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殺し屋JKが異世界で冒険する話  作者: 飯泉翔羅
第一章:異世界最初の国、冒険前の下ごしらえ
32/71

32:ドリス王国の王様

王様を助けたあと放置していたことを思い出した。どうしたものか…


「ふむ、私はこの貴族に話を聞かねばならぬ。ユイカさんは王様と顔を合わせたかね?」


「一応合わせましたね」


「ならば迎えに行ってくれないか。騎士団は基本訓練ばかりしていて、多分今回の騒動は後手に回って何も出来なかった。これから関与するとしたら各部隊隊長の私やアルト、あとはガゼルくらいだろうから、城はほぼもぬけの殻だろうしな。」


「あれ?そう言えば倒した人達の処理もしてない…」


「…は?ま、まさか敵を殺さずに倒して、そのまま放置してきたのか…?」


…完全にやらかした。殺さない時の処理、めんどくさいんだな…

とか考えている場合ではないのですぐに踵を返して扉を開けた。


「行ってきます!二人はついてきて!」

「「yes,mam!」」


ということで私たち3人は全速力で城へ向かった。





城についたが、特に変なところは見られなかった。変に静かすぎることもなく、かと言って大騒ぎしているでもない。


「とりあえず昨日と同じ侵入通路で。任務と同じように誰にも気づかれないこと最優先で。」


私が指示を出すと二人とも頷き、隠密行動に入る。城の裏に回り、王の自室を確認すると、窓は壊れたままになっている。

侵入しやすいな…と思いつつ、ハンドサインで予定通り同様の動きで侵入することを告げる。そして瑠璃香を土台に私と乃愛は再び城の壁際に身を落ち着けた。気配で王の自室には王だけがいることが確認できた。

壊れた窓から手を伸ばし、ほぼ壊れた鍵を音をたてずにあける。王は机に向かって座っているままで私たちには気づかない。

思った以上に、というか全くピンチな状態になっていなかったのでどうしたものか、迷ってしまう。正直王が縛られてたり、なにか強要されていたらやりやすかったのだが、王が一人でぼーっと座っているなんて状態は予想外だ。まぁ隠密で侵入してしまった以上、工夫も何も出来ないので普通に話しかけることにする。


「あのー、王様?」


王は私が声をかけた瞬間に体をビクッ!と大きく震わせて椅子から転げ落ちた。


「だだだだだれだああああ!ててててきてきてきしゅううう!?」


「お、落ち着いてください落ち着いてください!敵じゃないので!私の顔覚えてないですか!」


物凄い怯えぶりである。好青年のイメージが音を立てて崩壊している。

王は机の下に入って震えていたが、私の顔をしっかりと見ると、一瞬考えるような素振りをし、思い出した様に顔をあげ、満面の笑みを浮かべた。


「昨日助けてくれた女の子!いやぁ昨日は助かったよ!君みたいな小さくて可愛い女の子があんなに強いなんて、すごいなぁ…!」


王は顔を上気させて言った。小さいという言葉に少しムッとしたが、特に貶している様子はないので気にしないことにした。

が、なぜか乃愛が少し怒っているように見える。なぜだろう。


「あの、今日は昨日の敵が沢山いるところに放置してきちゃったので、助けようと思って来たんです。けどこの状況…和解したんですかね?」


そう、城で見た兵士、使用人達の中には昨日の戦闘で気絶させた人が多くいるのだ。昨日のことなどなかったかのように勤務に励んでいる姿は少し違和感をおぼえるほどだ。

王は少し興奮してしまった自分を恥じるように咳払いを一つして答えた。


「あ〜えーっとだね、私、スキルに指導者というのを持っていてね、今日の朝揃ってここに来た時に少しお話して、また私の部下になってもらうことになったのだ。」


信頼されているという話はそのスキルによるものだったのか。


「つまり、今この城の人達はもう敵ではない…ってことでいいんですね?」


「そうだ。済まなかったね、わざわざ来てくれたのに…ってかどうやって入ってきたの?ドアからではないよね…窓から…?」


「窓からですよ。」


「ここ2階なんだけど…」


「ジャンプしてきました。」


「そんな高さじゃ…いや、もういいや。昨日の戦いぶりと言い、侵入方法と言い、規格外にも程があるね君たちは…出来たらこの国でずっと暮らしていてくれると嬉しいんだけど…」


「冒険者になるので…」


「そうだよねぇ…」


「まぁでも王様の無事が確認出来て良かったです。私たちは一旦帰りますね。」


「ああ、ぜひまた来てくれ。あ、そうだ。名前を聞いてもいいかな。君が名前を出したらすぐに通すように話を通しておくよ。」


「私が篠宮唯香。こっちが城野乃愛。あと、今ここにはいないけど、さっき窓に飛ぶ時踏み台になった私達の仲間で天城瑠璃香ってのがいるからこの3人分通しておいてください。緊急なことがあったらこの国にいる限り助太刀に行きます。」


