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黒雷姫②

散り散りに逃げた騎士を纏めて龍鱗種の隊列を突破し、少し高い山の山頂で、黒いナハトに向かう影を発見する。

再び光り出した腰のナイフを胸の前に突き出すと、黒雷がナイフの切っ先に命中する。


吹き飛ばされないように踏ん張り、なんとか黒雷を凌ぐことに成功する。

その直後に疲労がどっと体にのしかかり、1人では立っていられなくなる。


へたり込んだ私を支えたチェリーは、リュリュに支線を投げて、何かを決めた様に頷く。

私と同じく光り輝く武器を持ち、魔力で出来た翼で空に舞い上がる。


「パレス王国に戻っていてほしい、あとは私たちに任せておいて。ナハトと一緒に帰るから」


「早く行くよチェリー」


大きな斧を振り回してリュリュが急かすと、2人は翼の光を強めて飛び去る。


「報告します! 獣人の足止めに向かっていた部隊が壊滅致しました」


「そうですか、ならばここまでですね。迎撃準備をして下さい、撤退しながら戦闘を行います。殿はヨルムさん、ガルドナル将軍、そして私の3人で指揮を執ります。ジャンヌさんとエルは撤退をスムーズに行える様にお願いします」


「反対です、殿なら私が務めます。王は少数の精鋭に守らせ先にこの場を抜け出して下さい」


珍しく強く反発したエルは、他の騎士を掻き分けて目の前に立つ。

その反対に答えずなんとか立ち上がり、自分の馬に跨る。


「準備お願いしますヨルムさん、ガルドナル将軍」


「王よ、確かにあのドラゴンには遅れを取りましたが、私は同じ人間であれば……」


「お願いですエルさん、貴方が適当だと私が判断しました。ジャンヌさん、先に待ってて下さい」


「分かりましたクライネさん」


暫く収まっていた黒雷が遠くで輝き、また違う大きな雷とぶつかり合う。

気付けば先程まであった疲労がきれいさっぱり無くなっていて、それとは逆に今なら何でも出来そうな程体が軽い。


背中に翼をイメージしてみると、全身が温かくなって、不安定ながらも中に浮かぶ。


「凄い、やった……」


次は前に進もうとしたが、すぐに翼が消えて馬の背中にしがみつく。

その一部始終を見ていたヨルムは、驚いた顔で隣に馬を寄せる。


「凄いねクライネちゃんは〜、私もそろそろ羽を伸ばしたいな〜」


「駄目ですよ、ドラゴンってバレたら追い出されちゃいますよ。夜一緒に行きましょう、そこで飛び方を教えてもらいます」


「良いよ〜、ヨルムちゃん精一杯教えるね〜」


「さて、そろそろ今の話をしましょう。ナハトさんを止める方法はありますか?」


「それがね〜、過去にあったのは1度だけで、その1度はアイネちゃんが1人でやったのよ〜」


つまり分からないという事かと考えていると、めちゃくちゃだけど止められる方法が1つだけ見つかる。


「ヨルムさんの毒を使いましょう、動きを止めて魔力を吸い取っちゃって下さい」


「吸うってどうやって? 口? 手の甲?」


「え、出来そうな気がしたので」


「あ〜、成程ね〜。無理」


無駄な事に時間を費やしている間に、いつの間にかナハトがこちらに吹き飛ばされて来ていた。

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