27:それぞれのお話
すみません遅くなりました!
今回読みづらい長文が二箇所くらいあったりします…ごめんなさい!
これから更新頻度は戻るのでぜひ読んで感想や評価、ブックマークをお願いします!
「とまぁこんな感じだったよ!いやぁ、あれは楽しかったなぁ…特に最後の男…フフ」
話を終えて、男に説教した時のことを思い出したのだろう、口元がにやける瑠璃香。
一方の私と乃愛は話の途中からずっとお菓子に夢中になっていた。
そんな私たちの様子をみて、瑠璃香眉をひそめる。最後の希望!とばかりに見たシノとマリナに至っては、二人揃ってうつらうつらしていた。マリナはよだれを垂らしている。
「あ、あの〜…私の話、そんなに面白くなかった…?」
頷く私と乃愛。うつらうつらして形としては首を縦に振るシノとマリナ。
瑠璃香は涙した。
「そんなことよりも次、マリナの話を聞かせてほしいわね。」
私は眠りかけのマリナに声をかける。
「んー…あっ、えっと、なに?」
眠かったからか話を聞いていなかったようだ。
「うん、今度はあなたのお話を聞かせて欲しいの。あなたの村の話とか、家族の話とか。」
「あ…えっと、マリナちゃん。話しづらいことは無理に話さなくていいからね?」
ふとなにかに気づいたように瑠璃香がマリナに声をかける。
マリナの表情に特に変わりはないのに何を見たのか、と視線を瑠璃香に向けるも、瑠璃香は少し心配そうに眉をひそめてマリナをじっと見ていて視線に気づいていないようだ。
「あー…いや…だいじょうぶ…わたしのこと、ちゃんとしってほしい…ありがと、ルリカ…」
ここでようやく、瑠璃香がマリナの少し話しづらい事情を上で聞いていたということに察しがついた。
マリナは一旦目を瞑り、深呼吸をした上で話し始めた。
「わたし…マリナです…。10さいで、かぞくはおとうさんおかあさんとおとうととわたし…2ねんまえにライフサポーティングのまほうが…きゅうにつかえるようになって…それからはんとしはMPそうをのみながらせいかつのおてつだいしてて…だけど、おとうさんがなにかじゅうじんのひとたちにいやなことしちゃったらしくて…いしゃりょう?…をもとめられて…おかねなんていちにちくらせるぶんしかない…から…おとうさんとおかあさんがそうだんして…わたしを…むらにきてたどれいしょうにんにうるって…それからはずっと…あのどれいのばしゃでいきてた…MPそうももらえないのに…なんどかまほうをみせるようにいわれたりして…そのたびにたおれて…とっても…つらかった…いつかかってくれるひとが…あらわれてくれるっておもって…たえてる1ねんはんのあいだに…ほとんどのこがかわれて…わたし…そんなにいらないのかなって…おもって…」
話しているうちに、マリナの目には涙が溜まってきた。
涙脆い瑠璃香は既にポロポロ涙を流している。
小さい子供らしいが年齢以上に舌っ足らずな声で、一生懸命に私たちに伝えようとしている内容をもし私が経験したらと思うと、とても正気ではいられないだろう。私はなおも話を続けようとするマリナを胸に抱き寄せた。
「…?ユイカ…?」
「いいわ。今全部話さなくても。そんな経験、私には想像も出来ないけれど、とても辛かったんでしょう?話しながらどんどんすごい顔になっているわよ。」
「…うん…うぅ…」
マリナはそのまま私の胸で泣き続けた。
◇
マリナが泣き疲れて眠りにつくまで、私たちは互いに喋らず、ただ居心地の悪い沈黙の中にいた。
「マリナって、家族に売られたんだね…可愛そうって言ったら良くないんだろうけど、やっぱり可愛そうだよ…」
シノが目を伏せながら呟く。
私も小さく寝息を立てるマリナの髪を撫でながら軽く頷く。
「きっとそれだけ貧しい村だったのよ…恵まれた人生を生きてきた私たちが、簡単に同情とかしてはいけない。マリナはマリナのやりたいようにやらせましょう。もし、村に戻ってそこに生活基盤があって本人の希望があったら、私はこの子を手放すわ。その時はその時として、納得してね?」
今後冒険するにあたっての前提として、乃愛と瑠璃香に確認する。二人とも素直に頷いた。
「でもすこしきになるはなししてたね〜。じゅうじん?がなんとかって〜」
「あ、確かにそうね。じゅうじん…ってやっぱり獣の人って書いて獣人なのかしら。この国でそういう種族見たことないからこの世界も元の世界と同じようにノーマルな人間しかいないと思っていたのだけれと…」
私たち三人の視線はシノに向く。
「そうだね、私も情報屋だし、もちろん知ってはいるよ。この世界には人の他に獣人族、森精族、地精族、巨人族、小人族、そして魔人族がいるの。魔人族は魔王の手下とかじゃなくて普通に角とかを持った亜人の事なんだ。魔王と繋がっているのは魔族。魔人じゃないから人の形をしていないものも多くて、すごく凶暴なんだ。魔物も魔族の一部だったり、魔族が召喚したものだったりする。獣人族はもう名前の通り、猫、犬、虎、蜥蜴とかたくさんの種類の動物の特徴を持った人達のこと。魔法に適性を持っている人は少ないけど身体能力はどの動物系種族でも私たちをはるかに凌ぐ強さだよ。ほかの各種族もいろんな特色があるんだ。…まぁ、私も実際見たことはないんだけどね」
