35:篠宮の陽弥
遅れてしまいました…
今日はだいぶ忙しくてなかなか書く時間がなかった上に、7割書いた原稿全部消えたせいでモチベが最底辺に落ちてしまい、遅れてしまいました。すみません!よろしくお願いします!
色々話す前に、自己紹介をしようと思います。
みなさんこんにちは。篠宮陽弥です。
篠宮唯香の兄をしています。
寺の経営を1人でしています。いわゆる住職ですね。
これ結構地味な仕事に見えますが、大変なんです。
お花生けるとか習字とか、そのほかにも様々な技能を身につけないとやっていけないんです。
妹に手伝ってもらえないかって?
それが…無理なんですよね…。
妹は先日、友達と一緒に異世界に転生してしまって、僕は元々一人っ子だった設定になってしまったんです…。
ひどい話です。でも唯香がそれでいいのなら僕もそれでいいかなって思うんです。1人はさみしいですけど。
さて、そんな湿った話はいいんです。今日は、僕の身に起きた本当に意味のわからない事件(事件なのかもわかりませんが)についてお話しさせてください。
◇
彼が僕の夢枕に現れたのは、唯香達が消える前日でした。気づいた時には、僕は天井のない青い空間に立っていて、前を見ると顔立ちの整った若い青年が座布団の上に座っていました。
「篠宮陽弥さん、でよろしいですね?こちらにお座り下さい。」
そう声をかけられた僕は、やけに夢らしくなくハッキリ感じる座布団や自分の肌の感触に違和感を感じつつも、その状況に疑問を抱くことなく彼の真正面の座布団に正座しました。
「まず、自己紹介をします。僕は神です。」
正座した僕は、彼のその言葉を聞いて、一旦立ち上がり、周りを見回しました。上下左右どこを見ても青い空のような空間が広がっています。
僕は再び座布団に座りました。
「すみません、僕は仏教徒でして、宗教勧誘とかはちょっと…」
「信じてもらえないのも仕方ないとは思いますけど、自分が神だなんて言って宗教勧誘してくる人いないと思いますよ…?とにかく僕は神なんです。この空間とか、見え方感じ方、違和感無いですか?夢にしてはやけにリアルでしょう?」
言われてみるまでもなく、違和感しかありません。僕としてはこんな現象をそう簡単に信じるわけにはいけないので、特に返事などを返すことはしません。
「返事をしなくても、僕は心が読めるので意味はありませんよ。」
自称神様がかまをかけてきました。これですぐ声を上げてしまうと、得意げな顔で「ほらね?」などと言われてしまうので、絶対に返事をしてはいけません。
「いやいや、そんなウザイことしませんから。」
僕は返事をしません。意地でも返事などしません。ちょうどいいです、このまま寝てしまいましょう。そうすればきっと目が覚めます。そうしましょう。
「寝ようとしても無駄ですから、夢じゃないですし。そろそろ信じてくれませんか?というか話進めたいのでそのままでいいから聞いてもらえますか?」
うむむ、なかなかしつこい自称神ですね。まだ心が読めるということを信じさせたいのでしょうか。それに話を進めるって、すごく嫌な予感しかしませんし、ここは進められる前に寝てしまうのが得策でしょう。
僕はなんとか寝られるように座布団を枕にして体を横にしました。もう自称神のことなど知りません。僕は僕が眠りやすい体制を探し出し、しっかりと目を閉じ、ついでに耳も塞ぎました。
「耳を塞いでも無駄です。さあ、お話します。」
なんということでしょう、脳内に直接声が響いてきました。こんな現象を起こせる人間は僕は知りません。いや、この世界にいるはずがありませんね。ということはもしかしてもしかするともしかしてしまうのかも知れませんね。仏教者として、神の存在よりも仏の存在を確認したいところでした…
「あ、仏様もいますよ?特になにかするでもなくにこにこと地上の人間達を眺めてます。」
「本当ですか!よかった…教えに間違いはなかったんですね…。」
つい声が出てしまいました。生まれて今までずっと仏と歩んできた僕ですから、仏などいないと言われたら本当に辛い思いをしていたことでしょう。
そんな僕の様子を見た自称神、いや、もう認めるべきでしょうね。神様は改めて僕がここに呼び出された理由を話し始めました。
「篠宮陽弥さん、あなたをここに呼び出したのは、謝罪と賠償、そして保証についてのお話なのです。」
ここに来て急に神様らしさが無くなりました。これでやっぱり神様じゃない!なんて思ったりはしませんが、正直何の話だ?という気持ちです。
「神様らしさないとか言わないでくださいよ…僕はまだまだ神としてひよっこなんです…」
ちょっと神様は傷ついているようです。配慮が足りませんでしたね。
「あ、すみません、配慮が足りなくて…」
しっかり声に出して謝罪をしておきます。社会人たるもの、しっかりと声に出して相手に伝わるように謝罪はしなければいけません。時間を置いても行けません。相手が一番怒っている時が一番信頼を回復しやすい謝罪ポイントなのです。
「あ、大丈夫です。…しっかりしていますね!」
「いやぁ、それほどでもありませんよ。」
褒められても舞い上がったりしてはいけません。かと言って喜びを全く表現しないのも相手が不安に思ってしまいます。しっかり嬉しさを顔に出しながら、日本人らしい謙遜の心を相手に送るのです。
