4話 衝動。
4話 衝動。
入院してどのくらいたったのだろうか。
となりのベッドには、付き合って1年と…えっと。
誠はだんだんと自分のことすらわからなくなっていた。
記憶に支障をもたらすようになったのだ。
えっと…あれ。
そういえば、春になにか大切なことをまだ伝えていなかった気がする…。
なんだっけ。
窓の外はすっかり雪景色だった。
今年も雪がよく積もっている。
春と出会ったのはいつごろだったかな?
1年と…。
1年と5か月。誠は自分の余命すら、自分がなぜ入院しているのかすら忘れかけていた。
2人の記念日は2000年7月23日。
誠の担当付き添い教師が変わってからのちに2人は交際をスタートさせた。
あれ、春になにを言おうとしたんだろう。
必死に考えても思い出せなかった。
そのとき、あることが誠の脳裏をぐるぐると廻った。
それは誠が小さいころの記憶だった。
ここはどこかの公園だろうか、いや、庭…?
『パパ!ママ!みてみて!!!!』
子どもらしい無邪気の声。
その声はどこか聞き覚えのある懐かしい声だった。
あれ?これ、僕の声…?
『おぉ~どこで見つけてきたんだ~?』
幼い誠の腕には、子猫が抱かれていた。
『木の後ろだよ!かわいいねぇ~!!』
する突然父親らしき人物が誠の腕から
子猫が抜きとるように抱き上げた。
『悪い猫ちゃんだなぁ、お仕置きをしないとな』
そういうと父親(?)は持っていた小型のナイフで
猫の首を切った。
幼稚園児にもなっていない〝普通の〟子どもには
とてもみせられるものではなかった。
普通の…ね。
誠は幼少期から少し?いやかなりずれている子だった。
その首を切られた猫の姿をみて
なんと「わー!きれいだね!」なんていった。
そこで誠はある衝動に駆られた。
〝人って…切ったら綺麗な モノ でてくるのかな〟
呼吸器につながれすっかり弱ってしまった春に
静かに忍び寄って
首筋にカッターナイフを当てた。
「ねぇ…春は僕の味方だよね?」
そして、切ろうとしたそのときだった。
春は急に目を開け、じっと誠の瞳を見つめた。
まっすぐに誠をみつめる春の瞳には、衝動に駆られ実行寸前の
誠の姿がしっかりと映し出されていた。
「しゅ…春…。はっ!!!」
誠は正気を取り戻し、今自分がしようとしていた行動を把握できずにいた。
「ま…と…い…よ」
春のとぎれとぎれに聞こえる声。
脈が以上に早くなっている。
冷や汗がとまらなかった。
「し、春…ごめ…」
「わ…っ…か…ら…」
【誠、いいよわかってるから。】
誠はそんな春の言葉に涙があふれてしまった。
閲覧ありがとうございました!!!
猫好きの方を敵にまわしてしまった気がする…
申し訳ないです…(´;ω;`)
次話もよろしくおねがいします!!