29:襲撃者の事情聴取
ゲストに戻ると、カリナとマリナは2階で寝ており、下にはシノだけがいた。
「お疲れ様。その人達が首謀者的な人たちかな?」
「そうよ。とりあえずこいつらに話聞くからダニエルさんの看病任せてもいい?」
ダニエル以外を適当に背中から落としながら言う。
「うん、分かった。じゃあ瑠璃香ちゃん。2階までお願い。」
「…そうだよね、私が運ばなきゃだよね。疲れてても関係ないよね…」
シノにまで使われることに瑠璃香はショックを受けたようだが、これが正しい瑠璃香の使い方(だと私は思う)なので特に何も言うことは無い。
「さてさて、乃愛。門番起きそう?」
「うん!ちょうどおきそうなとこだよ!」
門番の男は呻きつつ目を開けた。
猫耳は未だに幸せそうに寝ている
「こ、ここは…?」
「ハロー。元気?」
「お、おお、げ、元気だ…ってお前!ここは…っ!くそ!離せっ!」
「離さないわよ。話さないとね♪」
「おっ、ゆいかうま〜い♪」
「うるさいうるさい!お前らが邪魔しなけりゃもっと簡単にこの国は変われたんだ!お前らのせいで!」
激情した男は私たちのことを子どものように罵倒し始めた
「乃愛、うるさいし、軽く魅了できない?なんでも話しちゃう〜ってくらいに調節して。」
「う〜ん…できるかなぁ…?やってみるね〜」
「みりょ〜」と今までより優しく小さな声で唱える
「おい何をするぅ〜?」
男の目はハートになったが猫耳のようにがむしゃらに胸に手を伸ばすようなことはなく、なんとなくぽーっとしている感じだ。
「ねえねえもんばん。いうこときく?」
男はゆっくり頷いた。
「あなたのもくてきはなに?」
「この国を…バサラ獣王国の配下に入れ…国を安定させること…」
「バサラ獣王国というのは?」
「獣人族が人口の9割を占める国…武術に長けていて…とても金がある国…人族は5%程…皆奴隷として働いている…」
「このねこみみもそのくにのひと?」
「はい…貴族の一人…」
「なんでバサラ獣王国の配下になろうと思ったの?」
「この国は…このままじゃ廃れて終わる…それなら…大国の配下に入り…安全と良い生活を…確保した方がいい…」
「それってこの国が奴隷国になるようなものじゃない?それでいいの?国の総意もそうなの?私はそんな話聞いたことないけど。」
「奴隷国化はしない…その方が約束してくれた…」
「なんていわれたの〜?」
「「私は人族を奴隷などとは思っていない。この国の国民の生活は保証するよ。だから、こんな苦しい生活やめよう?」こう、仰っていた…。国民は…生活が保証されている…この計画に抜かりはない…」
「ん〜微妙ね。生活保証、って言うのが奴隷になってとりあえず生きてられるよ的な保証かもしれないし、奴隷と思ってないのはこの猫耳だけってことになるし…適当な言葉に乗せられたわね…」
「こんきょがうすい!やりなおし!」
聞いているうちに瑠璃香が降りてきた。
「ダニエルさん意識戻ったよ。まぁ、今は休みが必要だからすぐ寝かせたけど。」
「あ、そう。ありがとうね瑠璃香」
瑠璃香は門番の横を通る時に男を軽く蹴り飛ばして客用の椅子に座った。
「ぐっ…ん…お、お前は!」
その衝撃で魅了が溶けてしまったのか、目が正気に戻っている。しかし、瑠璃香を目にした瞬間、その目は恐怖に彩られ、震えだした。
「瑠璃香…なんで魅了解いちゃったのよ…」
「え!嘘私!?ご、ごめん!ちょっとこいつはどうしても蹴りたくて…」
「何を言っているのか全くわからないわ…まぁあなたを見てうるさくなくなったからいいけど…」
「それでどこまで尋問進んだの?」
「えっと、こいつがこの国を獣王国の配下にしようって、そこの猫耳に唆されて動いてたってことはわかった。」
「そっか。」
それだけ返すと瑠璃香は男の近くによって耳元でなにかを呟いた。男は顔が裂けるんじゃないかというほどひきつり、ものすごい勢いで頷いている。
「はい、とりあえずこいつはなんでも吐くよ。嘘もつかないからなんでも聞いてやって。」
「瑠璃香…あなた何をしたのよ…?」
「まぁなんでもいいでしょ!ほらほら時間は有限だからね!」
