24:続 奴隷達の解放
────────乃愛side────────
昼営業後
乃愛が階段を駆け上がり、唯香の部屋の扉を開けると、そこにはベッドで眠る二人の少女と、下着姿でベッドに持たれて眠る瑠璃香の姿があった。
「ん〜?なんでるりかはだかなの〜?」
声に出してみるが誰も起きる気配がない。
乃愛の頭の中でなにかのスイッチが入った。
「ばれない…そーっとやれば、ねたままですえるはず…ふふふ…」
乃愛は小型の注射器を取り出し、そっと痛みのないように瑠璃香の腕に刺した。
「んっ…」
少し瑠璃香が声を上げたが、起きる様子はない。
少量抜き取り、アイテム欄に入れる。
瑠璃香の血は唯香程ではないが美味である。唯香がいない時、たまに瑠璃香の血を貰うこともよくあった。
「つづいて〜♪」
乃愛はベッドに上がり、大きい方の少女の腕に注射器を刺した。少女は全くの無反応で眠っている。
「よしよし♪」
これもまたアイテム欄に入れる。この少女の匂いも悪くない。充分味わうに足りる血であろうことは乃愛には容易に想像できた。
「さいごに〜だいほんめい〜♪」
小さい方の少女に向き直り、3本目の注射器を取り出した。
「ん〜、はぁ〜…」
ちょうどその時、瑠璃香が伸びをしながら目を覚ました。
「ん?腕に違和感…あ、乃愛!あなたまた勝手に血取ったでしょ!」
ベッドに座る乃愛の方に向き直り、声を荒らげる。
「え〜のあしらな〜い。」
乃愛はそっぽを向いているが、瑠璃香は乃愛の右手にある決定的な証拠を見逃さない。乃愛の右手首を掴み、注射器を奪い取る。
「これは何?」
「え〜っとぉ〜…えへ?」
小首を傾げ、なんとか逃げようとするも、慣れている瑠璃香にきくわけがなかった。
「唯香に報告ね。私以外に二人のもとったの?」
「ちいさいほうにはてをだしていません!ほうこくしないで!おねがい!」
唯香に報告、と聞いた瞬間、乃愛の目が恐怖に染まる。
いったいどんなバツが与えられるのか想像もできないが、乃愛にとっては地獄のようなバツなのだろう。
「はぁ…取り敢えず名前覚えなさい。大きい方がカリナ。小さい方がマリナだって。カリナの血は取ったのね?」
「…はい。」
観念したのか、乃愛は正座をして俯いている。
「マリナからは血を取ろうとした、と。」
「はい…るりかがおきなければだいほんめいのちがとれたのに…」
「何か言った?」
「いいえなにも!」
小声で言ったことを聞き取られた乃愛はすぐに姿勢をただし、敬礼する。
「そう…本命はマリナなんだね。」
「きこえてるし!」
「ほんめい…?なんのはなし…?」
そう呟きながらマリナが目を擦り、身体を起こした。
「あ、おはようマリナちゃん。こっちおいで。」
「うん…ってルリカ…なんでまだはだかなの…へんたい…」
マリナは一瞬瑠璃香の方に行こうとして、その姿を見てすぐに引いた。
「へっ、変態…」
瑠璃香は少女の真っ直ぐな軽蔑の瞳に射抜かれ、ガックリとうなだれた。
「あはは〜るりかへんたい〜♪」
攻守交代とでも言うように、乃愛は瑠璃香を指さして笑う。
「ところでおねえちゃん、なまえは?」
「ん?おねえちゃんてのあのこと?のあは、しろののあっていうんだ〜♪よろしくね〜♪」
「ノア…なんだか…かっこいいなまえ…わたし、マリナ…」
「まりな〜♪かわいい〜♪」
乃愛がマリナに覆いかぶさるように抱きつく
「んぅっ!?お、おもいぃ…んん…ちのにおい…?」
「あ〜やっぱりまりなちゃんいいにおいする〜♪」
乃愛がマリナの首筋に頬ずりをしているとカリナが目を覚ました。
「んん…寝ちゃってた…え?だ、だれ!?」
カリナは身体を起こしてすぐ隣にいた乃愛に気づき、驚きの声をあげた。
「のあはしろののあ〜♪よろしくね〜♪」
「あ、あの…たすけ…おもぃ…くるし…ぃ」
か細い声に目を向けると、そこには乃愛の乳圧で窒息しかかっているマリナの姿があった。
「はい?」
カリナは流石に目覚めてすぐのこの状況を飲み込むことが出来ず、呆然としてしまった。その代わりに、少女の純真無垢な口撃のショックから復活した瑠璃香が引き剥がしにかかる。
「ちょっと乃愛!マリナちゃんが苦しんでる!」
「えぇ〜?そういってまりなちゃんをだきたいんでしょ〜?わかるけどまだのあの〜♪」
乃愛はマリナの苦しみに気づかず、圧迫を続ける。
瑠璃香は乃愛を引き剥がそうと、乃愛の両脇をホールドして引っ張るが、なかなか抜けない。体の大きさはほぼ同じだが、良い意味で乃愛の方がついてるものはついてるため、瑠璃香の力ではなかなか引きはがせないのだった。
ちょうどその時、部屋の扉が開かれた。
「どうしたらこうなるのよ…」
あきれたように呟いた唯香の声がやけに部屋に響いて感じた。
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私が呟いたあと、乃愛はハグをやめてマリナの介抱、瑠璃香はシノの部屋から持ってきたであろう、白のTシャツとパーカー、そしてショートパンツを身につけ、乱れた髪をなおした。
マリナは介抱の甲斐あって息を吹き返し、げほげほ苦しそうに咳をしていた。
「カリナ?大丈夫?」
カリナは私が声を掛けるだけでハッと正気を取り戻したようだ。
キョロキョロと周りを見回し、頭にはてなを浮かべている。
「えーと…乃愛、瑠璃香。二人と仲良くなれた?」
「なれたよ〜♪」
「どうだか…」
