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十一議会②

右の列の一番奥の気が弱そうな男が目を逸らしたのを見逃さず、指を差して発言を指示する、


「貴方、名前と意見を言って下さい」


恐る恐る立ち上がった男は、何かに怯えながら口を開く、


「エレミヤ・ランドルです。わ、私は、戦争に反対します。私の治めている領地は皆が家族みたいなものです、なので徴兵なんて事出来ません」


「分かりました。今度私が直々に顔を出させてもらいますね、ありがとうございます」


「きょ、恐悦至極に存じます。必ず皆喜んでくれます」


立ち上がった時とは真反対の顔をして着席したエレミヤの隣で、筋肉質の太い腕が勢い良く挙げられる。


「どうぞ」


勢い良く椅子から立ち上がったがたいの良い男は、大きな掌を机に叩き付けて、大きな声で喋り始める。


「俺は戦争に賛成する! 帝国は魔法と言う天変地異をも巻き起こす技を持っていると聞いた、それに勝てば多くの資源や労働者が手に入る。この国を大きくするならあんなトカゲ共を潰して……」


私は掌を机に勢い良く叩き付けて、脳筋デカブツ男を黙らせる。


「まずは名前から言って下さいと私は言った筈です、座って下さい」


怪訝な顔をした男は、私を睨んで倒れた椅子を直し、再び口を開く、


「俺はパラザリア・ラーラルド……」


「座りなさい! 分隊長が言われた事も出来ないのなら、こちらもそちらの話を聞けません」


舌打ちをして荒々しく椅子に座わった男を見届けて、二度と同じ様な事が起こらないように釘を刺す。


「名前、意見の順番で発言して下さい。出来ないのであればそれは意見ではなく、侮辱とみなします」


その言葉を受けて一同の顔付きが変わり、一層熟考してこの議題を見直し始める。


この議会において、唯一の女性を次に発言させる。


選定された女性は、姿勢を崩さずに立ち上がり、咳払いをしてから口を開く。


「アイラス・ラルクフォーレです。直結に言いますが私は反対します、例え帝国が勝ったとしても利益を得るのは我々ではなく帝国。全てを持ってかれるのは目に見えている事です、それでもすると言うのならそれは愚者です。以上です」


淡々とした様子で着席したアイラスは、不愉快そうにパラザリアを睨み、腕を組んでいる指は上下運動を繰り返す。


それを境に次々と皆が挙手して、戦争に反対の意を示す。


「戦争には協力しない方針に固まりました、帝国に何の援助もしません。勿論異論は認めません、以上突然の召集にも関わらず集まって頂き感謝します」


全員が椅子から同時に立ち上がり、胸の前で腕を曲げて敬礼する。


解散して退室していく中、たったひとりだけ部屋に残った人物が、椅子の上でぐったりとしている私に話し掛けてくる。

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