値:94%
体力:328
MP:265
物攻:333
魔攻:290
物防:328+20
魔防:268+20
器用さ:213
速さ:355
幸運:95
所持スキル
全属性魔法対応
身体強化Lv20
体術Lv20
加速Lv20
怪力Lv20
鉄壁Lv15
縮地Lv20
剣技Lv12
乱舞Lv6
威圧Lv20
政治Lv20
指導者Lv10
解析Lv5
予知Lv20
魔法
火・火自由
水・水自由
土・土自由
風・風自由
闇・魔物召喚
?・????
装備:獣王の礼服
武器:ミスリル硬剣
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唖然とした。転生者では無いだろうが、チートレベルの化け物ステータスだ。何より、獣人のはずなのに、魔法全属性対応持ちだ。獣王様、ベオラントは私の驚愕した顔を見てニヤリと笑い、兵士たちに命じた。
「彼女たちを戦闘フィールドに案内せよ。対戦相手は…ワシだ。」
◇
戦闘フィールドは、ギルドのものとほぼ同じだった。カメラも3台回っている。
マリナはベオラントの指示で観戦室にいる。
「3対1でやるんですか?私たちの能力知ってるのに…」
「もちろんだ。…さて、君たちの武器は知らないが…まぁ、腐ってもわしは王だ。間違って殺されても困るのでな、木製の武器で戦ってもらいたい。」
ギルドの時と同じように木製の武器が出現した。
「それはいいんですけど、そうすると私しか戦えないんですけど。まぁ、私はそれでいいです。早くやりましょう」
これまた同じように乃愛と瑠璃香は使えない注射器と銃だ。
「レベル的には圧倒的にわしが不利だが、わしも楽してこのレベルに至った訳では無い。3人できてもわしは勝つ自信がある。だが万一があるからなぁ。仕方ない。手持ち無沙汰にさせてすまないが、2人はそこで見ていてくれ。」
ベオラントは少しがっかりしながら乃愛と瑠璃香を壁際に行くよう指示した。私の方を見てきたので、私が頷いてやると2人はそそくさと端へ寄っていった。
「篠宮の孫一人なら、わしは武器はなしで良い。魔法も使わん。」
「…随分と舐めてくれますね?レベル差は見たでしょう?」
少し頭にくるな。流石にここまで舐められることはないと思っていた。
「これも教育だ。わしとて完全に舐めきっている訳では無いぞ?その証拠に、その手に持っている武器は木製じゃないか。もし本当に完勝する自信があれば、わしは本物を持たせているだろうな。」
「…そうですか。」
会話が一段落したところで、女性の声が放送で聞こえてくる。
『準備はよろしいでしょうか。それではカウントを開始します。5、4、3、2、1、スタート!』
私はゼンとの戦いと同じように相手の懐にトップスピードで飛び込む。隙は見えない。スキルに鉄壁なるものも持っている。即死する場所を一撃、というのは難しいだろうから、致命傷になりやすくて、普通は攻撃されない場所、すなわち股下の血が集まっているところを切り裂くイメージ!
ドゴッ!
行ったと思った、その瞬間に私の体は仰向けに倒れていた。鳩尾が悲鳴をあげ、吐き気が止まらない。戦闘は終わっていないはずだ。まだ動かなければいけない。脳は分かっているはずなのに、体が動かない。
「あー…すまん、大丈夫か?」
ベオラントが顔を覗き込んでくる。
舐めるな…と言おうとして、言葉が出なかった。喋ろうとしても口から言葉が出てこない。どころかなんだか眠気が来た。どういうことだろう…と考える間に私の意識はそのまま無くなった。
──────────ベオラントside──────────
────危なかった。
想像以上のスピードだった。彼女の体が軽かったこと、ベオラント自身の体の重さと硬さ、さらにスキルによる拳の硬化で何とか彼女をはじき返すことは出来たが、もし予知スキルが発動していなかったら、どうなっていたか分からない。
ベオラントの経験測で、自分の能力を知っている小さくて、スピードとクリティカル性で戦う相手の初撃として一番に股下に来るという予測はしていたが、それだけでは拳が間に合わなかっただろう。
もし3人が来ていたら自分の意思で予知をがんがんに発動させて、対応していただろうが、偶発的な予知スキルの発動はよっぽどのことがなければありえない。
「おい!誰か篠宮の孫を医務室に連れていけ!あと天城と城野!2人もついて行ってあげろ。マリナもな。先程の戦いは見ただろう、篠宮の孫がどうしてこうなったのか、ちゃんと話してやれ。」
「「は、はい」」
あの二人も篠宮の孫が一撃で倒されたのは衝撃的だったのだろう、唖然としていたが、ベオラントの言葉に返事をして担架を持って現れた医務員について医務室へ向かった。
その後、皆がいなくなった戦闘フィールドで、ベオラントは1人呟いた。
「神様よぉ、まーじで魔王復活するんですかい…勘弁してください…」