「それはありがたい。ぜひ頼らせてもらうよ。」


こうして私たちはまた窓から飛び降りて王に驚かれつつ、ゲストへの帰路についた





ゲストに戻ると、状況を理解するのが難しい状況になっていた。

まず、ダニエルとゴルドが酒を飲みつつ気持ちのいい笑顔で騒いでいる。バルドはぐるぐる巻きのままカリナとマリナに耳をもふもふされている。シノは営業時間までだいぶあるのに厨房で忙しそうに動いている。


たしか私が外に行く時はもっと暗い雰囲気だったし真剣な表情だったしマリナは貴族大嫌いだったはずだ。


「え、何この状況…」


「おうおかえりユイカさん!悪いが飲ませてもらっているぞ!」


「お酒は私が国から持ってきたものでね!とても美味しいんだが君たちもどうだい!甘い酒もあるから成人したての舌でも飲めるよ!」


ダニエルもゴルドもご機嫌だ。


「状況説明!状況説明をお願いします!」


とりあえずシノのところへ行って声をかけた。

シノは焼いたり切ったりして忙しそうだ。


「詳しくは今は言ってる暇ないんだけど、和解して飲み始めて今に至る!」


「ありがとうよくわかったわ!」


きっとダニエルにゴルドの誠意が伝わったのだろう、その証拠に2人は本当に仲良さそうに酒を酌み交わしている。もしかしたら酒の影響でこのテンションになっているのかもしれないが、険悪になるよりはいい。


私たちは夜営業の英気を養うべく、シノが作ったツマミをソフトドリンクとともに堪能した。




夜営業が始まるギリギリまで飲んでいたゴルドとダニエルを追い出し、ついでにバルドも追い出して片付けた後、夜営業が始まった。今日も大盛況だ。ちなみに、今回から瑠璃香は私と一緒に接客、マリナはシノの調理の手伝いを担当している。


「いらっしゃいませ!3名様!こちらのテーブルへどうぞ!」


瑠璃香も初めての接客なのだろうが上手くやっている。基本注文をとるのは私がやって、客の入りを調整するのが瑠璃香だ。圧倒的に瑠璃香の仕事量は少ないが、慣らすためだ。今後慣れてきたら全体を任せるようにする。とはいえひと月、と言うよりあと3週間程度しかこの国にはいないわけなのですぐに慣れてもらわなければ困るのだけれど。

こうして客をさばきさばき、夜も深まってくる。

その人が来たのは締め作業の時間を考え始めた頃だった

「ご注文承ります!」


「ミートソースパスタで。」


「ミートソースパスタ1つ!以上でよろしいでしょうか!」


「はい。」


「少々お待ちください!」


そう言って顔を見た瞬間、声を上げそうになってしまった。そこに居たのは、この国の王。そういえば名前を聞いていなかった。そう、王様がいたのである。


「しー」


と言いながら人差し指を口元に当てる。


「僕もたまにここに来るんだ。良い料理屋ができたって聞いてきになってきたらすごく美味しくてね。いいアイデアを考えつくためにも栄養だけは取らないとだからね…」


「そ、そうなんですね…あ、そうだ、明日お城に行きます。ちょっと会わせたい人がいるので。」


「会わせたい人…?うん。わかったよ。話は通しておく。」


この時の会話はこれで終わり、その日は特に話すこともなく王様は帰っていった。ちなみにこのあとシノに聞いたところ、「王様は開店当時からの常連さん」なんだそうだ。

今日はカリナが2階のシノの部屋で寝ることになっている。ダニエルがあの状況では仕方ないだろう。ダニエルは追い出したあと帰ってこないので、安い酒を探してまだ飲んでいるのかもしれない。ゴルドの護衛は律儀について行ったので取り残された御者が可愛そうである。


夜営業が終わり、片付けをしていると、ようやくダニエルとゴルドが帰ってきた。バルドはずっと乃愛の椅子をしていたので、とりあえず今回ここに寝る人は全員揃ったことになる。ダニエルはダニエルの家に帰るのだろうが。

私はとりあえず今日の王様の様子を伝え、伝えるべきことを伝えることにした。


「皆さん、というかゴルドさん達とカリナとダニエルさんは明日、王様のところに言ってください。私も一緒に行くので。カリナが王族ってこと、謝るべきことそれぞれどうやって伝えるか考えて下さいね?」


「はい」


声を上げてカリナが手を上げた


「はいカリナ。」


「ユイカさんはなんで一緒に来るの?」


「いい質問です。今日の王様の発言を聞く限り、多分ほとんどの人が元に戻って普通の勤務に励んでいるのだと思う。けど、こういうのは一定数イレギュラーがいるのが定石なの。で、そういうのはだいたい潜んでるから、私の出番ってわけ。」


「なるほどなるほど。ありがとうございます!」


「他に質問ありますか?なければ早く片付けて寝ましょ。」


私の号令で、他のみんなも片付けを手伝ってくれたためかなり早く終わった。

私はいつもより長い睡眠時間と密着時間を大切にして意識を手放した。

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