17:初めての殲滅戦
兄の引越しの手伝いしてたせいで未完成のまま予約投稿時間過ぎてしまいました…
追加修正しましたので一度読んでくださった方いらっしゃいましたら、したの方でもう少しだけ続くので読んでくださると嬉しいです!
私と乃愛はアルトさんが帰ったあと、昨日の夜と同じように昼営業の手伝いに入った。仕事で忙しいはずの昼営業ではあるが、昨日の夜に迫る勢いで客が来ててんてこ舞いだった。
ただ、確実にわかったことがある。レベルアップによって上がった能力値、とくに器用さは日常生活や店での動きに大きく影響を与えるのだ。今まで手間取っていた注文や配膳に全く手間取らずスムーズに行くようになり、むしろ休む時間さえ出来たのだ。
昨日の夜も少しだけ感じてはいたものの、確信に至る要素がなかった。
私は新しい収穫を喜ばしく思いながら、昼営業の片付けを済ませた。
「乃愛。準備出来てる?」
「もっちろん!さっさといこー!」
「OK。じゃ、シノ。行ってくるわね。」
「はーい!行ってらっしゃい!気をつけてね!」
手を振るシノを背に、私たちは北の森へ全速力で向かった。
◇
北の森につくと、兵士たちはおらず、アルトさんのみが森の入口で待っていた。
「あれ、おまたせしてしまいました?」
「いや、まぁ待ったが、それは当たり前のことだ。私が無理に誘ったのだからな」
「兵士の皆さんは?」
「既に中で人型の魔物、ゴブリンを中心に掃討にかかっていると、先程報告があった。今頃はさらに奥に行っていると思われる。」
「あ、あれ名前あったんですね。」
「ああ。だがそんなことはいいのだ。私達も中へ向かおう。このまままっすぐ行けば隠れたまま行けるはずだ。ゴブリン程度ならいいが、ラプトルやブルタルボア、ましてやクレイズウルフなんて出てきたら我々の兵では太刀打ちできぬからな、君たちの助けが必要なのだよ…」
さらに新しい名前が出てきた。多分恐竜型、猪型、狼型の魔物の俗称だろう。
「よっし、それじゃ、行きましょう!」
私たちは全速力で森の中へ走り入る。
5秒ほど走ったと思ったら後ろから声がした。
スピードを緩めずに振り向くと、そこには私たちからだいぶ遠くに離されていくアルトさんの姿があった。
一分ほど待ってようやくアルトさんが追い付いてきた。
「き、君たちは…はやすぎ…ないかね…」
アルトさんなりに全力で走ってきたのだろう、かなり息が切れている。
「す、すみません。アルトさんもレベル高いからついてこれると思って…」
「だいじょ〜ぶ…?」
乃愛も心配そうにアルトさんの顔をのぞき込む
乃愛もレベルが高いとはいえ私よりも低く、私のペースに合わせると髪は乱れ息も少し切れ、汗も流れる。何より私よりも可愛くて持つものを持っている。何が言いたいかと言うと、そんな乃愛の顔を至近距離で見たアルトさんはそれはもう元気になった。それはもう本当に元気になった。
「だっ、大丈夫だ!私は騎士団第一部隊長だ!この程度でへばるものか!」
立ち上がり、声を張る。
そしてそのまま全速力で走り出した。
そのスピードは先程までと比べられないくらいのスピードだ。草をかき分け木々を追い抜き、幹を超え、そのスピードを維持して走り続ける。
その姿はまるで虎のようであった。
なお私たちは、多少ゆっくりと後ろについてきていた
元気になっても私たちほどの力は出なかったのである。能力値が違うのだから当たり前だ。
しばらく走っていると、向かう先から声が聞こえてきた。正確には聞こえないのだが、乃愛がさすがの聴覚で聞き取ったのだ。ついでに嗅覚も反応したらしい。
「むっ。なにかこえがきこえる!あとまもののちのにおい!まずそう!」
「OK乃愛、距離わかる?」
「まだとおい!せんとうしてるおときこえるからまだぜんりょくではしってもだいじょうぶだとおもう!」
「OK。アルトさん大丈夫ですか?」
「だっ…大丈夫だ!まだまだ行くぞ!」