「むぅ…後で聞かせてもらうわよ?」
瑠璃香は笑顔で頷いた。
「それじゃ門番。質問の続き。奴隷商人を罠にかけたのはあなた?」
「そうです」
「なんで?」
「その馬車に王家の生き残りがいることを突き止めたからです。」
「どうやったの?」
「解析スキルです。」
「解析か…そんなスキル持ってたのね…」
「はい。実際、Lvは1ですから、王家の認識阻害の呪いがかかっているということしか分かりませんでしたけど。」
「え、Lv1で見えたのそれだけ?」
「そうです。そこだけ見れてラッキーだと思いました。というか、奴隷商人の馬車の中に王家がいるとか普通思わないのにそっちに目をやって見つけた僕の能力を誰かに褒めて欲しいくらいです。」
「誰も褒めないわよ。国を売った門番なんて」
「そうですか。そうですね。」
「それで、なんで王家の人間を殺そうとしたの?普通奴隷から王家に戻れるとは思わないでしょう?」
「あなた達が取り置きを希望しているのを見てしまったからです。あなたはなにかに気づいてその子を購入すると決めたようでした。もしあなたが気づいて、その上でその子を王にしようとしていたらやばいと思って、先に殺してしまおうと…」
なるほど、たしかに取り置きの要望を出したのは街中の広場で、街の人達も多くいた。彼が見ていたとしても不思議ではない。
「あーそういう事ね。じゃあどうやってあんなに魔物を集めたの?森の魔物が活発になっているとはいえ、あそこまで魔物がいってんに集まることないと思うけど…」
「召喚魔法です。闇魔法の魔物召喚。この魔法はMPの許す限り無限に魔物を召喚できるんです。高いMPを払えば人を召喚したり、想像上のものを召喚したりも出来るらしいです。今回は一番消費の少ないゴブリンをギリギリまで召喚してました。」
「ラプトルは戦闘の音を聞いて来たわけね。」
「そうです。予想外だったので隠れてました。」
「なるほどねぇ…ん?そう言えばあなたどうやって逃げてきたの?門番に引き渡したからもう安心だと思ったのに…」
「簡単なことです。彼も私の仲間ってことですよ。」
「あー…そうなのね…さっきの襲撃者がこの国でのあなたの賛成者の全員?」
「はい。全員で対処しないと間に合わないと思ったので。」
「まったくたいしょできてなかったけどねぇ〜♪」
乃愛が茶化すが男は全く反応しない。
「ま、だいたい分かったし、もういいわ。あなたは後で騎士団に預かってもらうわよ。」
「はい。わかりました。」
それきり男は黙り込んでしまった。いったい瑠璃香は何を言ったのだろうか。
顔色の悪さは全く変わらないが、行動の一つ一つがめちゃくちゃ真剣で丁寧にしている…
「ほらねこみみさ〜んお〜きて〜」
乃愛が猫耳を引っ張る
ふわふわしている。
「わっ、すっごいもふもふ〜♪」
乃愛の目的は男を起こすことから猫耳をモフることにシフトしたようだ。動かないのをいいことにもふもふもふもふしている。とてもいい表情だ。私の血を飲んだ時ほどではないがとても気持ちよさそうにしている。
「わ、私もモフりたい…」
瑠璃香がフラフラと猫耳に近寄る。
「とりあえず起きるまでモフりましょう。大丈夫、減るもんじゃないし、減ったところで私たちには関係ないわ。あ、門番は寝ててね!」
私は猫耳を触る前に男の顎をしたから蹴り上げ、意識を飛ばした。
「大丈夫。死んでないわ…」
私はそう呟き、猫耳をモフりに行ったのだった。
モフり初めて1時間。
まだ目を覚まさない。
長い。
流石に意識が戻らない時間が長い。流石にそろそろ眠りたくなっている。未だに猫耳は目覚めない。私たち3人は眠過ぎて大変なことになっている。
「ゆいかぁ〜もうこいつぐるぐるのれべるあげてほっといてねよう?もうのあたおれそう…」
「私もそろそろ流石に厳しいよ唯香。このままじゃ寝落ち確定」
「そうね…よし、乃愛の意見採用。二人まとめてぐるぐるにして猿轡噛ませて寝ましょう。」
眠たすぎる私たちは作業を多少雑だが素早く終わらせ、速攻で2階へ駆け込んでベッドに入ったのだった。




