30:続 襲撃者の事情聴取
課題に殺されてて全然書く時間がありませんでした…
これからもっとペースあげて書いていきます!
翌朝、先に寝ていたシノが朝食の準備が出来たと起こしに来た。
いつもより起きるのが遅くなってしまったようだ。
「いつもより2時間遅いし、ぐるぐる巻きの人らとっくに起きてるけど…私にはどうしようもないし、早く何とかしてくれない?」
シノが眉をひそめながら言う。
たしかにあんなのが床に置いてあっては気になって仕方ないだろうし、怖いだろう。
「あー、ごめんねシノ。朝ごはん食べたら処理するから」
「そこは朝飯前でお願いしたかった…」
肩を落としつつシノは部屋から出ていった。
私は乃愛をくすぐり起こし、すぐに下に降りた。
下では瑠璃香とマリナが朝ごはんを前に座っていた。マリナは少し眠そうにしているが、瑠璃香に眠そうな様子はない。元の世界で3時間睡眠生活を送っていただけのことはある。
ダニエルとカリナはまだ上にいるらしい。カリナがダニエルの看病を申し出たそうで、しばらくは上にいるだろう。
男達の様子はと言うと、両方共起きているようで身じろぎする音やモゴモゴ言っているのが聴こえてくる。
私も乃愛も特に気にせず食卓につき、いただきますして食べ始める。うん、とても美味しい。今日の朝食はトーストの淵を囲むようにマヨネーズをつけてカベにして、真ん中に卵を落としてから焼いた目玉焼きトーストだ。白身がとろとろですごく美味い。食べる度にカリッといい音が響く。
ぐぅ〜
元気な腹の音が鳴った。門番か、猫耳か。どちらかは分からないがどちらも顔を反対に向けているのでどちらもということもあり得るな。
食べ終わった私たちは食器を片付けたあと、ようやく男達の元へ向かった。片付けている時にシノに早く何とかして!と軽く怒られたのはご愛嬌だ。
とりあえず私が猫耳の猿轡を外す。
「…っ!はぁ…お、お嬢ちゃん…君たちはいったいなんなんだい?」
猫耳が軽く眉をひそめつつ聞いてきた。
「どっちかといったらあなたが何なのかを聞きたいわね。バサラ獣王国の貴族だかなんだか知らないけど、この国の王様を人質みたいにしてたのは流石に容認できないわよ?」
私も眉をひそめつつ、猫耳を見下ろす。
「僕の話なんかよりも君たちの話を聞きたいな。ほら、君も君の周りの子達もみんな美人だしさぁ?」
「…は?あのさ、今の立場わかってる?あなたはこの国で犯罪行為をしたのよ?ヘタしたら王様殺すようなことになってたじゃない。殺人未遂なんだけど、大丈夫?」
ニヤニヤと笑い始めた猫耳を不快に思いながら返す。
猫耳はニヤニヤを抑えることなく答える。
「何を言ってるのさ。どちらかといったら今の君たちが犯罪者だよ?バサラ獣王国の子爵、アシュリン家の長男、バルド様を誘拐し監禁した…ね」
「…いやいやいや、何を言ってるのかわからないわよ。アホなの?貴族でもなんでも犯罪は犯罪だし、先に犯罪した人を捕まえて何が悪いのよ。とりあえずこのあと話聞いたら騎士団に引き渡すつもりだし…」
「君は世間知らずのようだねぇ。バサラ獣王国がどんな国か知らないのかい?他国がどうやってバサラ獣王国と付き合っているかも知らないのかい?いやぁ困ったねぇ。顔は100点なのに知識は0点だぁ」
猫耳…アシュリン家の長男バルドは笑い始めた。
流石にイラつく。
「どういうこと?説明しなさい。」
「えぇ〜?どうしよっかなぁ〜?これ全部外してくれたら説明してあげてもいいかなぁ〜?こんな状態じゃ喋りづらいしぃ〜?」
私はため息を付いて、シノに向き直る。
「知ってる?」
「うん。バサラ獣王国ってこの世界でトップレベルの大国で、貴族がすっごい力を持ってるんだって。元々そこまで大きくなかったんだけど、住民がほとんど獣人だからやっぱり戦いに強くて、どんどん隣接と国戦争して飲み込んでいって大きくなっていったんだ。だから今も各国はバサラ獣王国を怒らせないように怒らせないように、って対応しているわけ。ちなみに今地理的に一番近いのは我らがドリス王国。」
「説明ご苦労だお嬢さん。さぁ、そのままこちらに来て僕の縄を解き、一緒に休もうじゃないか。」
ニヤニヤがいっそう増した。声を掛けられたシノは鳥肌を立てて引いている。
「気持ち悪い男ね。昨日の門番の話とシノの話から察するにどう考えてもドリス王国を属国化、って言うか領土拡大に使おうとしてるわね。」
「いやいやいや心外だよ。僕らは国営か困難になっているこの国を支えようという優しい心でいるんだよ?彼にも協力してもらって王様とお話しようと思ったのに彼、僕らの支援なんていらないって話を聞こうともしないし…まったく、これだから力のない口ばっかりのノーマルは嫌いなんだ」
苦々しい顔でバルドは毒を吐いた。ちなみに、まったく以降の言葉はこちらに聞こえないように俯いて小声で呟いたのを拾ったので、私と乃愛以外に毒は届いていないだろう。バルドはさっと顔を上げると満面の笑みを浮かべた。
「だからさ、僕らから敵対してこの国を滅ぼすとか嫌だからさ?人質みたいになってたのは議論が白熱した結果だし、君たちがやったことも見逃してあげるから縄を外して皆僕と一回寝よう?」
私は無言でバルドに近づき、猿轡を噛ませた。