なるほど、つまりこの世界には7種族の人の言葉を介する生き物がいると。
それぞれの個性があって、マリナに関わった、というか実質奴隷に落とした獣人族は身体能力特化と。
「なんか、マリナの言う嫌なことっていう程度が分からないけど、マリナを奴隷に落とした原因は獣人族なわけね…気に入らないわ…」
マリナの村に行ったらぜひご挨拶したいものだ。
「このくににはそういうひといないの〜?」
聞きたかったことを乃愛が聞いてくれた。ケモ耳とか身体的特徴があればわかりやすいはずだが、目にしたことは無い。
「ん〜、噂程度の話だけど、最近獣人族の人がこの国に来て王様に謁見したとか。あと、その噂に尾ひれがついたものだけど、その人が城から戻って来なくて、もしかして王様がカッとなってやっちゃったんだ、とか。逆に王様が手篭められて政治の実権を握られたんだ、とか。私も見たことないし情報自体少ないから変な方向の話に走りがちなんだよね、この類の噂。」
確かに噂が変な方向に向かっているようにも思える。しかしまぁ、もしもこの噂が本当だったりしたら大変なことだ。
「あ、あの〜…」
そんなことを考えていたら瑠璃香が随分と遠慮がちに声を上げた。
「どうしたの?」
「えっとね、その噂、少なくとも最初のは事実だよ。話聞いて思い出したんだけど、私一昨日、奴隷馬車で揺られながら南の門から入ってくるケモ耳はやした人見たから。」
「まじ?」
「まじまじ。」
ケモ耳。なんと素晴らしい響きだろう。かわいい女の子のケモ耳をもふもふするのは、心の中に隠している私の密かなこの世界での目標でもある。
「ちなみに…女の子?」
瑠璃香は私の問いかけに、真剣な表情をして息をつき、私の目を見てはっきりと答えた。
「…イケメンなお兄さん!」
「違うそうじゃない!…なんで女の子じゃないのよぉ…」
私は見えた希望が潰えた悲しさに打ちひしがれた。
「それはそうとして、獣人族が来てるっていうなら残り二つの噂のどっちかも事実なのかもね。」
「それ事実だったらマジでやばいじゃない。」
「でもそれってじゅうじんぞくがおしろにいるってことでしょ〜?のあたちがたたかうことになったとしても、おうさまにもじゅうじんにもまけることなんてないからおしろにいってみよ〜?」
何故か戦う前提だが、確かに良い案である。
獣人族のことをもっと知るには本人達に聞くのが一番早いからね。
「それじゃあ明日の午前中にでも行きましょうか。」
私がそう締めくくり、獣人族とマリナについての話を終えた。
そのあとは夜営業の準備の時間まで、シノの元の世界での恋バナや私たちの元の世界の仕事の話などで盛り上がった。
────────カリナside────────
城内に入ったカリナとダニエルは、王の自室に向かって歩いていた。
しかし、ダニエルは城の様子に少し違和感を覚えていた。
「随分と静かだな…いつもならもっと人がいるのだが…?」
ダニエルのつぶやきにカリナも不安になる。
「大丈夫なんですか…?」
「え、ええ、大丈夫ですとも。しかし、もしかしたら何かあったのかも知れません。もし何か私にやらねばならないことがあればカリナ様を信頼出来る者に預けることになってしまうかもしれません。」
「それくらい構いません。お気遣いありがとうございます。」
話しながら螺旋状の階段を上る。
使用人らしい人が急いで駆け下り、すれ違った。
その瞬間、ダニエルの後ろを歩いていたカリナが崩れ落ちた。
「!?カリナ様!どうされました!?」
カリナは目を見張って右腕を見ている。半袖故にむき出しの白い肌に、細く赤い線が入っていた。血はたれて来ないが、カリナは腕が震え、体がうまく動かせなくなっていた。
「っ!しびれ毒か…くそっ!先程の使用人!見たことのない顔だと思ったら…!」
ダニエルは警戒が甘かったと自分を頭の中で叱咤しながらカリナの腕に回復薬をすり込み、残りを飲ませた。
「カリナ様、危険かも知れませんがまずは王様の部屋へ急ぎます。私たちはいま少し外に出づらい位置にいます。最悪の場合を考えなければ王様の部屋が一番安全ですから、一旦そこで身を落ち着けましょう。最悪の場合は、私ができる限り出口近くまでお連れして、私が囮となるのでユイカさんのところに走ってください。きっと助けてくれるはずです。それでは行きますよ!」
ダニエルはまだしびれの抜けないカリナをおぶり、全力で階段を駆け上がってすぐに王様の自室へたどり着いた。素早くノックをして返事を待たずに入る。
「緊急のため失礼します!王様!少々お話を…っ!?」
王の自室はたくさんの書類が積まれた机、大きな窓、本棚があり簡素な作りになっていた。
そしてその机の前に、両手両足を縛られ転がされている王と、その王の上に座って脚を組む猫耳つきのハンサムな男がいた。




