19:三人目の購入準備
ゲストに帰ったあと、乃愛がすぐに血を飲みたいと言っていたものの、このあとはすぐに夜営業の時間であり、私達も準備を手伝う必要があったため、遠慮させた。
そして夜営業。私はいつもの倍以上に動くことが出来た。全く疲れず、休む暇もいくらでもでき、一時的に外に出て呼び込みまでしてしまった。
これもきっとレベルアップのおかげだろう。
乃愛も見たところ、何もしていなくてもガンガン客が寄ってきて、狼藉ものもいなくなり、圧倒的な存在感で客寄せを行っていた。まぁ本人は呼び込みどころか椅子に座って居眠りをしていたのだが。
夜営業が終わり、シノの片付けの手伝いも終わると、乃愛のお食事タイムが始まった。
まず、店の外に出て気絶したままのキングゴブリンを外に出す。普通のゴブリンは異臭がするのだが、このキングゴブリンは全くの無臭だった。次に、乃愛が武器に使っている注射器を使い、血を一瞬で吸い取る。この際、いつもなら吸い取った血を飲むことはないので地面に振り落としていくのだが、今回は大きなバケツを準備して、こす網をかけ、そこに血を流していく。これで一杯目が完成した。
次にキングラプトルを出し、同じ工程を繰り返す。そして二杯目も完成した。
というところでなんとアルトさんがたまたま通りかかって乃愛が血を吸い取るところを見てしまっていた。
「お、おい、君たちは何をしているのだ…?」
「あ、アルトさん。血抜きですよ血抜き。ほかと違うゴブリンとラプトルを仕留めたのでね。」
とりあえず乃愛が血を好むというのはなるべく言わないようにしているので適当な話をでっち上げる。すると、アルトさんはうまい具合にそっちに反応してくれた。
「ほかと違うゴブリンとラプトル?ん、これがそうかね?随分と巨大な死体だが…」
「それです。ゴブリンは4mくらいあったかな。大きかったですよ。」
「そ、それはこの国では見られることがなかったキングゴブリンなのではないか!?」
「あ、ほんとにキングゴブリンって名前なんですね。単純だなぁ…」
苦笑いしてしまう。
「ちなみにこのラプトルも…?」
「そうですね。キングゴブリンを背中に乗せてあるってました。2,3mあるんじゃないですかね?」
「や、やはりキングラプトルなのか…。なんということだ…今まで見られなかった魔物が2体も…これは一大事だ!早く国に伝えて討伐隊を…?そうか。君たちがもう倒したのか。」
アルトさんは急に突きつけられた驚愕的な現実に混乱しているようだ。
「あの、アルトさん。とりあえずその死体持っていっていいですから、国に報告しといたらどうです?もしかしたらまだいるかもしれないし。」
「あ、ああ。そうさせてもらおう。」
アルトさんが2体に触れてアイテムに収納し、お礼を言って去っていった。
「おしょくじたいむ〜♪」
たっぷり血が入った二杯のバケツを見て、乃愛が瞳を輝かせる。
「乃愛、全部飲むの?流石に多くないかしら…?」
「ん〜ん、だいじょ〜ぶ♪ちはべつばらだよ♪」
そう言うと、乃愛はストローを取り出し、血を飲み始めた。
「乃愛、どう?美味しい?」
「ん〜♪ゆいかのとちがってこくがあってどろどろしてて、すごくこい!ゆいかのほどじゃないけどべつのおいしさがあるよ〜♪」
満面の笑みでご満悦のようだ。
私は乃愛の隣でメニューを開き、今回得たお金を確認する。
いつまでのシノに頼ってばかりではいけないし、恩をなんとか返したい気持ちもある。世の中金がモノを言うのだ。今回倒したたくさんのゴブリン全員のお金は回収した。その結果
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所持金 銀貨1020枚
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約300枚もの銀貨を得ることが出来た。合計で金貨10枚分。奴隷の3人を買ってもお釣りがくる。
これなら乃愛の借金も返せるし装備も買えるだろう。
「レベルも確認しとくか…」
呟き、ステータスを開く
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名前:篠宮唯香
性別:♀
年齢:15歳
Lv:215
経験値:54%
体力:221 57up
MP:74 20up
物攻:204 57up
魔攻:74 20up
物防:90+20 20up
魔防:74+20 20up
器用さ:198 41up
速さ:238+5 65up
幸運:75
所持スキル
言語理解
全属性魔法対応
身体強化Lv7 1up
自己再生Lv1
予知Lv1
加速Lv8 1up 効果UP(Lv9相当)
隠密Lv17 1up 効果UP(Lv18相当)
暗殺Lv20
攻撃連鎖Lv4
解析Lv2
乱舞Lv4
効率化Lv5
威圧Lv1
猫目Lv4
魔法
光・空間転移Lv2
装備:制服・改
武器:小型サバイバルナイフ
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100体以上倒したと思ったがレベルは57しか上がらなかった。この世界で言ったらアホみたいに上がってるのだろうが、チートに慣れてしまった私としてはだいぶ少なく感じてしまう。ゴブリンしか倒さなかったのがダメだったのだろうか…
考えているうちに乃愛が満足そうな声をだしてこちらに寄りかかってきた。
「んぅ〜♪おいしかったぁ〜♪」
「良かったわね…っ!?」
寄りかかってきた乃愛の口元を見ると飲んだ血でベタベタになっていた。
「乃愛ちょっ離れて!汚れる!口拭いて!」
「え〜?ねむい〜…」
「乃愛!そのままステイ!ウェイト!」
急いでタオルを濡らして持ってくる。
そのまま乃愛の顔をゴシゴシと力強く拭いた。
「んぐっ!ぐっ!がっ!ゆ、ゆいかっくっ、くるしっ!」
「これで目、覚めた?」
「むぅ〜…さめたよ〜…」
「寝るならちゃんと部屋に戻ること。あと体拭かないと汚いからね。」
「は〜い…」
タオルとバケツを片付けたあと、しょんぼりした乃愛を連れて部屋に戻り、体を拭き合う。
私も乃愛も肌は年齢にあった綺麗ですべすべな肌だ。スキンケアは昔からずっとやってきたので自信がある。だが、乃愛にどうやっても勝てないのがスタイルだ。乃愛は面白いほどにボンキュッボンと出るとこは出て凹むとこは凹んでいる。拭くたびに思うのだが、本当に乃愛は私と同級生なのだろうか。16歳で大人も目を見張るほどのモデル体型。体型だけでなく顔も可愛い。中学のミスコンでブッチギリの優勝した私が眩むほどのパーフェクトフェイス。もうむしろ人間とは思えない。
「ん〜♪きもちよかった〜♪こうか〜ん♪」
乃愛が私の手の届かない部分を拭いてくれる。鼻歌を歌いながら拭くその手つきは優しく柔らかく、どんどん気持ちよくなってしまう。
「〜♪」
そんな様子に気づかない乃愛はいつもどおり拭いていき、この幸せな時間はすぐに終わりを迎えた。
「お〜わり〜♪はやくねよ〜♪」
「んっ、ありがと、乃愛。ちゃんと服着てね?」
「は〜い♪」
こうして私と乃愛は互いをぬいぐるみのように抱き合い、一日を終える。
誰からも人気な乃愛を独り占め出来るこの状況を、私は喜ぶべきなのだろうか。
まぁそんな考えを巡らせる必要もなく、私は乃愛と共にいる今を喜んでいるのだけれど。