「ンー!!!ンムー!!!」
バタバタと暴れるバルドを放っておき、私と乃愛、瑠璃香の3人で上のダニエルとカリナに騎士団を呼びに行くことを告げて外に出た。マリナとシノには留守番を頼んだ。
外はなんだか騒がしい。国民がみんな南門の方に集まっているようだ。
「何かしら…?」
「ん…ん!?ゆいか!けもみみだ!遠隔感覚つかったらみえたよ!」
乃愛が少し焦ったように言う。
「…一旦様子を見に行きましょうか。もし武装しててこの国に侵略に来ているようなら対抗するしかないわ。バルドの引渡しだったら話を聞いてから…ね。」
私たちは南門へと走り始めた。
南門にはかなり大きい馬車が止まっていた。護衛らしい武装した兵士が馬の左右に二人、御者が一人、そしていかにも貴族といった服を着て、これまた貴族らしくどっぷり太った男が前に出てきた。
「あー…ドリス王国の諸君!私はバサラ獣王国が子爵の一人、ゴルド・アシュリンである!申し訳ないが、私のように頭に猫耳をつけた青年を見た者は、私に教えていただきたい!仕事や予定があるが見たぞ、という者がいたらそれらが終わってからで良い。私はゲストという飲食店兼宿屋だという店にいるので、報告に来てくれ!礼は弾むぞ!」
随分と腰の低い内容である。貴族であれば横暴で強引なものだと思ったが、めちゃくちゃ配慮している。
だが市民はほとんどがオロオロしているようだ。私と同じようにイメージがかなり違って動揺しているのだろう。
そんな様子を見たゴルドは、はぁ…とため息を一つ付き、馬車に戻っていった。
「あれ?唯香、これ、今ゲストに行かれたらヤバくない?縛って転がしたまんまだよ?」
瑠璃香がゴルドの行動を見ていた私に声をかける。
「…はっ!そうだったわ!付いてきて!」
私はすぐに馬車の近くにまで走り寄った。
「む、市民よ、猫耳の青年を君たちは見たのかね?」
めちゃくちゃ優しい笑顔だ。いい人感が溢れ出ている。
「え、ええ。そうなんですけど、ちょっと何から話したらいいかわからないんですけれど…」
「よいぞよいぞ。ゆっくり話してくれ。なに、取って食ったりもせん。どんな情報でも良いぞ。」
「あの、今から話すことを途中で切らずに、落ち着いて聞くことを約束してもらえますか?」
「む…?よいだろう、約束する。おい、お前達!お前達も絶対に何もするんじゃないぞ!」
何かを察したのか、ゴルドは護衛二人にも声をかけた。
護衛は揃って綺麗な敬礼を決め、休めの体制で固まった。
「あ、ありがとうございます。じゃ、あとは瑠璃香、わかりやすく説明してちょうだい?」
「え!?わ、私!?」
「あなたが一番喋るの得意でしょ。正確に誤解のないように伝えるの。考えて話しなさいね?」
「わ、分かったよ…」
瑠璃香は他国の人間に話してはいけないだろうところを除き、丁寧に説明していった。私達のこと、バルドのこと、門番のこと、城でのこと…。
聞いているゴルドはびっくりしたり、ため息をついたり、頭を抱えたり、ため息をついたりしながら聞いていた。
「とまぁこんな感じなんですが…」
「あぁ…よく分かった。よーく分かったよ…」
ゴルドは頭を抱えて何かを考え、何かを決意したかのように顔を上げた。
「君たち、ゲストに行こうか。馬車で送っていくよ。話はそこで色々しよう。もちろん誘拐とか口止めに殺すとか、そんな物騒なことはしないことを約束する。送っていかせてはくれないか?」
「え、ええ…?貴族の馬車に乗るなんて…」
「ゆいか〜のあつかれたしのりたい〜」
「乃愛…」
「とりあえず嘘はついてなさそうだから大丈夫。断るのも失礼になるから乗ろう?」
瑠璃香も小声で教えてくれる。
嘘判定するスキルとか持ってたのか。
私は仕方なく瑠璃香を信用することにして、ゴルドに頷いた。
「あぁ、ありがとう。さぁ、乗ってくれ。足元に気をつけてな。」
ゴルドに手を引かれ、馬車の段差を登る。
馬車の中は小さめの部屋のようになっていた。多分詰めれば6人くらい乗れるだろう。後ろの座席に瑠璃香と乃愛。前にゴルドと私が座り、馬車の段差のところに護衛の男性が一人立ち、もう一人は御者の隣に座った。
「やっぱり豪華な馬車ですね。」
「いやいや、まだまだ小さい馬車さ。私は子爵だからね。さらに上の公爵なんかすごいよ。大きさはこの2倍はあるんだよ?」
「す、すごいですね…」
「そんなことより、君たちには本当に迷惑をかけたね…君たちが居なかったら私は良くて平民に落とされ、バルドにいたっては打首になっていただろうな…」
「…」
雑談するならいいのだが、この話題になるとどう返したらいいか全くわからない。後ろの二人は全く助けてくれないし、乃愛に至っては寝ている。気を抜きすぎだと思うが、どうも雰囲気が優しくて心を許してしまう。
私も初対面にしては珍しいレベルで警戒心を持てない。逆に危険だと思うのですぐに相棒を出せるように片手は開いている。
少し話すうちにゲストについた。もちろん出迎えはない。ゴルドがここに泊まるなんてシノも話していなかったし、アポ無しなのだろう。
私達を先に下ろし、護衛たちに待っているよう命じてからゴルドは扉の前で待つ私たちのところへ来た。
「待たせたね。じゃあ、入ろうか。」




