表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/55

新王誕生

痩せ細って骨が浮き出た体に、コルセットが更にきつく絞められて、皆が期待する王の姿に一瞬で変わる。


これが少し前まで生贄だった私に求められた、この世界の抗えない定め。


鏡に映る自分の姿を見ていると、この世界が私に何をしろと言っているのか分からない。


夢を捨てて国を纏め上げ、己の気に食わないものを全て排除しろと言っているのか。


それとも、夢を諦めてこの世界の平和の為に尽くせと言っているのか。


もしくは、今まで受けた仕打ちに対して、運命を決めた神からの謝罪なのか。


もしかしたら、お前は生きている価値も無い、己の運命に惨めに揺さぶられながら死ねと、世界からも忌み嫌われているのか。


メイドに付き添われて部屋を出ると、エリュードが待機していた。


「お待たせしました。行きましょうエリュードさん」


「私は皆からエルと呼ばれています、どうぞ王もそうお呼び下さい」


「分かりました。戴冠式の会場に行きましょう」


「Yes My fair Lady」


胸に手を当ててお辞儀をしたエルは、私の方に手を差し出す。


差し出された手の平に自分の手を乗せると、優しく握られてリードされる。


廊下を歩きながら窓の外を見ていると、何やら下で騒ぎが起こっているようだった。


エルが気にしていないのなら、そんなに対した事ではないのだろうと、顔を引き締めて綺麗な姿勢を意識して歩く。


大きな扉の前で立ち止まると、エルが扉を軽く二回叩く。


それを合図にして、扉の向こうから男性の声が張り上げられる。


「新王が到着なされました。一同起立」


「開門!」


大きな扉が向こうから空けられると、大きな広場は国民で埋め尽くされており、私の姿が見えると歓声を上げる。


今迄向けられていたとしても、怒号や中傷の言葉しか浴びなかった為、心臓がばくばくして落ち着かない。


深呼吸をして落ち着こうとしていると、握られていた手にさらに力が入って、少しキツく掴まれる。


「大丈夫です。王は必ず成し遂げられます」


エルの手を離して運ばれて来た王冠を受け取り、頭の上に乗せる。


その瞬間に一気に歓声が沸き、拍手喝采に包まれる。


「この魔道具に向かって、今後の意気込みなど、一言お願い致します」


私の手に変な物体を乗せて下がったエルは、私が見ると微笑んで小さく手を振る。


拍手や歓声が全て無くなったのは、ここに居る全員が私の言葉を待っているというふうに取れる。


覚悟を決めて深呼吸をして、魔道具に口を近付ける。


「わ、私が即位しました、クライネです。これから、この国を豊かで笑顔と夢が溢れた国にしたいです。なので、皆さんも宜しくお願いします」


言い終わると同時に歓声や拍手が沸き起こり、火の玉が高い音を立てて上空に上がり、爆発して花を咲かせて消える。


「エルさんあれはテキの魔法ですか?」


驚いてエルに慌ててそう聞くと、大きな声で笑われる。


何がそんなに面白いのかは分からないが、あれが敵の魔法なら笑い事じゃない。


「花火ですよ」


「花火?」


「色々中に仕掛けをして、打ち上げて空に花を咲かせる。島国の倭の国の伝統文化です」


「綺麗な文化なんですね、行ってみたいです」


「またいつの機会か、私も御一緒します。知り合いに倭の国が出身の者が居りますので」


この後催される祝賀パーティーの準備の為、城の中に戻る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