表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/55

淡い夢の終わり

アイネが目の前で倒れた日から、数日間の間私には記憶が無い。


森でアイネが倒れたまでは覚えていて、その後に自分も恐らく気を失ったのも何となく分かる。


それからこの城に連れてこられるまでの記憶が、私の中からぽっかりと抜けている。


あの街に戻ろうにも、記憶の無い私は道に迷って倒れてしまうだろう。


恐らくはそれを見越しての処置で、アイネを倒した騎士の計算なのだろう。


手の込んだ装飾が施された服を着せられ、宿とは違う大きくてふかふかなベッドで目が覚めた。


そして部屋には黒と白の服を着ている女性が、私に朝の挨拶をしてそのまま笑顔で立っている。


部屋のドアがノックされると、間を置いてアイネを倒した騎士が部屋に姿を現す。


「よくもぬけぬけと……」


その騎士に対して怒りをぶつけるが、眉一つ動かさずに膝をついて低頭する。


「お目覚めになりましたか王よ、本日は戴冠式の御予定がありますので。ドレスの着付けはそちらのメイドに……」


「煩い! 私を早くアイネさんのところに返して下さい、私は王なんかじゃなくてアイネさんの生贄です」


「おやおや、あの小さなドラゴンですか。まだ小さいながら凄い力でしたよ、ですから研究材料にする為に魔導棟に拘束致しました」


「メイドさん? 魔道棟に案内して下さい」


そう言うとメイドは私と騎士を交互に見て、困惑の声を漏らす。


立ち上がった私の行く手を阻む騎士は、温かさが欠落した瞳を私に向ける。


殺意に背を撫でられた様な感覚が体を這って、本能が駄目だとブレーキをかける。


それでもアイネに会いたい私は、拳を固く握って騎士を睨み返す。


「そこを退いて下さい」


「出来ません」


「私がもしも王なら、貴方は私の命令に従うべきです」


「王の愚行を正すのも騎士の役目。この命に変えてもこの国を正しい方に向かわせます」


無機質な瞳の奥底にある揺るがない意志が、私目掛けて真っ直ぐ向けられる。


こんなに固くてはっきりとした意志を見た事が無い為、少しだけ気魄に気圧される。


「分かりました、その戴冠式っていつからですか?」


「王が準備出来次第始めます、既に国民は城の前で王のお姿を拝もうと待っております」


「メイドさん、お願いします」


「お分かり頂けて良かったです。では、私は失礼致します」


立ったまま低頭した騎士は、踵を返して纏っている鎧を鳴らしながらドアを開ける。


「待って、名前を聞いてませんでした」


「エリュード・ライオットです、呼び方はどんなものでも構いません。では、失礼致します」


最後まで丁寧に頭を下げて部屋から出て行ったエリュードを見送って、準備をしていたメイドの前に立つ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