アルトさんは相変わらず元気だ。これで足の動きがスムーズであったなら、私も頼もしく思ったことだろう。今のアルトさんの足は生まれたての小鹿…までは行かないが小さく震えているのがわかる。
元気になったついでに無理をしすぎたのだろう。
「一分休憩しましょうか。流石にアルトさんがそんな状態じゃ急いでいくわけにも行かないし…」
「なっ…確かに体はきついが、行けないこともないぞ!」
「足震えてがったがたな姿を部下の皆さんに見せるんですか?」
「う…そ、それは…よくないな…」
「だったら一分しっかり全力で休んでください。そんなに時間あるわけじゃないでしょうし。」
「う、む…。」
ということでアルトさんを説得して一分休憩を挟んだ。アルトさんの足にはたくさんの乳酸が溜まっていることだろう。多少休んで変わるかは分からないが、少なくとも前よりはいいだろう。
と思っていたらアルトさんがおもむろに小さい小瓶を取り出し、一気に煽った
「よし、これで大丈夫だ」
アルトさんの足の震えが止まり、しっかりと立てるようになったようだ。
「アルトさん、それなんです?」
「ん?これはただの回復薬だ。疲労回復体力回復に役立つ便利アイテムだが…まさか知らないのか?国の薬局に置いているぞ?」
「そ、そうだったんですね…知らなかった…」
正直ダメージを食らう場面が今までなかったものだから、体力が減った時のことなど考えても見なかった。
「さて、私はもう走れるから行こうか。済まないな、足でまといで」
「大丈夫です。行きましょう。」
私たちはまた声のするらしい方に走り始めた。
しばらくすると私にもはっきりとその喧騒がきこえるようになった。
だがまだ姿は見えない。
止まることなく走り続ける。
ようやく兵士たちが見えてきた。
何人か怪我をして後退している兵士もいるようだ。回復薬を飲んだりかけたりしている。
「済まない、遅くなった!状況は!」
アルトさんが治療中の兵士の一人に声をかける
「相手が無尽蔵に出てきてこちらの兵力では掃討できないレベルです!今は均衡を保ってはいますが、そろそろ疲れが出てしまうかと…」
そう話す彼もかなり息が切れている。
長時間の移動に戦闘が重なれば体力も減ることだろう。
「魔物はどこまで出てきた?」
「まだゴブリンだけなんです…でもゴブリンも普通の強さじゃなくて、サイズも大きくて力も強いのばっかり出てくるんですよ!」
そうか。森の魔物が天候の変動で凶暴化していると言っていたが、体の変化もあったんだな。最初に倒したゴブリンの群れは普通のゴブリンで、森で倒していったのは凶暴化したゴブリンだったんだ。それを押し返す力はこの兵たちにはない、と。
「アルトさん。私たちは少し相手の裏から回り込んでやってきます。隠密使うんで多分大丈夫だと思いますけどなるべくそっちに引き寄せてください。」
「そ、それはいいが、一発で倒せないときついのではないか?」
「一発で倒せますよ?暗殺スキルって一発で倒すためにあるようなものですし」
アルトさんは唖然としている。がすぐにうなづいて兵士に指示を出した。
「ここから転生者二人が援軍に入る!敵の裏から攻撃するのでしっかりこっちに目を引きつけるんだ!」
おう!という返事が兵士たちから帰ってきたのを見て、私たちは右回りに敵の背後へと回っていく。
しかし、ゴブリンはかなり横にひろがっており、どこを通ろうにもゴブリンが邪魔で通れないようだった。
「…めんどくさいわね…正面突破しちゃおうかしら…」
「かべうすいところにみちひらこ〜♪」
乃愛が陽気に言う
「そうね…乃愛、ちょっと作戦あるから一旦止まって耳貸してくれる?」
「ん!」
私たちは木の裏側に立ち止まり、作戦を話す。
「のあがきけんだねそのさくせん!でもいいよ!」
「ありがとう。じゃ、サクッとやっちゃいましょうか」
そして乃愛はゴブリンたちの正面に躍り出た




