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村での出会い

ルゼフが旅に出て一週間が経ったが未だに魔族の生き残りがいるという情報はない。ルゼフは普段は角を隠すためにローブを羽織り、人間の町に繰り出しては情報を集めていた。そんなことを繰り返していくうちに、酒場である情報を聞いた。何でも例の勇者が山の麓の村に向かったらしいということだ。ユーリが外に出ることなんて魔族狩りしかない。ルゼフはその情報を聞き、翌日その村に向かうことにした。翌日になり、ルゼフは朝早くには町を出た。村の近くまで着いたルゼフはすぐに異変に気づいた。柵は壊され、人の気配は全くない。その様子からルゼフは嫌な予感がする。村の中に入ってみると、その予感は的中した。見渡す限り、人が倒れていた。どの村人も血だらけであり、息をしてない。そんな中、かすかに声が聞こえた。死体のうちの男の1人が苦しみながらも顔を上げた。ルゼフはすぐに男のもとにより抱き抱えてを握る。


「大丈夫ですか?今回復魔法をかけます!」


ルゼフは右手を男の傷に重ねようとするが、


「俺のことはもう良い…このまま死なせてくれ。家族のもとに行かせてくれ…それよりも聞け。」


「何をですか?ここで何があったんですか?」


「朝がたに勇者がやってきたんだ。最初は魔族はどこだと繰り返すばかりで話にならなかった。だけど、途中から勇者が頭を抱えて苦しみ始め、そして、村の連中を見境なく殺していったんだ。俺の息子と妻も…」


そう言って男は泣きながら手を伸ばす。手を伸ばした先には女と子供の無残な死体が転がっていた。男の息子と妻だとルゼフはわかった。


「頼む。もしまだ生きてる者がいたら助けてやってくれ。そして、出来ることなら俺を家族の側に…」


そう言って男は息を引き取った。ルゼフは男の遺体と男の家族の遺体を隣に並べる。そして、男に言われた通り生きている人を探し始めた。しかし、見つけるのは死体ばかりだ。民家の中まで死体があることから勇者の残虐さがわかる。家の中も血がべっとりついている。そして、ルゼフは村の最奥の民家の中に入る。他のところは全て見てきたので、ここを最後にしてあとは村人のために墓を作ろうと思った。入ると、中は他の民家よりもきれいであり、血で汚れていない。しかし、奥に行くとベッドには血まみれな少女の遺体があった。


「この子もか…」


そう言って、遺体を運ぼうと近づいたその時、


「うぅ…」


「え?まだ生きてる!」


ルゼフはすぐに回復魔法をかける。すると、苦しい様子からすぐに状態は落ち着いた。その後、浄化の魔法で少女の血を拭った。少女はどうやら寝ているらしいので、ルゼフはその間に村人の遺体を集めることにした。


集め終わるともう夕暮れだった。ルゼフは少女がいた家に戻る。台所には運良く十分食材があり、適当にスープをつくる。すると、少女が目を覚ます。


「あ、起きた!おはよう!今スープを作ってるんだけど良かったら食べない?」


少女はコクリと頷き、そして、ベッドからテーブルの方に行く。ルゼフがパンとスープを出すと、少女は無言で一口食べてみた。


「おいしい。それにとても暖かい。」


「ありがとう。おかわりもあるからね。」


そう言ってルゼフは笑顔になる。この子が生きていることを喜びながら。この子が勇者ということも知らずに。


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