3:初めての国
短めです
神の声が聞こえなくなったと思ったら、今度は後ろから声を掛けられた。
「すまない、援軍助かったぞ少女よ。見たところまだ年端も行かぬ子供のように見えるが、どこでそのような戦闘技術を…?」
話しかけてきたのは、兵士たちに指示を出していた男だった。男はかなり疲労しているようだが、訝しんだ目でこちらを見据えてくる。
「私はこどもじゃない。見た目で判断しないで。」
ちなみに、唯香の身長は148cmである。
男は190cm程はありそうな体躯をしているため、子供と見られても仕方ないのだが、初対面の相手に言われるのは心外であった。
「そうか。それはすまなかった。では女戦士よ、その戦闘技術についてはどこで身につけたか教えてはもらえないか?」
「えー、ちょっと言えないわね…うまく説明出来ないっていうか」
「そうか…では、どこの国の者かね?助けてくれた手前申し訳ないが、敵国の者であれば我々はもう一度剣を抜かねばならぬ」
「んー、わからないわ。ちょっとだいぶ遠くの田舎からここら辺に飛ばされてきたから…」
「その言い草…もしかして、お主は転生者なのか?」
「え、よく分かったわね。」
「考えてみれば奇っ怪な服を着ておるし、顔も転生者らしいしな。それならばお金や寝床、食料なんかはまだ何も得られるめどは立っていないとお見受けするが?」
「ええ、正直さっきこの世界に来たばっかりだから何にもわからないの。助けてくれると嬉しいんだけど。」
「それはそれは。もちろんお助けしよう。この国にはよく転生者が来るのでな。それ専用の窓口も用意されているのだよ。」
「ありがとう。ところで、お名前を伺ってもよろしいかしら?」
「おお、そうだな。私はこのドリス王国の国家騎士団第一部隊隊長、アルトだ。」
「ドリス王国…って言うのね、この国。私は篠宮唯香。ちょっと殺しに秀でたしがない転生者よ。」
私はこのアルト隊長と握手を交わし、国家騎士団第一部隊の案内のもと、ドリス王国の城門をくぐるのだった。
────────── ※※side ──────────
目が覚めると、天井のない世界にいた。
「え?ここどこぉ〜?」
寝ぼけているのかと思って目をこすっても景色は変わらない。
「お嬢さん、こっちに来なさい。」
声の方を見ると、イケメンがいた。
20代だろうか、美青年である。
「うわぁ〜おにいさん、かっこいいねぇ〜♪」
「事実だけど、あんまり褒めないでくれよ」
青年は照れ臭そうに頭に手をやった。
※※が青年の元に行くと、青年はまた話し始めた。
「えっと、君は篠宮唯香って子は覚えてるかな?」
※※は唯香の名前を聞いた瞬間、青年に掴みかかった。
「ねぇ!おにいさんゆいかがどこにいるかわかるの!?おしえて!なんかみんなゆいかのことわすれちゃって!※※と※※※しかゆいかのことおぼえてないし!はるやさんはおぼえてるみたいだけどだんまりだし!ゆいかにあえないと、※※、もうだめになっちゃう!おしえて!!はやく!」
青年は※※の勢いに驚きながらも話を続ける。
「わ、わかってる分かってる!これから君も彼女と同じ世界に連れていくから!でも、一応事情を──」
「わかった!じじょうなんてなんでもいいからはやくつれてって!」
「…話を聞かないね!君は!とりあえず三つだけ聞いてね!一つ!唯香ちゃんは今ドリス王国っていう国でくつろいでる。そこで合流するといい!二つ!彼女には転生先の世界を救えっていうお願いをしてる!協力してあげてね!ちなみに元の世界には戻れないから選択肢はないよ!三つ!???も転生させる予定だから唯香ちゃんに言っといて!以上転生します!」
「はい!おねがいします!はやく!」
こうして、破天荒な一人の少女が異世界に転生された。