「それでは、説明をします。まずは謝罪からです。…本当に申し訳ありません。あなたの妹さんが、さらに言うとそのご友人も、異世界の魔王討伐のメンバーに選ばれました。ですので、妹さん達に関する一切の記憶は、あなたの中以外からきれいさっぱり消し晒せていただきまして、妹さん達を転生させていただきます。これを覆すことは、いくら神でも出来ません。完全にこちらの都合ですし、さらに言えば弱冠15歳程度の少女を魔物の蔓延る世界に連れていくなんて、保護者的な役割であるあなたからしたらとても辛いことでしょう。ですが、これはもう決まってしまったことで、覆すことが僕の力でもできません。本当に申し訳ありません。」
少々長いセリフを本当に申し訳なさそうな顔で神様は話してくれました。
僕としては、正直信じられない話です。魔王討伐だの魔物打の転生だの、わけか分かりません。今すぐ帰りたい気分です。まぁ、戦闘能力、特に暗殺能力に関しては妹は元々すごいので特に問題はありません。友達、というのも思い浮かぶのはみんな戦闘能力の高い暗殺者たちだらけです。問題は全くないでしょう。
ただ問題なのは精神的な部分です。暗殺に優れているとはいえ、大人びた性格とはいえ、見知らぬ土地でくらさなければならない妹の心労は計り知れないものになるでしょう。宿が取れるかどうかも不安です。
しかし、決定事項なのでしたら仕方ありませんね。無駄な体力を使うべきではありません。今考えるべきは妹が転生先で安全安心に、健康的に暮らせる状態を作る必要があります。
と、ここで神様が話しかけてきました。
「ほんとうによく考えられますね。さて、あなたの不安を取り除く内容が賠償です。これから説明します。」
賠償金とか言われてもとても困りますが…
「賠償として、まずはお金ですね。一生働かなくていい額を口座に入れておきました。誰も不審に思いませんし、誰も盗むことはありません。ただ、あなたはきっとこんなことは…」
「ええ、もちろん。望んでいません。」
「はい。ですから他にもまだまだございます。続いての賠償として、妹さん達の活躍、生活、行動などを見ることの出来るお部屋をご用意致します。その部屋はあなたしか見ることが出来ませんし入ることもできません。中にはスクリーンがあり、生活の様子や行動をあなたと、僕も一緒なんですが、見ることが出来るのです。もしピンチになったり死にそうになったら、僕が助け舟を出します。」
なるほどなるほど、それならば確かに安心していられますね。
僕も助け舟を出すことができるかもしれません。
「納得、していただけましたかね?」
僕はしっかりと頷きます。
「安全が保証されているのなら、僕は反対はしません。あとはあの子のやりたいようにやらせてあげたいんです。」
「分かりました。ありがとうございます。それでは最後の保証、ということで、その、万一、億が一の確率で妹さんが命を落とす、なんてことがありましたら、僕の魔力を使って時を巻き戻します。巻き戻しても厳しい場合、これは京が一の確率ですが、その場合も僕の力で息をふきかえさせます。どんな事があっても、私がしなない限り、絶対に妹さんを死なせたりしません。っていう保証書を書いてきましたので、印鑑をお願いします。」
僕の手元にないなぁと思ったら普通にポケットの中に入っていました。
なんでも神様パワーで解決出来そうな雰囲気さえありますね…。
そう思いながら僕は印鑑を押しました。
「ありがとうございます。これで契約は終了しました。勝手な契約で本当にすみませんが、安全は保証しますので、これからよろしくお願いします。」
「ええ、僕が見ていたいところですが…ね。本当によろしくお願いしますね!」
神様は僕の言葉を聞いてニッコリと笑いました。その瞬間意識派がブラックアウトし、僕はベッドに寝ていました。僕は飛び起きてベッドからおります。既に大きな違いはありました。いつも僕が二段ベッドの上に寝ているのですが、ベッドは一段しかなく、僕が寝ていました。
キッチンの食器類、靴箱の中、妹が私用に使っていた部屋、その他色々なところにたくさんあった妹の跡が、ひとつも無くなっています。
僕は、あの話が本当だったことを改めて知らされ、気分が落ち込みました。
神様の言っていた、妹達を見られる部屋も、僕がみたいな…と思ってイメージするだけで扉が出てきました。
保証書を書いただけのことはある、便利な不思議仕様になっているようでした。扉を開けると、テーブルと椅子がひとつずつと、大きなスクリーンがひとつある、シンプルな部屋が広がっていました。神様はいませんでしたし、入ったところでなんの変化もありませんね。
このあと、家中を探し回って、知り合いを訪ねて、ようやく妹がいなくなったことを実感したのでした。
◇
こういった事件を経て、僕はいま、一人暮らしをしています。
人間生きているとよく分からないことが度々ありますね。この経験はもちろん僕の中でトップクラスによくわからないことです。
さて、今日お話出来るのはここまででしょう。
次はいつになるか分かりませんが、僕の視点で唯香達を見ようと思います。
ぜひお楽しみに!
今回は閑話です!
次回から二章を進めていきます!新たな世界へ足を踏み出した唯香達がどう動いていくのか、ぜひ次からも呼んでくれると嬉しいです!




