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殺し屋JKが異世界で冒険する話  作者: 飯泉翔羅
第二章:異世界を冒険、二つ目の国にも
41/71

41:獣王国の王族

遅くなりましたぁ!


「私の妻にしてやる」


少年の言葉にしばし硬直したあと、私はしっかり相手の目を見て言った。


「結構です。」


またしても周囲がざわついた。


「おいおい!あの王子様の全力の告白を切り捨てやがったぞ!」

「やばいな…これは軍隊が出るかもしれない…」

「軍隊が出たらいくら篠宮の孫でもやばいんじゃないか?」

「もう、諦めるしかないだろうな…」

「ワンチャン嫁にしたかったのに…」


色々とうるさい。てかこの子は王子様なんだ。可愛い顔をしている。その顔がみるみる赤く染まっていく。断られた羞恥によるものだろう。


「お、おま、おまえ!こ、この私の言うことが聞けないというのか!人族のくせに!この、この私のことを知らないとでも言うつもりか!」


「ご、ごめんなさい。私、人族だから、あなたのことも知らないの。恋人になりたいならまず友達になるところからにしましょうね?」


流石に可愛い顔したショタっ子を無下に扱うような冷たい心は持っていない。


「唯香…とことん主人公体質だね…」


「なんで私…顔だけなら瑠璃香や乃愛の方が可愛いのに…」


頭を抱えていると、少年は「うぐっ…ううぅぅぅぅ!」と呻きながら泣き始めた。


「おいおいおい!王子様泣いちゃったぞ!」

「やばいぞこれ!篠宮の孫、国を相手にすることになるかもしんねぇ…」

「国が相手って…想像もつかねぇぞ…?」

「やばいなぁ、やばいよぉ。最悪人族滅ぼされるんじゃねぇの?」

「や、ドリスは潰されないだろ…多分」


「ご、ごめんね!ごめんね!おねがい、泣かないで!と、友達になりましょ?ね?ね?」


私は全力で慰めにかかる。少年を泣かせるつもりは全くないのだ。この程度のことで人族滅ぼされたくないし、私も国と戦うなんてしたくない。


「おい!通せ!騎士団だ!」


出入口の方から、入った時にあった虎耳獣人の声が響いた。騎士団らしい装備をした男たち3人が入ってきた。


「お、王子様!?何故泣いておられるのですか!?」


「き、キースト…うぐっ!ふ、振られたぁ…ひっく!」


少年は騎士団の男の鎧に抱きついた。硬いだろうに…


「振られた…?そうですか…もしやそちらのノーマルに?」


私を指さす男にこくこくと頷く少年。

嫌な予感しかしないので一応男に解析をかける


Lv80の獣人だ。まぁ強いが、私たちの相手ではない。しかもここは戦闘禁止だから、急に襲われることもない。大丈夫大丈夫。


「おい、そこのノーマル。」


「私のことかしら?い、一応その子を泣かせたのは悪いと思ってるわ!別に泣かせようと思って泣かせたわけじゃないから!」


全力で弁明する。後ろの3人もこくこく頷いてくれる。


「このあとなにか予定はあるか?」


「え?」


想像していた、やろぉぶっ殺してやらァ的な流れじゃなかった。拍子抜けしてしまう。


「今冒険者登録したばっかなので、依頼受けに行こうかと…」


「もう依頼は受けたか?」


「いえ、まだですが…」


「よし、ならば着いてこい。王城に行く。」


「…は?」


急展開過ぎて頭がついてこない。私たちは冒険者登録して冒険者になって、魔物をザクザク殺して、いろんな所に行っていろんな景色を見て楽しむ予定だったはずだ。

今日はその第1歩だと思っていたのに。どうしてこうなった。


「はっ、まさか、このまま豚箱エンド!?王子様の告白断ったら逮捕!?まさか死刑!?」


瑠璃香が混乱し始めた。

そんな瑠璃香を乃愛が頭にチョップを落とすことで黙らせ、私に小声で囁いてくる。


「とりあえずついてこ。なにがあってものあたちならだいじょうぶだよ!」


その言葉に私も心が落ち着いた。

そうだ。私たちなら今のところレベル的にも強さ的にも誰にも負けることは無い。


「わ、分かりました。」


「よし。それでは行くぞ。」


未だに泣いている少年をお姫様抱っこして、男はギルドを出ていく。


私達も男について外に出ようとする。


「ま、待ってくれ!」


ふと、後ろから声が聞こえた。それは先程瞬殺してしまったゼンだった。


「さ、先程はすまなかった!約束の金貨4枚だ。…約束した手前、渡さないわけには行かない。もっていってくれ。」


「え、でも大金だし…いいわよ。こんなの簡単に出せるものじゃないじゃない。」


「頼むよ!渡さないと俺が惨めすぎる!俺のためと思って受け取ってくれ…!」


ゼンが懇願してくる。

正直金貨4枚は400万円だ。一般の冒険者の格好を見ているとそこまでの金を持っているようには思えない。ゼンもそこまでの金持ちではないと思うのだが…


「それじゃあ、一旦受け取るわ。でも、それであなたは生活出来るの?」


差し出された金貨を受け取り、尋ねる。


「そ、それは…大丈夫だ!今から依頼を受けて、とりあえず今日の家族の分は稼げる…」


私はため息をついて、金貨4枚をゼンに押し付けた。


「家族のために使いなさいよ。家族がいるなら生活厳しくなるような金かけるんじゃないわ。てか、私家族がいる人から金巻き上げて生活を困窮させるなんて嫌よ。罪悪感しか生まれないわ。」