二人の声が重なる。全く揃わない返答に私は少し不安を覚える。
「まぁ、これから一緒に生活するんだし、さらに仲良くなるのはおいおい…ね」
四人がうなづくのを見て、私は身を翻して告げる。
「これから奴隷3人を解放するわ。私、奴隷って基本好きじゃないの。奴隷の扱いって人に対するものじゃないじゃない?あーいう差別って言うかなんて言うか…あーいうのが嫌なのよね。だから、外から見て私と乃愛があなた達をそういう扱いしてるって思われることが我慢ならないの。まぁ瑠璃香はどうでもいいけど。ってことだから付いてきなさい。」
「私使い荒すぎるよ…」
瑠璃香が涙声で訴えるのを背に受け、私たちは下に降りた。
「お、少し時間がかかったな。何かあったか?」
下でシノと談笑していたダニエルが聞いてくる。
「ゆいか。まさかとはおもうけど、こいつが解呪つかうの?」
「そのまさかよ。この国には彼しか使える人いないみたいだから。」
乃愛が心底嫌そうな目をダニエルに向ける。ダニエルの何が彼女をここまでさせるのだろうか…。
「一応私たちを安心させるためにステータスを見せてください。ないとは思いますけど、変なことされて隷属の首輪が三人を殺すなんてなったら、私は冷静でいられる自信がないので。」
「ああ、そのくらい当たり前の警戒だな。もちろん見せるぞ。」
そう言うと、ダニエルはステータスを見せてくれた。
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名前:ダニエル
性別:♂
年齢:52歳
Lv:91
経験値:15%
体力:101
MP:84
物攻:65
魔攻:98
物防:52
魔防:85
器用さ:51
速さ:68
幸運:70
所持スキル
剣技Lv5
棍棒Lv3
魔法
光・解呪
火・火球
火・火槍
火・火鎚
火・火弓
火・火自由
火・火壁
装備:騎士団の鎧
武器:騎士団の剣
サブ武器:魔法の杖
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魔法が多い多い。光魔法は一つだが他はみんな火魔法。
解呪もしっかり表示されている。
これだけ魔法特化ならば問題ないだろう。
「おっけーです。じゃ、瑠璃香から。」
瑠璃香が前に出る。
「あまり触られるのは心良くないだろうが、呪いが付いているのは首輪だから、首輪を触らせてもらう。直接の方がMP消費が少ないからな。」
その言葉を聞いた瞬間に乃愛の目がつり上がったが、私が見ているのに気づいて、流石に手を出すことはしなかった。
瑠璃香は、ダニエルが首輪に触りやすいように上を向いた。
ダニエルは瑠璃香の首に付けられた首輪に手を触れ、呟いた。
「解呪」
その瞬間、首輪がピシッと音を立て、真っ二つに割れた。
「「おぉー」」
私とシノは揃って声を上げた。
それはそれは綺麗に真っ二つになったのだ。
割れた首輪は元の黒から白に変色し、そのまま床に落ちた。
「何が変わったのかわかんないけど首輪があるのと無いのとじゃやっぱり気分が違うね!」
瑠璃香は腕をぐるぐる回しながら笑顔を見せる
「次、マリナ」
「はい。」
マリナが前に出る。その背中に少しだけ声をかけた。
「マリナ、あなたは色々と私たちの旅に必要な人よ。でも、奴隷じゃなくなってあなたは行動に選択肢が出るわ。村に戻りたいなら言いなさい。ずっと私達と旅したいなら言いなさい。あなたの希望を優先させるわ。だから奴隷から解放されてすぐに暴れて逃げようとするのだけはやめなさい。いいわね?」
マリナは黙ってうなづき、上を向いた。
「解呪」
先ほどと同じように首輪が下に落ちる。
マリナは一度深呼吸し、私の方に向き直った。
「わたし、あなたたちといっしょにたびする。でも、できたらいつか、むらにかおをみせにいきたい。」
「分かったわ。いつかあなたの村にも行きましょう。」
最後にカリナが前に出る。私はカリナにも声をかけた。
「カリナ。あなたの秘密は知ってるわ。あなたはあなたのやりたいようにやりなさい。私はそれに協力するわ。」
「…ありがとうございます!」
カリナはふりむいて一礼し、ダニエルの前で上を向いた。
「解呪!」
首輪が落ちる
私はすぐに解析を使った
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名前:カリナ▒▒▒▒
性別:♀
年齢:16歳
Lv:1
経験値:0
状態:▒▒▒▒▒▒▒
体力:10
MP:5
物攻:5
魔攻:1
物防:10
魔防:4
器用さ:10
速さ:10
幸運:20
所持スキル
料理Lv1
教育Lv1
▒▒▒▒
魔法
なし
装備:洋服
武器:なし
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「ダニエルさん、もう1度、今度はカリナ自身の呪いを解呪してください。」
「む、わかった。済まないが頭に手を置かせてもらう」
乃愛がとてつもない怒りの表情をしているが手を出すに至っていないだけ彼女のファインプレーだ。
カリナは目をつぶって頭を差し出す
ダニエルがカリナの頭に手を置き、もう1度唱えた
「解呪」
カリナを光が包んだ。
数秒間光が輝き、収まった時、そこに居たのは私が知っている彼女ではなかった。顔の形も体つきも違う。それどころか服装まで違い、これがカリナだとは到底信じられない姿になっていた。