ゼンは私の言葉を小さくなって聞いている。なんとなく説教しているような気持ちになる。


「っていうか!あなた私たちのこと見て上玉だとか言ってたし、周りの人もやばい、あの子肉便器だ…とか言ってたわね!浮気…というかレイプまがいのことしてんじゃないの!?家族もいるのに!そんなんだから私みたいな女の子に負けるのよ!家族はよくあなたのこと見捨てないわね!」


私にもなんか火がついてきた。兄貴を説教していた頃を思い出す。ゼンはますます小さくなる。


「ゆ、唯香…そろそろ終わりにして…みんな見てるから…」


後ろから瑠璃香が声をかけてくる。ついつい本気で怒ってしまった。


「あぁ…ごめんなさい。…じゃあ、そういうわけだからゼンさん。もうこれっきりにして真面目に冒険者して、家族に奉仕しなさい。きっと今までとは比べ物にならない評価を貰えるわよ。じゃあね。」


そう言って私はギルドを出た。


出た先には大きな、まるで3トントラックのような、大きな馬車があった。それも2台。


「…でっか…」


私たちは皆唖然としている。


「おい!こっちだ!王子様を待たせているんだぞ!?早く乗れ!」


1台目の馬車の入口から先程の男が呼びかけてきた。私たちは返事もそこそこに速やかに馬車に乗る。中は、恐ろしいほど綺麗で、広い空間があった。


「…ひっろ…」


私たちはまたも唖然とした。

王子様はソファで寝ている。


「あまりこういう部屋には慣れていないかもしれないが、適当に座ってくれ。」


男が王子様の隣に座り、私たちも反対側に座る。王子様の顔は少し赤らんでいるが、とても可愛い寝顔でついつい笑顔になってしまう。


「まずは自己紹介をしようか。私は獣王国騎士団団長のキーストだ。今日はまぁ、王子様が冒険者になって初めての依頼をこなす日だったので護衛に着いていた。以上だ。お前達は?」


互いに顔をみあわせ、私から自己紹介する。


「私は篠宮唯香。多分有名な篠宮梅男の孫です。今日はみんなで冒険者登録に来ました。次乃愛」


「のあはしろののあ!よろしく!つぎるりか!」


「短いね!?えっと、私は天城瑠璃香です。唯香と乃愛の友達です。今日は唯香の言った通りです。はい最後!」


「っ…!…え、えっと、わたし…マリナ…りょうりがとくい…です…」


マリナは言い切ったあと座ったまま瑠璃香の後ろに顔を隠してしまった。やはり貴族嫌いは治っていないようだ。まぁ、相手は王族なわけだし、無理はないだろう。


「ふむ…まさかあの英雄の孫が…すると君は転生者か?あと君たち2人も苗字持ちだな、君たちもか。」


「おっしゃる通りです。」


「転生者でこの国にたどり着ける者は久しぶりだな…まぁ、篠宮梅男の孫ならば、当たり前の話か…」


男は少し顔をにやけさせながら呟く。

声は小さくなく、しっかり私たちの耳に届いた。


「他にこの国に転生者いるんですか!?」


「あぁ、いるぞ。1人だがな。冒険者をしているらしい。まぁ、騎士団に入れる程の力もレベルもないらしいが、しっかり生計を立てているし、人もいいから獣人達にも嫌われていない。」


なるほど、シノの他に転生者が生きている事実は初めて知った。一度会ってみたいものだ。


「それはそれとして。王子様の告白を断ったのは誰だ?」


男…キーストが顔をキリッとさせて仕事の顔になる。

スっと私が手を上げる。


「篠宮の孫か。ううむ…英雄の孫が断ったのか…なんと対応したものか…」


「もし私が断ってたらどうなったんですか?」


瑠璃香が興味本位で聞いた。


「基本、獣王様の勅命で強制的に王子様の妻にさせられるか、抵抗が見られるようなら隷属の首輪ルートだ。」


「私告白されなくてよかった!奴隷に戻るのは嫌すぎる!」


瑠璃香は青い顔になる。乃愛とマリナは馬車の揺れで眠くなったのか2人して寝ている。呑気にも程があるな


「うーむ…これは、獣王様に相談するか…」


「ちょっと待って下さいキーストさん。私たちに拒否権はないんですか?」


「それはそうだろう。まぁ英雄の孫だとすると、変わってくるやもしれん…いや、たぶんあまり変わらないだろうな。魔王も四年前に君の祖父殿が倒した。君はまだ若い女の子だ。王子様との子を残してその子が復活した魔王を倒す英雄となる。こう考えると、むしろ推奨するべきだな。」


思考がどんどん私の都合の悪い方向に向かっていく。どうしよう。どうしようもない…


「うむ。篠宮の孫よ。たぶん君には先程の告白の返事を撤回してもらうことになる。心の準備をしておくがいい。君の仲間たちは…もののついでだ。君の仲間ということは能力も十分にあるだろう。君の召使いか何か、まぁ悪いようにはしない。」


キーストの言葉に、私も瑠璃香もショックを受ける。

いや、本当に、どうしよう…


こうして私たちは、どうやってこの危機を回避するかをずっと考えながら、馬車で王城に向かうのだった。

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